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【金秋戦予選】20191010 プレバト!!俳句紹介【冷蔵庫】

2019年10月10日放送 プレバト!! 俳句金秋戦予選結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第3回金秋戦2019・予選で特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
上位3人が名人の参戦する金秋戦・決勝に進出できます。

※タイトル戦データはこちらのまとめ記事も

▼ようやく更新できました。大変お待たせ致しました。

挑戦者→三遊亭円楽[15],立川志らく[25],千原ジュニア[42],石田明(NON STYLE)[22],千賀健永(Kis-My-Ft2)[32],松岡充[13],鈴木光[8],皆藤愛子[10],北山宏光(Kis-My-Ft2)[24] ※数字は挑戦回数
1級円楽、志らく、ジュニア、石田、千賀
2級松岡
3級鈴木
4級
5級皆藤、北山

見届け人→梅沢名人、村上名人、藤本名人、中田名人、横尾名人

●お題:冷蔵庫(扉を開いた中身を映した写真)
※順位クリックでリンク内移動します。
1位松岡充2級駆け抜けた残暑の泡のハイボールかけぬけたざんしょのあわのはいぼーる
2位千原ジュニア1級長き夜のジャーの隣に立つ杓文字ながきよのじゃーのとなりにたつしゃもじ
3位石田明(NON STYLE)1級明日もまた生きるチルド室に葡萄あしたもまたいきるちるどしつにぶどう
4位皆藤愛子5級別れ蚊を払う一人の台所わかれかをはらうひとりのだいどころ
5位鈴木光3級本を閉じ秋の灯しづか製氷音ほんをとじあきのひしづかせいひょうおん
6位北山宏光(Kis-My-Ft2)5級秋の夜や母の怒号とピアスホールあきのよやははのどごうとぴあすほーる
7位三遊亭円楽1級秋天に産廃の冷蔵庫口を開けしゅうてんにさんぱいのれいぞうこくちをあけ
8位立川志らく1級釣瓶落とし喋るな黙れ冷蔵庫つるべおとししゃべるなだまれれいぞうこ
最下位千賀健永(Kis-My-Ft2)1級野菜室百リットルの香立ち秋やさいしつひゃくりっとるのかたちあき

[順位発表順] 3位→6位→7位→8位→1位→最下位→4位→5位→2位
→編集後記

○夏井先生コメント
夏井先生 全体のレベルがグンと上がっている。嬉しかった。これだけ上手になってるという事実が。

○発表待ちシートにて
玉巻アナ まずは、決勝戦で名人と戦う特待生の上位3人を決める大予選会を行います。
浜田 そういうことでございます。さあ、名人梅沢さん。
梅沢名人 はい。
浜田 どうですか?今回の予選、このメンツですけど。誰が決勝へ上がる?
梅沢名人 私は志らくさんかな。来てもらうと、ちょっとうるさいかなと…。
浜田 でも来ても、やっつけますけどと。
梅沢名人 そりゃそうですよ、(特待生)1級ですもの(笑)。
浜田 横尾君は?
横尾名人 僕は石田さんですかね?結構外から言うじゃないですか。一緒のステージに立ってボロクソに言ってやりたいですね(笑)。
石田 そんなに言うてへん?
浜田 でもさ、千賀も北山もおるわけだから…。
横尾名人 もちろん、千賀も北山も来てもらいたいですよ。『お前とはステージが違う』んだぞというのを見せたいですね。
藤本名人 違うんだぞと言うのを…。
横尾名人 歌とかはお前の方が上かもしんないけど、俳句の方は俺が上だなという(笑)。
北山 それで良いバランスになってんですよ、最近。
玉巻アナ それでは何位から見ていきましょうか?
浜田 あ、そうか。いつも通り3人ね。
玉巻アナ そうです。
浜田 …3位。
一同 ええ~!
ジュニア これは待てる!
円楽 そんなのあり?
梅沢名人 これ嬉しいわね。
ジュニア これでええねん!×2
→「ここでいい!」「ちょうだい!」としきりに叫ぶ特待生たち
藤本名人 うるさいうるさい、もう。
▲3位(決勝進出)は石田と発表
石田 イヤッホー!イヤッホー!イヤッハー!イヤッホー!
浜田 うるさいな!
ジュニア ええな~。楽しめるぞ、こっから。
石田 すごい楽!
→ランキングシートに座る際、勢いよく右足を上に組んで勝者の素振りをみせるも、広げた両腕の肘が隣の順位の椅子に当たってしまう
藤本名人 打ってる、打ってる。肘打ってる。
浜田 また骨折れるで!
藤本名人 電気走るやつや。
***
浜田 中田さん、ちなみにどなたが?
中田名人 そうですね。皆藤さんと(鈴木)光ちゃんに上がってきて欲しい。
浜田 やっぱり、女性陣が。
中田名人 ほら…ね、プレバトシスターズになりましょう、私たち。
→鈴木、皆藤とも静かに拍手する
浜田 入るつもりや。村上さんどうでしょう?
村上名人 (ニヤケて)…光ちゃん。
浜田 光ちゃん?
→観客からは悲鳴も聞こえる
村上名人 はい。やっぱり、村上チルドレンとしては。
浜田 いやいやいや…あ、そうなんですか?フジモンどうです?
藤本名人 僕もやっぱり同じ『東大王』仲間の光ちゃん
浜田 『東大王』仲間?
藤本名人 あとは、ミスターコツコツのジュニアですね。
ジュニア ええねん!誰がやねん!
浜田 (藤本名人に近づいて)ミスターコツコツなん?
藤本名人 ミスターコツコツなんですよ。
浜田 マジで?
藤本名人 一歩一歩、ね。
ジュニア ミスター無法者!むちゃくちゃしたんだから、今回も。
藤本名人 いやいや。一段ずつ確実に階段を昇ってくる。
ジュニア 今回の俳句も、八二七で詠んだ(笑)
→笑いの中、「悪(わる)!」という声も
玉巻アナ 残念ながら、名人たちからライバル候補として名前が挙がらなかったのが、円楽さんと松岡さんだけということになっています。
浜田 (円楽へ)師匠、どうですか?
円楽 生きてれば、いいんじゃない?(笑)
→円楽は脳腫瘍のため2019年7月に入院していたが、8月に高座復帰した
藤本名人 大変でしたね。
浜田 それは素晴らしい。
円楽 今、志らく相手にしてないし。
浜田 ハハハハ、いやでも…あ、同じ(1級)なんの?
円楽 いつの間にか、這い上がってきた。
志らく 前回は私も勝ったんで、私も相手にはしてない。
円楽 こいつなんか、朝のワイドショー(TBSの情報番組『グッとラック!』MC就任)やるって。そんなことやってる場合か?
藤本名人 帯です、帯。帯のMCです。
円楽 だから、落語がドンドン下手になると思うよ。
玉巻アナ ちなみに、そんな円楽さんなんですが、夏井先生のもとにまた贈答品が送られたということで。
藤本名人 賄賂!
円楽 あのね…。
玉巻アナ そのお写真がこちらです。
「赤とんぼのサンドウヰッチ」1950年創業 老舗洋食店の名物サンドイッチが紹介
藤本名人 有名なサンドイッチや、これ。
円楽 だって、御心配頂いたし。色々ご指導いただく方にきちんとご挨拶は必要じゃない。
浜田 分かりますけど。
ジュニア 終わってからで良いんじゃない?終わってから渡して。
藤本名人 そうですね、終わってからで良いんじゃない?
円楽 いやだから、先に美味しい物を食べてもらう(笑)。
浜田 さあ、松岡。お前も全然名前が挙がらなかった。
松岡 いやー、僕名人戦は5回目なんですけどホント下位ばっかりなんで、名前が挙がらないのは当然なんですけど。
→松岡は2018春が9位(最下位)、夏が6位、冬が7位、2019夏が7位に終わっている
浜田 そうやな。
松岡 絶対いつかひっくり返したるわ(笑)。
浜田 だいぶキレております。
→6位発表に「6位は嫌やわ」とジュニアが叫ぶ
▲6位(予選敗退)は北山
北山 早くない?
藤本名人 前回よりは上がったやんか?
→北山は前回の夏は予選最下位だった
***
浜田 光ちゃん、どうでしたか。このお題。
鈴木 もともと無機物と相性が悪いので、今回ストレートに無機物なので本当に大変でした。
松岡 「無機物」ねぇ。
ジュニア いや「冷蔵庫」は夏の季語なんですよ。
梅沢名人 そうですよ。
ジュニア 無茶苦茶ですよね。(笑) 
村上名人 秋のタイトル戦で。
梅沢名人 そうそう、夏の季語で秋を詠む。
ジュニア ホンマに無茶苦茶言ってくるな。
→7位発表に千賀「北山より下にはいかない」北山「は~い、千賀おいで」
→♪ズンズンの発表音に「千賀~千賀~」といじる藤本名人
▲7位(予選敗退)は円楽
円楽 大体あのへんだね。いつもあのへん予選は。
***
ジュニア 8位は一番嫌
浜田 いや、さっきも言ってなかった?
ジュニア いやいや、8位が一番嫌です。8位行きたい人行ったら?
梅沢名人 めちゃくちゃ中途半端だもの。
▲8位(予選敗退)は志らく
一同 ええ~!
ジュニア 朝とか昼とか(番組)するから!
→朝は『グッとラック!』、その後は『ひるおび』に出演する志らく
玉巻アナ 実は志らくさん、これで4回連続の予選敗退となってしまいました。
浜田 志らくはん危ないよ、もうちょっとで最下位なるとこです。
梅沢名人 疲れてるんだね。
***
※1位発表にジュニアが立ち上がりスタジオから驚きの声が上がる
梅沢名人 1位いっちゃう?
ジュニア 1位?
浜田 でもほら、予選通過の3人のうちの1人という考えで。
玉巻アナ 今回事前のアンケートで、夏井先生へのメッセージを残された方が多かったので、いくつかご紹介させて頂きます。
浜田 へ~、そうなんですね。
まず、鈴木光さんですが反省文を書いていらっしゃいまして…。
前回夏井先生に
「この程度出来ていたらOK」と
妥協した俳句を作っていると
思わせてしまったこと
本当に申し訳ありません。

失敗を恐れるあまり
殻に閉じこもっていた
自分に気づかされました。

藤本名人 マジメ!
村上名人 凄い、伸びる。
浜田 真面目でいいじゃない。
藤本名人 いい、いい。良いマジメ。
浜田 良いです、良いです。やっぱそう思われたんですね、ご自身でね。
鈴木 そうですね、なかなかその…何だろう。ミスを恐れるあまり攻めの句が私書けなくて。それを凄く反省してるんですけど。
浜田 今回はちょっと…。
鈴木 そうですね。攻めてみたんですけど、どうですかね。
浜田 いやいや、それは分かりませんよ。
→ニヤケ顔の村上名人が映し出される
玉巻アナ 千賀さんも夏井先生へメッセージを残されています。
浜田 どうした?千賀。
玉巻アナ 「高知新聞に名前を出していただいてありがとうございます」。
浜田 何やそれ。
千賀 ありがとうございます。
浜田 何やねん、それ。
千賀 冬麗戦で優勝した時のことを新聞(の取材)で話して下さって。僕が泣いて…泣いたというのも真剣にやったから泣いたんだと。それをストレートに伝えて下さって。
→高知新聞の高知市 夏季大学ノートより、「俳句のある人生」というコラム記事で俳人夏井いつき先生が写真付きで紹介され、「つらいこと 俳句の種に」という小見出しまである。以下の部分が拡大された。
番組内の大会で千賀(健永)さんというジャニーズの若者が優勝し、彼は「うわーっ」と声を上げて泣いた。本気で努力しないと泣けない。真剣にやってこそつかめるものを生身で伝えてくれている。

浜田 一瞬だけね、あそこに(優勝者の)絵が。
千賀 一瞬じゃないです。
ジュニア 2週間だっけ?
千賀 2週間じゃないです。ほぼ1年ありました。
▲1位(決勝進出)は松岡
松岡 え~!
村上名人 念願の!
浜田 初めて通過した。
松岡 え~、マジですか?
玉巻アナ 松岡さんは4回目の予選出場で初めての決勝進出となります。
松岡 いや、ホントですか?
梅沢名人 素晴らしい。
***
※残る1席をジュニア、千賀、鈴木、皆藤の4人で争う展開
浜田 残っているのはこの4人。合コンやな、合コンや!
村上名人 良いメンバーですね。
藤本名人 (既婚者である)ジュニアがいらんな。この合コン。
ジュニア 何でやねん!回し、いるやろ1人。
藤本名人 女子からしたらジュニアじゃないわ~(笑)。
村上名人 お金だけ払ってね。
→笑いながら手を払って否定する鈴木
藤本名人 お金だけ払って帰ってほしいよね。
浜田 予選通過あと1人ですからね、女子が1人くらい入ってくれてもってとこありますが。ここは…最下位を見ます。
ジュニア 実は一番嫌。
浜田 8位じゃないの?
ジュニア 一番嫌です、最下位
藤本名人 そらそうやろ。
▲最下位(予選敗退)は千賀
千賀 マジか。
石田 みんな思ってたんとちゃう。
浜田 アハハハ。
石田 みんな思ってたと思う。何となくだけど、みんな思ってたね。
藤本名人 「千賀」「千賀」やん。
ジュニア でもこの間別番組で会ったとき言うてたやん。「どうなの俳句?」(千賀は)「できました」。
藤本名人 三球三振
浜田 「三球三振」。
円楽 ジェットコースター千賀。
→ランキングシートに座る際に後ろのセットにぶつけたと勘違いし後ろを振り返る千賀
千賀 お~ごめんなさい。
藤本名人 何もなってないよ。
横尾名人 天然も出ちゃった。
***
浜田 さあ残っているのはこの3人。凄いですね~、女子が2人とも残っています。
ジュニア しんどい。
藤本名人 美女来てほしいな。
▲4位(予選敗退)は皆藤
皆藤 ああ~。
藤本名人 惜しかった。
皆藤 ありがとうございます。
浜田 (3位の)石田が邪魔やな、こうなってくるとね。
石田 邪魔って何ですか?邪魔?
藤本名人 邪魔やな、石田は。
浜田 そこテレコ(逆)でも良かったんちゃうか。
石田 テレコはダメでしょ!何で人で選ぶんですか?
藤本名人 替えよう、替えよう、そこ。
***
浜田 残っているのはこの2人。光ちゃんどうですか、ここまで。
鈴木 さっきの(先生の)コメント。技術力と発想の両輪というのが凄く刺さってきて、もしかして私もそうじゃないのかなと思って、ちょっと今回は…。
浜田 ジュニアさん、どうでしょう?
ジュニア 僕は、両輪→乗り物→バイク。イケるんちゃうんか?(笑)
浜田 フジモン、どう思いますか?この2人。
藤本名人 ジュニアですよ~。ジュニア、来ると思いますよ。冷蔵庫からどうやってナナハンに持っていくのかっていう。(笑) もうワクワクしている。
浜田 それすごいよな、それはすごいよ。
藤本名人 それが多分、見れると思うんでね。
浜田 村上さんはどう思われますか?
村上名人 いやもう、光ちゃんに絶対上がってきて欲しい。
浜田 なるほど。
村上名人 ダメでも『村上賞』は絶対あげますから。(笑)
藤本名人 『村上賞』?どんな賞なんですか、『村上賞』というのは?
ジュニア 何が頂けるんですか?
村上名人 『村上賞』は…あの~…300円を
一同 ・・・・・
浜田 さあ、それではまいりましょう。
藤本名人 これはアカン。
村上名人 ゴメンなさい。
ジュニア 令和イチすべってたで、今。
村上名人 我ながら面白くないですね。
▲2位(決勝進出)はジュニア、5位(予選敗退)は鈴木
ジュニア よし!ありがとうございます。
→さっさとランキングシートに移動しようとするジュニア
浜田 ジュニア、まだや!
***
浜田 どういうバイクの出し方してくるんでしょうね?
藤本名人 冷蔵庫から、どういう風にナナハンに持ってくるのか。
→ナナハンに乗る仕草を見せるジュニア
藤本名人 あ、乗ってる。冷蔵庫に乗っちゃったよ。
***

○それでは順位別にみていきます

1位◆『駆け抜けた 残暑の泡の ハイボール 松岡充
◎とても気持ちよい。中七の語順と表現が巧い。最後に泡のような疲れが吹き飛ぶ達成感が出た。実体験の強み。

【本人談】
今年の夏を通して炎天下の中、映画の撮影をしていた。それの打ち上げが初秋にあり、乾杯するハイボールの泡が「終わってしまう駆け抜けた夏やなと」。いや~、1位ですか?

中田名人 複合動詞(「駆け抜けた」)を上手く使いましたね。私、複合動詞弱いんです。いつも先生に注意されるんですけど、上手い!おめでとう。

夏井先生 
とても気持ちよく書けた
一番褒めないといけないのは語順
「残暑の泡」とくると、読み手の脳は”残暑の泡って何だろう?”と一瞬思う。
心理的な泡のようなものかと思わせ、「のハイボール」で映像が出てくる。
これは達成感、非常に爽快な思いが書けている
作者の泡のような心身の疲れ・おりのようなものがハイボールの冷たさで吹き飛ぶ
素直に実体験を書いたものの強み。
全く直す必要はない。

一同 素晴らしい。

添削なし

2位◆『長き夜の ジャーの隣に 立つ杓文字 千原ジュニア
◎日常の光景だが飄々とした句。「立つ」が擬人化でない映像になり小技も効いた。上五の助詞の選択も正解。

【本人談】
奥さんと子どもが寝ている我が家で1人のとき、ちょっと小腹が空いたときに台所に行く。ジャーを見ると、最近の杓文字は自立する。「いけよいけよ」と杓文字が言ってるかのような感じを詠んだ。

梅沢名人 いや、大したもんだ。ナナハンから村上流に来たって遂に。怖いね~。
本人 すいません、村上流?(笑)
梅沢名人 そうそう。 身近な世界。10cm、15cm、50cmの間の世界の句を詠むという。
浜田 身近なというね。
藤本名人 切り取って…台所を。
梅沢名人 いや、これ詠めるようになったら、こりゃ強敵だわ~。スゴい!

夏井先生 
兼題写真から、発想がこんなところに来ると思わなかった。
冷蔵庫の隣にはジャー、ジャーの隣には杓文字もあるだろう。当たり前の光景を詠んでいるが、飄々とした可笑しみがある。
良いところが沢山ある。一番褒めないといけないのは、「立つ」。普通は擬人化になる。
ジャーの隣に突っ立っている・立たされている杓文字というのは、擬人化のようでいて擬人化ではない映像になっている。小技も効いている。
もう1つ議論すべきは「」。季語「長き夜」の下の助詞は「」「」「」も候補に挙がる。選択肢は4つある。本人も悩まれたはず。
結果論、「にしたのは正解
」は単純に、季語「長い夜」を強調しただけ。
」だと、長い時間を突っ立っているんですねという杓文字の擬人化の方に寄ってしまう
」は、散文の匂いが強くなる
」で、ゆっくりと焦点を狭めていきながら杓文字がポコッと出る
このメカニズムと擬人化。これはコツコツ勉強してないと作れない
私は、コツコツ勉強するあなたが大好き

本人 違いますよ。鼻ほじりながら、書いたんですよ。
夏井先生 どうぞどうぞ、書いてください。
直しはいりません。

添削なし

3位◆『明日もまた生きる チルド室に葡萄 石田明(NON STYLE)
◎破調を思い切ってぶつけた。後半は庶民の健気さが出た。季語の「知恵の樹」のイメージも合う。よく攻めた。
※季語は「葡萄(ぶどう)」。五七五の定型を崩す破調に大胆に挑んだ。

 【本人談】
子どもの頃は貧しかったので、葡萄は貰い物でしか食べられなかった。1日で食べきるのが勿体なくて残す。本来なら野菜室に入れるべきだが、お宝感があってチルド室に入れたくなる。「葡萄があるから、明日もまた生きられる」という大袈裟な子どもの前向きの心情を詠んだ。

梅沢名人 これはホントに葡萄を取ってあるというのが、見事に俳句の中に入っている。素晴らしいじじいは喜ぶ。
浜田 じじいって言うな。ばばあもおるやろ!
玉巻アナ そこじゃない。
浜田 そこじゃないの?
玉巻アナ そこじゃない、どちらもダメです。

夏井先生 
これは破調を思い切ってぶつけてきた
明日もまた生きる」。凄く大きな志や悲しみを言うのかと思うと、「チルド室に葡萄」とポンと持ってくる。
野菜室かチルド室かはどっちでも良い。冷蔵庫のメーカーの人がうだうだ文句言う必要はないと思う。
作者はチルド室に、「勿体ないな」と思いながら半分だけ食べて半分を入れたに違いないと。
庶民の健気さ。これが後半に出てくる。わざと五七五に入れてない型を選んだと考えて良い。
最後、「葡萄」じゃないといけないのかという声もあると思う。何でも良いといえばそうだが、「葡萄」は「知恵の樹」とも呼ばれる。
そういうイメージを思うと、案外「葡萄」は合っているのではないかと。
よく攻めてきた。褒めましょう。
下手に直すとバランスが崩れる。触ってはいけないタイプの句。

添削なし

4位◆『別れ蚊を 払う一人の 台所 皆藤愛子
◎技術はキチンと出来ている。季語と動詞の選び方も良く寂しさも伝わる言葉を選んだ。独自性が弱いのが残念。

梅沢名人 あ~、いいねぇ。
※季語は「別れ蚊」。秋まで生き残った弱々しい蚊のこと。

【本人談】
台所で弱々しい秋の蚊が寄ってきて、払ったら余計に寂しさが増したという句。

梅沢名人 素晴らしい。
本人 ありがとうございます。
梅沢名人 石田、(順位を)替えてもらえよ!
石田 何で自分から「下げて下さい」って言うんですか?
梅沢名人 おかしい、なっちゃんおかしいわ。こっちの方が良いわ!
本人 え!嬉しい!
梅沢名人 絶対いい!物凄く世界観があるもの。
本人 ありがとうございます。
藤本名人 石田、5位ですね、これはね。
石田 な…何でなん?何で1コ飛ばして5位?わけわからん。
藤本名人 凄く良いよ、これ。
梅沢名人 良いねえ。

夏井先生 
おっしゃる通り、とてもキチンと出来ている句
「蚊」は夏の季語だが、「別れ蚊」は秋の季語。
夏の蚊だったらパチンと叩く。哀れな秋の蚊を「払う」。動詞の選び方も良い
後半の「一人の台所」の展開も寂しさがキチンと伝わる
よく勉強してキチンと言葉を選んでいる句。
3位の石田の「葡萄」の句と比較した時に、技術的にはしっかりしているが、独自性で損
“台所”、”蚊”、”たった一人”、”手で払う”という素材は俳句では詠まれがちな素材
技術をキッチリとやる『技術点』と独自の発想をきちんと入れる『独自性』は車の両輪
その意味では、3位の石田の句は、今生きている自分を正直に、しかも破調を恐れずに書いた。そういうところが評価しないといけないところ。
石田 先生、今のもう1度お願いします。
浜田 何でやねん!もうええわ!
夏井先生 
直すところは全くない。

本人 ありがとうございました。
梅沢名人 う~ん、惜しいな。

添削なし

5位◆『本を閉じ 秋の灯しづか 製氷音 鈴木光
◎聴覚の目の付け所は良い。下五の表現も作者なりに工夫した。全体的に材料が多く季語に静けさは含まれる。

※「秋の灯」は秋の夜に灯す明かりを指す秋の季語。 

【本人談】

秋の夜は長いのでよく読書をする。本を読み終えて読書灯の下で何となく余韻に浸っていると音が静かである。その時に冷蔵庫の氷を作る音がして、ふと我に戻されるという句。

※製氷の音は、最近のファミリータイプの冷蔵庫に主流である冷蔵室内の水を入れる製氷タンクからパイプを通して氷を作るもので、製氷皿に氷が落ちる時のものである。

村上名人 僕は凄くいいです。
梅沢名人 お前さんのお弟子さんは5位なんだよ!
村上名人 ホントにただ、もっと上がってきてほしいというか。
梅沢名人 だからどこが5位なんだよ!言ってやれよ!
村上名人 言おうとしてんじゃん!
一同 (笑)
ジュニア おい、大先輩やぞ。
藤本名人 キレるな。イラっとすんな。
村上名人 多分、「秋の灯しづか」が「秋の灯」の季語自体に静けさを持ってるから、この3音でもうワンパンチ入れられたのかも。

夏井先生 
何だかんだ言いながら正解にジワっと辿り着いてきた。
作者を褒める。製氷器が氷を作る時の”カシャ”の音(聴覚)に目を付ける感覚が良い
「製氷音」の言い方。巷ではこのような言い方か分からないが、作者なりに短い言葉であの音を表現したのなら、努力を褒めるべき。
プレバト!!でこういう言葉が出ると、その後に色んな俳句大会でドンドン出てくる。日本語として正しいのかは横に置かせていただく。
光ちゃんなりに工夫した言葉だというのは、今作者が分かって納得した。ここも頑張っている。
ただ、全体的に内容がちょっと多い。「本を閉じ」がなくても十分に一句になる材料はある
全体を入れたければ、村上師匠の言うように「しづか」は要らない。「秋の灯」から始めた方が良い。「秋灯(しゅうとう)」とする。
「秋灯に本閉」とし、カットが切れる。秋の灯の下で本を閉じた。
そこから「製氷音」とし、音を小さくする。「かすか」。微かな製氷音が聞こえるから、ますます静かだと。
ここまでやっていれば、今日はBEST3に入っていたかもしれない。

藤本名人 難しいなあ。
梅沢名人 ムズい。
本人 「かすか」という発想がなかったので、これからもっと勉強して上手くなるように頑張ります。
浜田 分かりました。
藤本名人 偉いな。
村上名人 伸びる!
藤本名人 そりゃ、東大入れるわ。

添削後
秋灯 本閉づ 製氷音かすか

6位◆『秋の夜や 母の怒号と ピアスホール 北山宏光(Kis-My-Ft2)
◎兼題からの連想は良い。名詞と「と」で状況が伝わる。メカニズムを理解した句で作者に驚愕。着地も緊迫感。

【本人談】
兼題写真の「冷蔵庫」を見たときに、色々な食材があり家庭感を感じた。自分の家族はどうだったかを思い返すと自身の反抗期の様子が蘇ってきた。ピアスの穴を開けたとき、母に怒られたなということを思い出したところに発想を飛ばした。

横尾名人 「冷蔵庫」から、母の面影を出すという発想は凄く良いなと。あと、彼の高校時代のことを思い出す感じで、「あの時の北山はああだったな」と。
浜田 なるほどね。
横尾名人 ヤンチャしてたなという…。
藤本名人 悪かったの?悪かったんだ
→ジャニーズ専門の男性アイドル誌「ポポロ」2018年11月号より、食材の秋スペシャル企画と題してキッチンに立つ茶髪の北山(当時23歳)と藤ヶ谷の写真が紹介される
本人 いやいや、悪くもないですよ。お前、みんな見てんだからやめろよ!(笑)
横尾名人 過去の雑誌見てもらうと凄い髪色してるんで。
本人 みんな、そうですよ。横尾さんもこんなもみあげ長くして。(笑)
→集英社の芸能雑誌「MYOJO」2011年11月号より、オープンカーの助手席から後ろを振り返る横尾(当時25歳)と運転席の千賀と映る写真が紹介される
浜田 もみあげ長いはないやろ。
本人 こうやって歩いてた。(笑)
→ゴリラのような恰好で歩く様子の北山
横尾名人 歩いてない。
本人 原宿の駅前を。

夏井先生 
これは兼題写真から離れすぎていると思う人も当然出てくる。
“冷蔵庫→母→出来事”という風に割と連想は作者の中では離れていないと逆に思った。
「秋の夜」の季語を「や」で強調する。
「母の怒号」が出てきて、「ピアスホール」と展開する。
さらっと書いているようにも見えるが、「と」の助詞で「母の怒号」「ピアスホール」を並べている
これにより、何が原因で、何が起こって、どういう状況だったか全部わかる
言葉のメカニズムが分かっていないと、「と」でそこまでやれると思いにくい。
ひとまず、俳句のメカニズムが分かって作っている人だと思った。
今、作者見てエ~!!
本人 何で「エ~!」だよ~。
夏井先生 よく勉強した、よく勉強した。
本人 ちゃんと、やってるよ。
夏井先生 
最後の「ピアスホール」の字余りもささやかな緊迫感になっている。
作者見て「エ~!」だよ。偉い偉い。
これはキッパリと直さない。

藤本名人 え?6位なのに?
ジュニア これで6位か。

[ここがポイント]
発想の広げ方
※お題の「冷蔵庫」の中に入っている食材などから句が思い浮かばないときは、冷蔵庫の外に少しずつ発想を広げることも1つの手。例えば、「冷蔵庫」→「台所に立つ母」→「母との思い出」という風に発想を広げることで、俳句の種に出会えることもあるのです。

添削なし

7位◆『秋天に 産廃の冷蔵庫 口を開け 三遊亭円楽
◎独自性を探し類想感が裏目に出た。季重なりは成功だが語順が悪い。空から振り下ろすようなカメラワークへ。

【本人談】
冷蔵庫の行く末を考えた。産業廃棄物として白物家電が山積みされているところに パカッと冷蔵庫は扉が開き、口を開けて秋の空を飲み込もうとしているようだ。「口を開け」は喋り始めること。「今まで散々便利だって言ってたのに、このさまかい…」みたいな寂しさを詠んだ。そこをどうとらえるか。

浜田 さあ、名人村上さんどうですか?
村上名人 僕ですか?
一同 (笑)
梅沢名人 あんた…。
ジュニア 何でやねん。
浜田 名人やて言うてるやん。
ジュニア 5分の1やろ、そりゃあるやろ。
梅沢名人 お前だけだぞ!この番組リラックスしてやってるの!
一同 (笑)
藤本名人 まあ、ええことですけどね。
村上名人 「口を開け」という擬人化が、そこまでおっしゃってた意味が伝わるかな?というのは難しいかなと。
梅沢名人 違う、語順が悪いんだよ! それと「冷蔵庫」と(「秋天」)季語が2つ入ってんだよ。まあ、あえて分かってやってらっしゃるなら良いんだけど、語順がちょっと悪い。
浜田 僕は村上を指名したんですよ。(笑)
梅沢名人 あぁ~。
一同 (笑)
藤本名人 情けない声出すのやめて下さいよ。
村上名人 叱られないで下さいよ。

夏井先生 
(梅沢名人の指摘は)横から口を入れたにしては当たっている。おっちゃんの言う通り。
実は、今年の俳句甲子園でも「冷蔵庫」は兼題の1つだった。
思いのほか、”もう使われていない冷蔵庫”を詠んだ句が結構あった
人と違う独自性を探し、同じところに集まる。俳句では結構あること。
気付いた点は良いが、逆に類想感も出てきてしまった
「冷蔵庫」は夏の季語だが、これは”捨てられた”冷蔵庫なので、「秋天」が主たる季語。季重なりは成功している。
おっちゃんの言う”語順”がまさにそれ。「口を開け」るというのが「秋天」に向かって開けている。「秋天」の下で開けているのだから、「秋天」「口を開け」をくっつけないといけない
ね?そうだよね?おっちゃん。
梅沢名人 (小声で)はい。
浜田 えっ?
藤本名人 違ったんちゃう?絶対違ったわ。
夏井先生 
秋天に口開け」で「を」はいらない。口を開けて下さい。
「産廃冷蔵庫」と持ってくる。
梅沢名人 あ~これは良いわ。
夏井先生 
最後の「冷蔵庫」から、秋の天の方にもう一度振り上げる効果を生む
直してたら、(6位の)「ピアスホール」の上に確実にいく。

北山 なぜ俺を並べる?

[ここがポイント]
映像が動き出す語順で詠む
※添削後のように最後に「産廃冷蔵庫」で終わらせると、空から地上にカメラを振り下ろすような映像を描くことができます。映像が動き出す語順で詠むように心がけましょう。

添削後
秋天に 口開け 産廃冷蔵庫

8位◆『釣瓶落とし 喋るな黙れ 冷蔵庫 立川志らく
◎最近の機能的な冷蔵庫の句として類想が多い。中七はストレートだが上五の季語が弱く面白みが伝わらない。

※「釣瓶落とし」は秋の日が急に沈む様子を指す秋の季語

本人 
全く8位は想定してなかったんで、ショックで言葉が出てこない
円楽 俺の下だ。
本人 他人事でいたから…。

【本人談】
最近の冷蔵庫はドアを開けると光のセンサーが反応し、色々と喋ったりするものがある。「釣瓶落とし」は秋で日が急に暮れる様子だが、木の上から落ちてきて人間を襲う妖怪の名でもある。イライラして落ち込んで何かを食べようと思うが、冷蔵庫が喋るとうるさいと感じる人物の心情を詠み、「妖怪」と「喋る冷蔵庫」とを掛けた。私としてはいけると思った。まさか、師匠の下に来るとは。

浜田 フジモンどうですか?
藤本名人 「喋るな黙れ」でしょ。怖いな~。「喋るな黙れ!」。うわ~、怖いなと思いました。怖い怖い怖いって。
梅沢名人 これもね、季語が2つ入ってるんだよ。「釣瓶落とし」と「冷蔵庫」
浜田 え?お前はフジモンなの?
一同 (笑)
→藤本名人を指名したのにまたも口を挟むため叱りつける浜田に、あっけらかんとした顔の梅沢名人
玉巻アナ 「お前」はダメです。
梅沢名人 コイツ言わないから。

夏井先生 
おっちゃんの指摘のように季語が2つあるという問題もあるはある。
昔の”氷冷蔵庫”の時代からすると、「冷蔵庫」は季節感がなくなってきている。
別の季語と取り合わせて、強弱をつけて上手くいくケースもある。一概に季重なりがダメではない。
むしろ、喋る冷蔵庫に対して「うるさい」「黙って」という句は最近は案外詠まれている
皆さんが思っている以上に、俳人たちは新しい俳句の種を探す。
“喋らないでいいのに、いちいち喋りやがって”とみんな思う。
中七「喋るな黙れ」とストレートにぶつけている感じは決して悪くない。
中七以降を活かしたとしたとき、「釣瓶落とし」の季語がどこまで役に立っているか。そこが弱い
作者は妖怪と重ねたらしいが、本人が面白いと思ってるほど読み手の側は面白くない
“妖怪”と掛けていこうが、いただかまいが。
上五を諦めれば、色んな言葉がいくらでも入る。
時間情報「真夜中の」。夜中にコッソリ帰ってきたか、目が覚めたのか。喋らなければ分からないのに、家族にバレてしまった
理由を表現することもできる。「失恋や」。むしゃくしゃした様子。
リストラや」。リストラされるぐらいならまだいいかもしれない。
左遷の夜」。何で俺が左遷されないといけないのか。
上五を変えると、後半のフレーズが活きてくる。これ自分でやって

本人 まああの…生きてるだけで良いです。(笑)
藤本名人 病気してないでしょ。

添削後
 喋るな黙れ 冷蔵庫』
 喋るな黙れ 冷蔵庫』
 喋るな黙れ 冷蔵庫』
 喋るな黙れ 冷蔵庫


最下位◆『野菜室 百リットルの 香立ち秋 千賀健永(Kis-My-Ft2)
◎表現意図は悪くないが技術点で損。語順が完全にミス。新品の人工的な匂いに誤読。技術と発想を両方鍛えて。

【本人談】
秋の野菜は沢山ある。冷蔵庫の野菜室は100ℓ入るのを表現し、野菜室を開けると秋の香りが流れ込んでくるという…句だ!

横尾名人 いや、あの…100ℓの野菜室って業務用とか?
→うなずく出演者たち
本人 そうなの?
浜田 野菜室が100ℓってなかなかやから。
横尾名人 あの子まだ実家暮らしなんで。冷蔵庫ちゃんと見てないんです。(笑)
北山 実家暮らしまでバラしたの?(笑)
藤本名人 かわいそうに…。

夏井先生 
「野菜室」「百リットル」という言葉を使うのが問題ではない。こういう言葉を取り組むのも俳句の1つのチャレンジ
100ℓ問題は勿論ある。表現したことが悪いわけではないが、技術点がグンと下がってる
この語順では「野菜室百リットルの香」となるので、読み手は冷蔵庫の人工的な匂いを思ってしまう
冷蔵庫を買いに行った時の冷蔵庫の匂いを思わせてしまう語順になっている。語順で完全に間違っている
ひっくり返すだけで”100ℓ問題”問題も解決する。
「秋」から始める。否応なく読み手は秋の世界に飛び込む。
「秋の香立つ」とする。否応なく秋の香が立ち上がる。
「百リットルの野菜室」に持ってくる。100ℓの冷蔵庫の野菜室か?と読者が寄り添ってくれる。
こうするとだいぶ問題点が和らぐ。
発想と技術は車の両輪。両方鍛えていきましょうね。

添削後
秋の香立 百リットルの 野菜室

編集後記
金秋戦の兼題写真「冷蔵庫」は夏の季語。予選は季節感のある兼題が毎回出されますが、タイトル戦の題と季節が異なるのは初めて。俳句の提出時期が夏の盛りのはずですから仕方ありませんね。

1位は決勝進出初の松岡さん。9名中唯一、兼題の冷蔵庫に冷やされていたであろう物を取り合わせました。中七の比喩も面白く、打ち上げかもしれないと伝わり、お酒から背景が膨らむ感じが夏井先生の心を掴みましたね。個人的には何を「駆け抜けた」のかが不明でした。描写は後半の「泡のハイボール」しかありませんが、心情を想像できる良作で1位にされたのかもしれません。

2位はタイトル戦5連続予選突破のジュニアさん。ありきたりの風景をどのように解釈するかに自由度が高い一句でしたが、「ジャー」「杓文字」の取り合わせの距離感が近く、意外性や滑稽味が今ひとつな印象でした。上五の助詞の選択も褒められましたが、「や」でもあまりニュアンスが変わらないように感じました。

3位は2度目の決勝進出となる石田さん。「明日もまた生きる」が大きなポイントで、人生観を詠って負のイメージを持つ季語と取り合わせるのは当方もやりたくなりますが、そこは「葡萄」でした。本人曰く作者の心情らしいのですが、房ではなく粒として保存される葡萄を擬人化したようにも感じられました。ただ、「も」「また」の重複は「富士もまた」の句で降格案件のある石田さんでしたが、本人の表現意図として先生も汲み取ってくれましたね。
ここまでが決勝進出となります。

4位は2回目の挑戦となった皆藤さん。「別れ蚊」で蚊の様子も伝わり、「一人の」という数詞も効いて全体としてきっちりと情景が伝わってきます。独自性が弱いという指摘でしたが、以前も「ががんぼ」と同じ蚊の句を詠んでいるので、違う発想を欲しているのではないかと思いました。

5位も2回目の挑戦となる鈴木さん。「製氷音」の語彙の指摘ですが、現代の冷蔵庫の機能として実感がわくため良いのではと感じました。ただ上五も散文的匂いがあり、「本閉じて」だと「て」の緩みが出るため「本を閉じ」にしたのかもしれませんが、ここでは「を」は不要でしたね。期待値や話題性に富む彼女ですが、ここが踏ん張りどころなのかもしれません。

6位は前回最下位のキスマイ北山さん。季語で夜の様子、後半で台所の様子が伝わり、「ピアスホール」と反抗期の実体験で勝負。先生は作者に仰天しましたが、当方も北山さんの成長ぶりには驚愕。中七「と」の並列で伝える技術を褒められました。「の」の方が意味は伝わりやすいと思いましたが、原因・理由の因果関係が強く出るのでしょうか。兼題から離れすぎたのが大減点のようですが、上位の句もそうですし、個人的には予選通過でもおかしくないと感じました。

7位はタイトル戦に弱い円楽さん。中七が10音と大幅な字余りでしたが、擬人化した冷蔵庫の心情とその後の映像がよく伝わる一句。「産廃」が聞き慣れてないと読みとりにくいようにも思いますが、現代社会を風刺したものとしても良いと思います。

8位も初回以来結果を残せない落語家の志らくさん。中七に命令形の強い動詞2つを重ねたのがややしつこく、季語が合いませんでした。噺家らしく滑稽な意味合いを込めましたが、工夫が滑った印象です。音声が出る冷蔵庫も最近の機能的なものとして使っている人は実感がわきますが、その辺りも気になります。

最下位は予選ではホームラン、決勝では最下位と3回続いていたキスマイ千賀さん。初球から三振に沈みましたが、案外発想は悪くありません。ホームタイプの冷蔵庫なら400リットルはありますので、「百リットル」の野菜室は業務用でも何でもありませんが、数詞が裏目に出て共感を得られませんでした。語順を直されると低順位に沈む傾向が強いタイトル戦で、厳しい結果となりました。

さて、今回の俳句の特徴を当方なりに分析すると以下の3つのタイプに分類出来そうです。

①「冷蔵庫」を季語に用いて擬人化した句
→7位「口を開け」、8位「喋るな黙れ」

②冷蔵庫にまつわる単語と別の季語を取り合わせた句
→3位「チルド室」、5位「製氷音」、9位「野菜室」

③冷蔵庫の周辺へ発想を飛ばした句
→1位「ハイボール」、2位「杓文字」、4位「一人の台所」、6位「母の怒号」

①が最もお題に沿っているのですが、両名とも落語家で「冷蔵庫」以外をメインの季語として使いましたが低評価となりました。また、②は冷蔵庫から広がる背景を詠む物として想像の範囲内でしょうか。③も発想力として全体的に高評価でしたが、兼題が「台所」「食卓のある光景」でも成り立ってしまい、兼題から情景が離れるほど評価が下がる印象もありました。

また、今回は兼題が今年の俳句甲子園にも取り上げられていたということで、先生も様々な「冷蔵庫」の句を見てきたはずで、①のタイプの句は類想を指摘されやすく、かなり不利でしたね。

番組的には当初、キスマイ対決・噺家対決・女性対決と煽ってましたが、そのいずれにも絡まない3名が決勝進出を果たしました。ただ、どの句も発想はさすがで、僅かな差によって順位が決まってしまったかのように感じ、もはや段位などは番組に何回出ているかで決まっているのかと思うほどハイレベルな戦いに思いました。

個人的には北山さんの句が大変良いと感じましたが、どの句が良いのかは読み手によって結構違うのではないでしょうか。
俳句って難しいですね。


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ジュニアさんの筆跡がいつもと違うように思いましたが、私の気のせいでしょうか?

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