「プレバト!!」で披露された女優 森口瑤子の全俳句一覧です。
名人7段 森口瑤子(もりぐちようこ) 合計41句
成績(2023年8月31日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ3回
<特待生時代>
1ランク昇格11回、
現状維持7回、
1ランク降格0回
第3回冬麗戦予選6位
第4回春光戦予選A5位、第4回炎帝戦予選C4位(最下位)、
第4回金秋戦予選A1位・
決勝8位、
第4回冬麗戦優勝
第5回春光戦予選C3位、(第5回炎帝戦13位)
、第5回金秋戦予選A2位・決勝10位(最下位)、第5回冬麗戦3位
第6回春光戦予選D1位・決勝2位、第6回炎帝戦3位、第6回金秋戦予選B1位・決勝8位、第6回冬麗戦4位
浜田杯6位、第7回炎帝戦11位
ふるさと戦(写真俳句)で
大阪編4位、京都編2位
●昇格率 61.1%(11/18)◆添削なし秀句 19句/41句→50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ→
人物紹介◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 | 才能アリ | 仏壇の向日葵までもくたばりぬ |
2 | 才能アリ | 唐黍は縦一列をむしり食む |
3 | 才能アリ | ブティックの鏡うそつき落葉蹴る |
4 | 冬麗③予選6位 | シウマイは売り切れ駅も年の暮れ |
5 | 1ランク昇格 | 道草は砂町銀座おでん食ふ |
6 | 春光④予選A5位 | 春光やケトルの銀の艶めけり |
7 | 炎帝④予選C4位 | 毒々しと思ふ日あり氷菓子 |
8 | 1ランク昇格 | 謎解きの頁に蜘蛛は果ててゐる |
9 | 金秋④予選A1位 | ちゑさんの被爆ピアノや秋はきぬ |
10 | 金秋④決勝8位 | 秋てふや夢の途中に時計鳴る |
11 | 冬麗④1位 | 風花へしゅぱんしゅぱんとゴム鉄ぽう |
12 | 現状維持 | 加湿器の給水せよに起こさるる |
13 | 春光⑤予選C3位 | 遠足のリュックの底にチョコの染み |
14 | 1ランク昇格 | 花疲れリュックの底の底に鍵 |
15 | 1ランク昇格 | ジェラシーを折ってたたんで白日傘 |
| 炎帝⑤13位 ※順位のみ発表 | 日焼けして上腕二頭筋強し |
16 | 1ランク昇格 | 花火果て電車空く間のデンキブラン |
17 | 現状維持 | 嘘ばかり綴る絵日記カンナ咲く |
18 | 金秋⑤予選A2位 | 座り込むアンカーの目に秋夕焼 |
19 | 金秋⑤決勝10位 | 秋蝉や仰向いてなほぎぎと鳴く |
20 | 現状維持 | 昨夜よりも痩せたる母や日向ぼこ |
21 | 冬麗⑤3位 | 嚔してスペードの位置忘れたり |
22 | 春光⑥予選D1位 | 春愁をエスカレーター地下へ地下へ |
23 | 春光⑥決勝2位 | 馬の子に弄られてゐるアナウンサー |
24 | 現状維持 | 屑かごにある七夕竹の死骸 |
25 | 炎帝⑥3位 | メールぴこんぴこんシャワー中だってば |
26 | 金秋⑥予選B1位 | 秋晴や「アリクイさんぽ三時より」 |
27 | ふるさと戦(大阪)4位 | ツッコミは愛なんだって啄木鳥 |
28 | 金秋⑥決勝8位 | 四番打者四球を選ぶ子規忌かな |
29 | 1ランク昇格 | 足踏みを五回枯葉の音愉快 |
30 | 現状維持 | 長ゼリフ終へ差し入れの鯛焼 |
31 | 冬麗⑥4位 | マフラーにきら失くしたはずのピアス |
32 | ふるさと戦(京都)2位 | ささくれた橋へ零るるさくらかな |
33 | 1ランク昇格 | 覚えなき青痣きっと春のせい |
34 | 1ランク昇格 | 白粥は三日目春の風邪飽きた |
35 | 1ランク昇格 | 水筒の底にゐる春愁の澱 |
36 | 浜田杯6位 | ほんたうは優しいくせに青山椒 |
37 | 現状維持 | 肴手土産に来る父の日の父 |
38 | 1ランク昇格 | 木洩れ日に晒され空蝉のしずか |
39 | 現状維持 | 口々に夕立のこと路線バス |
40 | 炎帝⑦11位 ※番組解説なし | 命日を集う紫陽花のレストラン |
41 | 1ランク昇格 | 箱庭の四人家族の無表情 |
▼人物紹介「プレバト!!」では初登場で才能アリを獲得した女優。夫は脚本家の坂元裕二で「世界の中心で愛を叫ぶ」「カルテット」「最高の離婚」などの作品を手掛けた人物として知られ、自身もカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した映画「万引き家族」などに出演している。初登場時の紹介BGMは"セカチュー"から平井堅の『瞳をとじて』。
好成績だったため、主人によるゴースト疑惑も浜田からかけられたが、本人は勿論否定している。
句の特徴は意図を持った言葉のセンスと表現力。平易な言葉遣いだが、豊かな感性でシンプルに映像を切り取る句が多く、光浦靖子は「心の置き方がいつも綺麗」と語りファンと名乗っている。通常挑戦者で才能アリを獲得した3句は、心情を込めた動詞を最後に用いたのが特徴的である。
初回査定で夏井先生から「俳人としてのセンスがとてもある」と絶賛され、その甲斐あってわずか1回の査定で1か月後の昇格査定SPへの挑戦権を獲得し、特待生候補に名乗りを上げた。
2回才能アリを獲るも、夏井先生から「もっと広い景色や大きなモノを詠んでほしい」と評されて、一旦は認定お預けとなる。しかし、3回連続での才能アリが決め手となり、初登場から約4ヶ月(18週)というスピード出世で通算27人目・女性8人目の特待生に認定された。
初回に「向日葵」の季語を用いて、亡き人に思いを馳せる点では筒井真理子の初回査定と全く同じであるが、その筒井を差し置いて、先に特待生を決めた。
満を持して挑んだタイトル戦・冬麗戦は予選6位に沈むも、そのセンスは先生に褒められた。続く春光戦・炎帝戦も予選通過を逃したが、金秋戦で見事に1位通過を果たし、結果が出始めている。そして、冬麗戦では唯一の特待生として参戦し、並居る名人を押さえて女性初優勝を成し遂げる下剋上を達成した。
夏井先生が一目置く逸材だと期待された初の昇格試験は「ウイットに富んだ句」と称賛され、見事に昇格先行。続く査定でも梅沢名人が絶賛して昇格。現状維持を挟みながら、実体験を詠んだ句で3連続昇格を果たし、通算12人目、中田喜子に続く2人目の女性名人となった。5級から査定6回での名人到達はフルポン村上名人の8回を凌ぐ過去最少回数記録である。
他方、名人となってからは3回連続現状維持と苦戦していたが、久々の挑戦で昇格を勝ち取った。
ふるさと戦は2度挑戦。役者として撮影を行っていた関西地方でエントリーするが、惜しくも優勝を逃している。
また、2023年1月のふるさと戦出演を報告した自身のインスタグラムで、「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」の会員であることを公表している。
●[1] @19/08/01◆お題:
猛暑日[35℃の電光掲示板]『仏壇の向日葵までもくたばりぬ』才能アリ2位70点
添削後
『仏壇の向日葵もくたばつてゐる』
季語は「向日葵」。春に「プレバト!!」が大好きな母が亡くなり、凄く悔しい思いが沢山ある。仏壇に飾る花はいつも華やかな花だが、向日葵を飾ったら猛暑であっという間に枯れ、「母みたいに早くくたばってしまったな」という思いを重ね、浜田から「口悪!」と言われるも「愛がある」と語った一句。中田名人は「『くたばりぬ』を書くかという面白いセンス」と褒め、先生も仰天して「作者に非常に興味のあった作品」と評し、こういうことを淡々と吐ける人は俳人のセンスが大変あると感心する。全体の展開が非常に良く、下五のフレーズも上手いと褒め、くたばっているのは「向日葵」だが、「仏壇」で亡き人に対しても「くたばりぬ」という意味が込められ、様々な読みができると解説。「までも」は「も」だけで意味が伝わると消し、淡々と口語で書いた方がより伝わるものが深くなると語る先生は、最後を「ゐる」と言い切り、作者の呟きを歴史的仮名遣いで表現することで感情を生々しく伝える言い回しへ添削。深い愛や悲しみをもって呟いたに違いないという添削例なら、今日はダントツだったと語り、早くもインパクトを残した。
●[2] @19/09/19◆お題:
秋の果物屋さん『唐黍は縦一列をむしり食む』才能アリ3位70点
添削後
『唐黍まず縦一列をむしり食む』
季語は「唐黍(とうきび)」。トウモロコシはかぶりつかずに縦一列にむしり取ってハムハムって食べるのが好きだという一句。藤本名人は「縦一列に食べるのが好き。それがどうしたの?」と手厳しいが、横尾名人は「情景が出ている。北山よりしっかり書けている」と褒める。「名人の言う通り、それがどうした?」という句と語る先生は、どうでも良いことを書いて文学作品になるのも俳句の醍醐味だと押さえる。上五の助詞「は」が巧いと解説し、他の物は色んな食べ方をするが、唐黍「は」こういう風に食べるという助詞の意味を正しく使っていると評す。「食(は)む」という古い言葉で気取るのも滑稽感があり、手馴れの句の匂いがすると称賛。勿体ないのは「は」のニュアンスが複数読み取れる点で、"動作として最初に"の意味を強く出すために「まず」と書くべきと指南。添削後なら、読みは完全にぶれないと添えた。特待生昇格SPで才能アリとなるが、「仏壇の向日葵」「唐黍」だけを詠んでいるため、先生は「広い景色・大きなものを詠めるかどうか、1回確かめたい」と提案し、特待生認定は次回に持ち越しとなった。
●[3] @19/12/05◆お題:
洋服の試着『ブティックの鏡うそつき落葉蹴る』才能アリ1位▸5級72点
添削なし
季語は「落葉」。ミスコン経験者集結回で披露した一句は、ブティックにある試着室の鏡が綺麗に映りすぎると訴える心情を描写。試着した服に満足して着たまま帰るも、帰り道の途中で店の展示用ガラスに映る自分がぽっちゃりして見えたため、落葉を蹴散らして帰る様子を表現した。先生はとても面白いと評し、「ブティックの鏡」に対して「うそつき」と言う罵り具合が良いと称賛し、俳句のメカニズムを理解している人の句で、このフレーズで伝わると分かっていると続ける。季語も「落葉散る」では「うそつき」の強烈さに負けてしまうが、能動的な動作「蹴る」で「うそつき」とのバランスをとったと解説し、「全て理解している」と総括した。3回連続の才能アリとなり「この人は特待生になっても大丈夫」と先生から太鼓判を貰った。
[ここから特待生として査定]●[4] @19/12/26◆お題:
年末年始の駅弁売り場『シウマイは売り切れ駅も年の暮れ』第3回冬麗戦予選6位添削後
『シウマイは売り切れ駅は年の暮』
季語は「年の暮」。横浜・崎陽軒が販売する「シウマイ弁当」を父が大好きなため、仕事終わりに駅で買おうとするも人気で完売だった。人でごった返している駅も年の暮なのかと感じた状況を詠んだ。ジュニア名人は「『シウマイ』の表記で崎陽軒と分かるのが良い」と褒める。「非常に軽やかで良い」と評す先生は、気負う所なく日常の中からすくい取るのが上手いとセンスを高評価。上五の表記でどこの弁当かが分かるのが粋であり、中七で駅の賑やかさやせわしなさが表現されたと続ける。小さな問題点は「も」だと指摘すると、すぐさま梅沢名人が「は」と正解をぼやく。散文的な部分を解消し、「売り切れ」でカットが切れることで”AはB”の形が2つできる『対句表現』として説明臭さが消えると解説。季語の送り仮名も消した方が綺麗で、「切れ」「暮れ」と「れ」の韻を表記で見せると粋ではないと理由を語し微調整した。指摘を的中したご機嫌な梅沢名人は、浜田に再度持ち上げてもらうよう提案する羽目に。
●[5] @20/01/30◆お題:
銀座での買い物『道草は砂町銀座おでん食ふ』4級へ
1ランク昇格添削なし
季語は「おでん」。自身が育った東京・江東区にある下町の商店街「砂町銀座」で中高生の頃は道草に焼き鳥やおでんを食べ歩いたという感じを表現した一句。梅沢名人は「素晴らしいが、最後『おでん』は食うもの。懐には入れない。『食ふ』が余分」と批評するも、査定ポイントは「道草」「おでん」の取り合わせの是非。「ウイットに富んでいる」と評す先生は、「道草を食う」は馬が道端の草を食べるため進行が遅くなると語源を解説。上五に「道草」と置くも、「食ふ」のは道草ではなく「おでん」であると表現した点に機知・ウイットがあると展開を褒める。先生は梅沢名人の指摘を否定した上、「ウイットが全然わかっていない」とダメ出しし、「四代目が来てるんだよ」と市川猿之助を指して梅沢名人が反論する。動詞「食ふ」は外してはならぬ工夫だと念押しする先生は、中七の固有名詞を次に褒める。知っている読者は下町の光景が浮かび、知らない読者も「砂町」の字面が興味を掻き立てると解説。背伸びをせずに俳句を書くスタンスを絶対変えてはいけないと本人に忠告し、お見事だと祝福した。
●[6] @20/02/27◆お題:
カップラーメン『春光やケトルの銀の艶めけり』第4回春光戦予選Aブロック・5位(予選敗退)添削後
『春光や朝のケトルの銀の艶』
季語は「春光」。カップラーメンが大好きなため、ウォーターサーバーではなく、お湯はヤカンで沸かして入れる。キッチンの窓からの太陽の光がケトルに降り注ぎ本当に美しかったと語った。先生は、5音の季語に12音のフレーズを合わせる基本の型の学習跡が見えると押さえる。季語「春光」は春の光を意味するものではなく、本来は春の風光・光景を意味すると注意する。下五「艶めけり」の描写の比重が強すぎることで、映像を持たない季語を食ったと指摘する。下五は「艶」の名詞止めでケトルの肌を見せ、時間を入れて木々の揺れや小鳥の声を出す添削を行う。わずかな取りこぼしで予選通過のチャンスを逃すことに。
●[7] @20/07/30◆お題:
アイスクリーム売り場『毒々しと思ふ日あり氷菓子』第4回炎帝戦予選C4位(最下位)添削後
『毒々しと思ふ氷菓子も人も』『毒々しと思ふ氷菓も人も吾も』
季語は「氷菓子」。みんなが大好きなアイスクリームもたまに甘すぎたり色がどぎつかったりする。優しくてみんなから好かれるような人にも毒を感じる時がある想いを詠んだと語った。「怖い」と率直に語る浜田に続き、「五七五でなく、リズムがないのが致命的だ」と厳しい梅沢名人。梅沢の指摘に同感の先生は、内容に対してのリズムが適切かが大切だと押さえる。人物の比喩の意図があるならそれを書くべきだと忠告し、「日あり」を諦めて句の奥行きを出すべきだと解説。最後に「人も」で良いが、他人に対して好感度が下がるのが嫌なら、並列表現で「吾も」を入れて謙虚な空気が自重と共に醸し出すと語った。タイトル戦での決勝進出は今回も叶わなかった。
●[8] @20/08/13◆お題:
本棚『謎解きの頁に蜘蛛は果ててゐる』3級へ
1ランク昇格添削なし
季語は「蜘蛛」。よく本棚の整理をするが、古いミステリー小説を手に取って開くと細い蜘蛛が押し花のようにペッタリとくっついていたため、驚いてそのまま本を閉じてしまった実体験を詠んだと語った。「素晴らしい。中七がたまらない」と初めて本人の句を絶賛する梅沢名人。査定ポイントは助詞「に」を選んだ是非。先生は「とても良かった」と褒め、「謎解きの頁」の表現で推理小説に違いないと分かり、言葉の経済効率が非常に上手いと評す。場所の助詞「に」からクローズアップされる映像になるが、「蜘蛛」の後の助詞「は」の強調によって、「逃げたのか?」などどんな状況かを読み手が興味を持ち始めると展開を解説。下五の淡々とした描写が良いと称賛し、「やはりセンスがある」と実力を認めた。査定では2連続昇格となった。
●[9] @20/10/29◆お題:
ピアノ『ちゑさんの被爆ピアノや秋はきぬ』第4回金秋戦予選A1位(決勝進出)添削なし
季語は「秋来る」。本人出演の映画「おかあさんの被爆ピアノ」から着想。戦争の原爆から奇跡的に焼け残ったピアノ(被爆ピアノ)の存在を知り、原爆に心を馳せた時に、主のいなくなった被爆ピアノにも秋が来るのを75年間繰り返した情景を詠んだと語る一句。梅沢名人は「下五が素晴らしい」と絶賛し、予選2位のジュニア名人も感服する。「心に染み入るような句」と評す先生は、「ちゑさん」を一般的な名前の人物と解し、「ゑ」の表記で時代の手触りが出たと解説。「被爆ピアノ」の語る内容が多く、かつてちゑさんが愛用したピアノが原爆の時を迎えた複雑な事情が読み取れると語る。「や」の強調を上の言葉が受け止めるだけのものになったと切れ字の効果も評価。必要以上を語らず、作者の想いを託した季語も、暦で8月初頭を指す「秋が来る」で、原爆の広島・長崎を想起すると解説し、「見事に素晴らしい作品」と初の決勝進出を果たした祝辞を述べた。
●[10] @20/11/12◆お題:
7時過ぎの時計『秋てふや夢の途中に時計鳴る』第4回金秋戦決勝8位(次回シード権なし)
添削後
『秋てふや夢の途中を鳴る時計』
季語は「秋蝶」。普段、よくわからない実体のないものを追いかける夢をよく見ると語る本人。良いものの気がするが、見てる途中に必ずアラームの音で目が覚めてしまうのでそれを詠んだと語った。梅沢名人は「語順が悪い。下五は『鳴る時計』の方が、非常にリズムが良い。綺麗に書いたなと思うだけの俳句」と厳しいが、「そんなひどい言われようするほどではない」と語る先生は、詩心が十分にあると褒める。最後の着地がオチとなり、夢の途中で目覚まし時計が鳴りましたで終わってしまうのが勿体ないと指摘。オチにせず、夢うつつの中に微かに聞こえる感じにすれば、上五・中七が俄然活きてくると指南。「時計鳴る」を「鳴る時計」とすれば、「鳴る」が動作ではなく時計の方に軸足がいくと解説。さらに助詞の「に」を経過する時間・場所を意味する「を」にすれば、経過していく時間をぼんやりと表現でき、夢うつつの中で微かに聞こえてきたという感じになると解説した。助詞の選択は難しいが、今日は善戦したと鑑賞を述べた。本人は、「先生のYouTubeを観て、助詞の回を何回も観たのにまだ足りなかったですね。もう1回見直します」と先生を立てながら反省した。
●[11] @21/01/14◆お題:
輪ゴム『風花へしゅぱんしゅぱんとゴム鉄ぽう』第4回冬麗戦優勝
添削なし
季語は「風花(かざはな)」。幼少の頃、割り箸にゴムをつけるゴム鉄ぽうでよく遊んだ。家で色んな人に撃ったりすると親に「外に出なさい」と言われ、外でチラチラと降っている雪を標的にパン、パンっと撃っていたのを詠んだと語った。先生は、シンプルでかつ映像が浮かぶ句が読んでいて気持ちが良いと語る。「風花」は冬晴の空に降る雪片で、「へ」の選択をとても良かったと褒める。風花に向かって何かが動いていると分かり、何だろうと思わせると、「しゅぱんしゅぱん」というオノマトペが出てくる。一体何か?とさらに興味を持って読み進めると「ゴム鉄ぽう」が出てくる展開。当たるはずもないのに、しゅぱんしゅぱんとやる軽やかなオノマトペが「風花」と飛んでいく「ゴム鉄ぽう」の感触とを上手に繋いでいると称賛する。「良いものを見つけた。あなたが作者だと分かってビックリ。素晴らしい」と特待生からの優勝に感服する。第1回冬麗戦でのキスマイ千賀以来、3年ぶりに特待生での優勝を決めた。
●[12] @21/02/04◆お題:
加湿器『加湿器の給水せよに起こさるる』3級で
現状維持添削後
『加湿器が給水せよと吾を起こす(擬人化)』『加湿器の「給水せよ」に起こさるる(原句)』『加湿器の給水ランプに起こさるる(映像化)』
季語は「加湿器」。普段の加湿器は喉も潤って役に立つが、いざ水がなくなると点滅で知らせる機能があり、夜中に起こされてイライラしている状況の句と語った。梅沢名人は「天狗になった」と冬麗戦優勝者を牽制し、中七が気になるとして「給水せよと起こされる」にすべきと指摘。査定ポイントは中七「給水せよ」の是非。「中途半端!」と評す先生は、シンプルに言葉を詰め込まない書き方で、状況も良く分かると褒める。しかし、梅沢名人の意見に同調し、中七が引っかかると指摘。「給水せよに」の言い方では、擬人化したいのか、給水ランプがある映像として描きたいのかが分からず、言葉の選び方が中途半端だと解説する。完全に「加湿器」を擬人化するなら「と吾を起こす」で着地し、原句を活かすなら鍵括弧を入れ、映像化するなら「給水ランプに」とするべきと添削を3例示した。「シンプルな書き方は作者の持ち味で、この路線でいきましょう」と本人へ忠告した。
●[13] @21/02/25◆お題:
きのこの山とたけのこの里『遠足のリュックの底にチョコの染み』第5回春光戦予選C3位(予選敗退)添削後
『遠足のリュックの底の染みはチョコ』
季語は「遠足」。小学校の遠足でチョコレートを愛用のリュックに入れて持参したが、帰宅後に放置してしまい、次の遠足時に見るとリュックの底にチョコの染みがあった光景を詠み、中七は「に」「の」で迷ったと語った。梅沢名人は語順の悪さを指摘。先生は、素直に体験を詠んだ姿勢と、「染み」が「チョコ」と分かった瞬間に甘い匂いがする効果を褒めるも、問題点は「に」と語順の2つだと指摘する。助詞を「の」に変え、下五を「染みはチョコ」に変えた。リュックの底の染みは何かと思った瞬間、この前の遠足のチョコだと分かれば、季語が活きてくと解説し、季語を主役にする小さな配慮が大事だと忠告。「これが分かるのに永世名人、今までどれだけ苦労してきたか」と指摘を当てた梅沢名人をねぎらった。本人は、「もう全部腑に落ちました。素晴らしいです」と納得した
●[14] @21/04/15◆お題:
リュック『花疲れリュックの底の底に鍵』2級へ
1ランク昇格添削なし
季語は「花疲れ」は、桜の花見やその人波にくたくたになるまで疲れること。実体験をモチーフとした一句は、帰宅時に鍵を鞄から探す動作を句材とした。人混みから疲れ切って帰り、家に入ってゆっくりしたいが鍵が見つからないため玄関で狼狽える様子を詠んだ。梅沢名人は実体験が出ていると句を褒め、妻もよく探していると家庭の事情を語るが、浜田に適当にあしらわれる。査定ポイントは「~の~の~に」の助詞の効果の是非。「手の感触が伝わる!」と評す先生は、丁寧によく自分の実体験を作れた点を褒める。「花疲れ」が美しい季語で、心身の気分や気配を表す季語だと解説する。後半「の底の」は、底を覗き込むような助詞の使い方で、場所を指す「に」は探る感じとなり、覗き込んで探るイメージが表現できたと助詞の使い方を称賛する。最後の「鍵」により、心身の目に見えない季語をやっと探り当てた物によって表現できたと褒め、これが特待生の技術・実力だと総括した。冬麗戦優勝後、初の昇格を決めた。
●[15] @21/06/17◆お題:
折り畳み傘『ジェラシーを折ってたたんで白日傘』1級へ
1ランク昇格添削なし
季語は「白日傘」。人を羨ましいと思う心情の「ジェラシー」は一番厄介で、自分の中の黒いものを折って畳んで小さくしていく。「白日傘」は貴婦人など純潔なイメージがあるため、そこにしまい込んだという心境を詠んだと語り、梅沢名人は大絶賛。査定ポイントは下五「白」を入れたことの是非。「対比が巧い!」と評す先生は、「ジェラシー」のような重い感情語を一句に詠み込むと、季語を主役にするのは本当に難しいと前置きしつつ、上手く言葉をコントロールしながら映像化した点を褒める。「ジェラシー」のような抽象的概念を、折ったり畳んだりするのも俳句の発想法の一つだとし、「折って」で強い憤りをもって折る激しさ、「たたんで」で静けさを感じさせる展開、「日傘」という映像・季語の着地の語順を解説する。さらに「白」で印象が非常に鮮明になるが、「ジェラシー」の言葉がもつドス黒いイメージと心理的な対比も狙ったと分析。言葉を破綻させずに綺麗に収めた点を認め、「この人の今伸びている力は目覚ましいものがある」と絶賛した。いよいよ名人だとする浜田と梅沢名人の期待に「重い言葉ですね」とプレッシャーを感じる本人だった。
●[16] @21/08/12◆お題:
打ち揚げ花火『花火果て電車空く間のデンキブラン』名人初段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「花火」。隅田川花火大会は凄い人出で、帰りの電車が混雑で空かないため、近くの「神谷バー」(創業明治13年)に行き有名な「デンキブラン」(カクテル)を飲みながら電車を空くまで待った実体験を詠んだと語った。東国原名人は「無難に作ってありますね」とあまり褒めない。査定ポイントは、「果て」~「空く間」の時間経過の表現の是非。「時間感覚が絶妙!」と評す先生は、17音の俳句で時間経過を表現する難しさをまず述べる。花火が終わった後の光景を詠む句は沢山あるが、電車が空いてくる間と展開した場合、もたついてそのまま終わりがちな句が多いが、最後の「デンキブラン」という飲み物の押さえが良かったと高評価。大人の世界を描いているのが分かり、言葉を少しでも動かすとニュアンスが微妙に違ってくるため、最終的にこのまま味わうのが良いと判断したと述べた。5級から現状維持を1度しか挟まず、最少回数の6回で名人という番組記録を打ち立てた。
●[17] @21/08/26◆お題:
宿題『嘘ばかり綴る絵日記カンナ咲く』名人初段で
現状維持添削後
『カンナは緋なり絵日記は噓ばかり』
季語は「カンナ」。子どもの頃の夏休みの宿題で出された絵日記に1つも本当のことを書かずに、休みの最後の方に適当なことばかりを書いて提出して「すみませんでした」と思っていたという句だと語った。絵日記は「綴る」もの、カンナは「咲く」ものだと指摘する梅沢名人は、先生の発言中に座席に肘をぶつけるアクシデントを起こす。査定ポイントは「綴る」「咲く」の2つの動詞の効果の是非。「季語が脇役になっている」と評す先生は、梅沢名人の指摘に賛同し、植物に「咲く」の動詞が必要なケースはまれだと忠告する。カンナの色を示すべきだと提案すると、本人も分かっていたかのような反応。赤色を指す「緋」を入れて、「なり」と強く断定することで、季語に比重を寄せると指南し、後半を「絵日記は嘘ばかり」と添削。「嘘」とカンナの「緋」色を「真っ赤な嘘」のイメージで呼応させる形とした。出演者の反応を見ていた浜田が、添削に納得する名人衆に対し、理解せずにとぼけた様子の安藤美姫を対比の引き合いに出し、笑いを取った。
●[18] @21/09/09◆お題:
スポーツの秋『座り込むアンカーの目に秋夕焼』第5回金秋戦予選A2位(決勝進出)添削後
『座り込むアンカー秋夕焼くずる』『くずおれるアンカー秋夕焼赫(あか)し』
季語は「秋夕焼」。子どもの運動会のリレーで、凄く強いアンカーの子が負けてしまい、頑張りもむなしくずっと座り込んでしまった。夕闇が迫る中、夕焼けを見ながら「あ~何を考えているんだろう?」と思った時の句だと語った。東国原名人は本人の句を「自然体で肩の力が抜けた句が多い」と印象を語るも、アンカーがバトンを貰う前にしゃがみこんでいるのかと思ったと別の読みを語る。先生は、「アンカー」だけで種目が分かり、「座り込む」の動作も自然で、季語「秋夕焼」が最後に広がる展開は、無理のない形で言葉が紡げていると褒める。しかし、不安を抱えたのが「座り込む」だと指摘。この言い方では、負けて座り込んだか、全力を尽くしても立ち上がれないほど勝ったのか、微妙に分かりにくいと述べる。東国原名人の「バトンを受け取って走る前」の読みもあるならば、負けた状況をを示唆する言葉を入れるべきだと忠告し、不要な言葉「の目に」を消して添削を2例示す。秋夕焼の表情を出す場合、「秋夕焼くずる」で負けた感じを演出可能だと述べる。「座り込む」を「くずおれる」に変えた場合、負の印象が強くなり、季語の色を「赫(あか)し」と強調すれば、「アンカー」「秋」「赫し」と「ア」の韻を踏むこともできると解説。「ここまでやってたら悠々1位だった」と感触を述べた。
●[19] @21/09/30◆お題:
バッテリー切れ間近(携帯電話の電池残量)『秋蝉や仰向いてなほぎぎと鳴く』第5回金秋戦決勝10位(最下位・次回シード権なし)添削後
『仰向いてぎぎと鳴きけり秋の蝉』
季語は「秋蝉」。草むらに瀕死の蝉がひっくり返りながら「ぎぎ、ぎぎ…」と弱々しく震えて鳴いているという描写句。最下位のため不安げに「語順かな…」と原因を予想した。先生は、これ自体どこが悪いわけでもないと述べる。気になる点は類想で、「蝉」の類が仰向け状態で鳴いているという句が俳句の世界では相当数あるという問題点を挙げる。少しだけブラッシュアップしたいとして、蝉を見せずに「仰向いて」から始める語順を提案する。人間が仰向いて「ぎぎ」とは何か?と一瞬思わせ、「鳴きけり」の切れ字を用いた後に、最後に「秋の蝉」と名詞で落ち着かせるように添削した。最下位の理由として、俳句の世界でよく詠まれている素材の句を上位にすると、「私もあんな句作った!」と視聴者がギャーギャー言い出すからだとユーモラスに述べ、順位を上げるのは中々難しい程度の問題だと解説した。昨年冬の王者だったが、秋のタイトル戦では一矢を報いることが出来なかった。
●[20] @22/01/06◆お題:
カーテンを開けた瞬間『昨夜(よべ)よりも痩せたる母や日向ぼこ』名人初段で
現状維持添削後
『昨夜より痩せしか日向ぼこの母』
季語は「日向ぼこ」。晩年に弱っていった母へと着想。日向ぼっこを二人で穏やかにしていたが、たった数時間前の昨夜よりもやつれたような気がした思いを詠んだと語った。梅沢名人は、「たる」が実際に痩せてしまった描写で、弱ったような気がする心情とは異なる点をくどくど指摘する。査定ポイントは「よりも」「たる」「や」の叙述の是非。「句と思いにズレがあるのでは?」と評す先生は梅沢名人の指摘が正しいと前置きする。「昨夜」を"よべ"と読ますより、単純に"さくや"か"ゆうべ"として「も」を消した方が良いと指摘する。一番の問題となる「たる」は完了の助動詞で、痩せている状況が完了している意味になるが、「痩せたような気がした」意図のため、"瘦せたのだろうか?"を意味する「痩せしか」と添削。「日向ぼこの母」で「母」を最後とすることで、再度母の背中をしみじみと眺めるような空気が出ると解説した。本人は「文法、凄い難しいですね。勉強します」と意気込むが、事前にフルーツポンチ村上名人のYouTube動画で勉強していたことが気に食わない梅沢名人は「小さいところで俳句を詠むから…」とガヤを飛ばすが、浜田にさっさと進行された。
●[21] @22/01/13◆お題:
人生ゲーム『嚔してスペードの位置忘れたり』第5回冬麗戦3位(14名中)添削なし
季語は「嚔」。人生ゲームからトランプに発想を飛ばした一句。神経衰弱をやっている場面で、思わずクシャミをしたら、絵柄の記憶がどこかにいってしまう体験から詠んだと語った。村上名人は「何気ない日常の1シーンを詩にするのは村上一門」と手柄を立てるが、「強いて言うなら因果関係が気になる」とも指摘する。先生は「嚔」という季語を上手に使い、トランプの神経衰弱だと一瞬で分からせると言葉の力がある句と評す。「スペードの位置」を忘れた展開が、最初の「嚔」に戻り、神経衰弱で必ずめくる強い自信に対して出た嚔のため、小さな残念の気持ちも全部入り、集中力が切れるキッカケとしての嚔という季語の存在も見えてくると称賛する。村上名人が指摘した「して」は評価が分かれるところだと述べる先生。「スペードの位置忘れたり大嚔」のように最後に季語をつける手もあるが、この句の内容なら先に季語があり、"あら、忘れちゃった"の方が、リアリティが少し高いと語る。因果関係を語っているようでいて、因果関係が邪魔になっておらず、さじ加減もお上手だと評した。冬麗戦連覇とはならなかったが3位と好位置につけた。
●[22] @22/03/17◆お題:
階段orエスカレーター『春愁をエスカレーター地下へ地下へ』第6回春光戦予選D1位(決勝進出)添削なし
季語は「春愁」。春の何とも言えないイライラやふさぎ込む気持ちはちょっとしたことで酷くなると述べる本人。駅のエスカレーターは凄く地下へ潜っていくが、エスカレーターに長く乗っている間に気分がドンドン落ち込んできて、「あ~なんか厄介だな」と感じるのを詠んだと語った。村上名人は「余韻や省略の使い方が上手い」と褒める。先生は、春の憂いの塊のような私をエスカレーターが運ぶという感触があり、悩みやすい助詞「を」を選択した点も実力をつけてきた証拠だと絶賛する。さらに、下五の「地下へ地下へ」は考えないと「沈めていく」「降りていく」などの表現ををするが、映像として描けており、かつ「春愁」の心が一緒になおさら沈んでいくようなイメージを作ったと解説。下五を1音余らせたことで、「地下へ地下へ」のリフレインもゆっくりと重い心に変わっていく印象を作ったと続けた。金秋戦に続く決勝進出を決めた。
●[23] @22/03/31◆お題:
ハプニング『馬の子に弄られてゐるアナウンサー』第6回春光戦決勝2位(シード権なし)
添削後
『馬の子になつかれ過ぎてアナウンサー』
季語は「馬の子」。YouTube動画で昔のハプニング映像を見たという本人。厩舎を取材する中継現場で、馬の子が新人のアナウンサーに尾をかみついたり、鼻面をつけたりして、もてあそんでいるように見えた光景をそのまま書いたと語った。アナウンサーの馬場典子は自分が詠みたかったと名前にあやかって述べる。場面を立ち上げる語順の良さを褒める先生は、「弄られる」書き方で描写の軸足が「アナウンサー」に行くことで、「馬の子」が主役になってない点を指摘。馬の子がアナウンサーを好きでたまらない意図ならば、「なつかれ」の後に「過ぎて」とダメ押しすることで、馬の子の方に軸足が来ると解説した。2位ながら、初のシード権獲得を逃し、悔しそうな表情を見せた。
●[24] @22/07/07◆お題:
七夕『屑かごにある七夕竹の死骸』名人初段で
現状維持添削後
『屑かごにある七夕かざり乾きをり』
季語は「七夕竹」。娘が学校で飾っていた七夕飾りを家に持って帰るが、屑かごに捨ててしまったのを見た本人。キラキラな願い事の短冊を付けているが、笹がチリチリに乾いて生命力が全くない状態で、「なんだか死んじゃってるみたい」と思ったことを詠んだと語った。季語を殺す表現が良いと褒めるジュニア名人。査定ポイントは「屑かごにある」の是非。「小さいの?大きいの?」と評す先生は、飾られているのではなく、捨てられている七夕竹を描く着眼が良く、良い意味で裏切っていると褒める。問題は「屑かごにある」と「死骸」の比喩のバランスにあり、屑かごに捨ててある"小さい"七夕飾りを思うと、「死骸」という比喩がやたら大袈裟で、大小のどちらかを決めるべきという技術的な点にあると指摘。後半「竹」も大きいイメージを持ってしまうため、子どもが持って帰った小さな七夕竹の表現を平仮名表記で「かざり」とし、本人の述べた「乾き」を用いて「乾きをり」と描写をするようなニュアンスに添削。「大きいか」「小さいか」は大きな違いのため、気を付けられると良いと忠告した。本人は、「『死骸』は凄く勇気がいったが、今回どうしてもチャレンジしたかった」と反省の弁を述べた。
●[25] @22/07/21◆お題:
メール『メールぴこんぴこんシャワー中だってば』第6回炎帝戦3位(58名中)添削なし
季語は「シャワー」。メールやLINE(ライン)で凄く便利になった一方、束縛されて自由を奪われる部分が凄くあると述べる本人。シャワー中は出れないのに、そういう時に限ってメールの通知音がぴこんぴこんと何回も鳴って苛立つ心境を句にしたと語った。村上名人は「遊び心があり、俳句とじゃれている」と褒めるが、「入れ食い状態」と独自の意見を述べるミッツ名人は、恋愛のメールがひっきりなしに来ると解釈するが、仕事のメールだと言う本人と議論を交わす。先生は句の意外性を褒めるが、何より「ぴこんぴこん」が上手いと評す。オノマトペにリアリティ・実感があり、読者の耳に聞こえてくるのが良いと褒める。さらに、「だってば」の甘えた大人可愛い感じが良く、これを書ける人が羨ましいという見解を述べる。そして、作者がイメージ通りで安心したと最後に語る先生は、「これ、おっちゃんの句だったら凄く嫌だなと」と述べ、「書けるわけないでしょ、俺に」と梅沢名人が吠えた。タイトル戦は3大会連続で3位以内と好調を維持した。
●[26] @22/09/08◆お題:
行楽の秋[鎌倉大仏]『秋晴や「アリクイさんぽ三時より」』第6回 金秋戦予選B1位(決勝進出)添削なし
季語は「秋晴」。家族は皆アリクイが大好きだと明かす本人。動物園に行くと、アリクイさんのお部屋に一目散に行くが、子アリクイが外を散歩している所に出会った時の様子を詠んだと語った。梅沢・村上名人両者とも称賛する。先生は、単純なつくりの句で、季語の詠嘆の後に張り紙の文句をそのまま書いただけだが、光景がありありと立ち上がる点に着目する。「秋晴」の気持ち良さの後、「アリクイ」で動物園と分かり、散歩が三時から始まる。そうなると、「3時まで待つ」、「他の動物をその間に見る」、「休憩してアイスクリームでも食べる」など、人物の表情が色々見えると味わいを述べる。親子・恋人・友達・遠足の子など、これだけの言葉で立ち上がり、季語を主役に立てた肩の力の抜けた俳句だと評した。見事に4度目の予選通過を決めた。
●[27] @22/09/22◆お題:
道頓堀(大阪府)『ツッコミは愛なんだって啄木鳥』ふるさと戦③(大阪)4位★添削後
『ツッコミは愛か真昼のおけら鳴く』
季語は「啄木鳥(けらつつき)」。出会った頃の大阪出身の夫に「え?オチは?」とよくダメ出しをされていたが、友人から「大阪人は愛があるからそういう」と言われたことを詠み、啄木鳥がコツコツとつついている姿がツッコんでいるようにも見えて賑やかな道頓堀に似合うと語った。梅沢名人は季語が違う方が良いと指摘。先生は、「ツッコむ」と「啄木鳥」を重ねたというオチを狙ったことが、大阪人のオチに負けた東京の人の句に思ったとユーモラスに述べる。下手に作者の持ち味を壊してまでオチを求めることはないとも指南し、写真との取り合わせから適切な季語にすることを提案。「おけら」を問うと、本人も「蚯蚓鳴く」「おけら鳴く」も案として考えていたと回答。先生は「ツッコミは愛か」で一度切り、「真昼の」で写真の時間軸に寄せた後、最後に「おけら鳴く」に展開した。写真と取り合わせた時に、"「おけら」は普通は夜鳴くものだが、この大阪なら「おけら」も昼鳴くのではないか"と大阪への微量な皮肉を込めることで、東京人のプライドが保てたとアドバイス。本人は「"真昼"は全く浮かばなかったので、ちょっと勉強します」と反省した。
●[28] @22/10/13◆お題:
大谷翔平『四番打者四球を選ぶ子規忌かな』第6回金秋戦決勝8位(シード権なし)
添削後
『バッターは四番子規忌の四球選(よ)る』
季語「子規忌」は明治を代表する俳人・正岡子規の命日。正岡子規が「打者」「四球」「飛球」という単語を作ったのを知り、絶対に「子規忌」で句を作りたいと思ってひねり出したと語った。藤本名人は以前の句から「だってば」を入れるべきだとぼけて、「かな」が効いていないと評すは梅沢名人。先生は「こういうネタが出てくるのは私としては嬉しい」と述べ、大谷選手から元々のルーツを辿る発想はとても良いと褒める。また、「四番」「四球」「子規」と韻律や目で見た時の面白さも丁寧に工夫した点も称賛する。ただ、全体の臨場感が薄いのが勿体ないと指摘。「かな」の詠嘆を消して臨場感を載せる方法を指南する。「打者」でも良いが、「バッター」を頭にして「四番」で一度カットを切り、「子規忌の四球選(よ)る」と展開。今四球を選び終わったという場面になると解説。ここで「詠嘆」を「えいちゃん」と間違えて述べた先生に、「調子悪ない?」と浜田がお灸をすえる。同様にコメントの調子が悪い御大を引き合いに出し「いやもう、私。おっちゃんの気持ちが凄くよく分かります。今日はおっちゃんと慰めの酒を飲みたいぐらい凄く良く分かります」と先生が弁解。本人は「言葉遊びに気持ちが行き過ぎたため、臨場感を大切にしたい」と反省した。
●[29] @22/11/17◆お題:
神宮外苑の銀杏『足踏みを五回枯葉の音愉快』名人2段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「枯葉」。枯葉は履いた靴や踏む速度、走る動作などで音が凄く面白いと感じ、足踏みを五回する楽しい気持ちを「五回」と「愉快」で韻を踏んだという一句。梅沢・ジュニアの両名人がこぞって褒める。査定ポイントは前半を「足踏みを五回」とした効果の是非。「見事な伏線!」と評す先生は、具体的な表現をした前半を称賛。足踏みを「する」ではなく「五回」としたことで、「五回」の動作が読み手の脳内に再生され、この数詞が季語「枯葉」を音としてしっかり聞かせる伏線になったと解説。そして、基本の型で才能アリを3連続獲得した特待生候補のキスマイ二階堂に、この句が「足踏みを五回/枯葉の音愉快」と全体で17音となる"句またがり"の型だと丁寧に解説する。先生が「この型を1つ覚えるだけで、特待生になっても戦えるかもしれない」と忠告すると、二階堂は「じゃあ、僕次それやります」とあっさり宣言。本人は15か月ぶりの昇格査定を勝ち取った。
●[30] @22/12/08◆お題:
たい焼き『長ゼリフ終へ差し入れの鯛焼』名人2段で
現状維持添削後
『長ゼリフ終へたり差し入れは鯛焼』
季語は「鯛焼」で16音の字足らず。俳優業としては日常的な光景だという本人。緊張したシーンの撮影が終わり、楽屋で「やった~!差し入れの鯛焼きを食べるぞ」という光景だと語った。査定ポイントは7・5・4の韻律の是非となるが、自解を受けて二択のうちAの結果を渡すように通告。先生は、「長ゼリフ」の言葉で役者・俳優だと分かり、「差し入れ」で楽屋や差し入れる人の思いが伝わる点を褒める。悩ましいのは1音足りない韻律で、作者の意図が読み取りにくいと述べる。どちらかというと短調の調べのため、「なかなか上手くいかなかったが、差し入れの鯛焼を慰めの気持ちで」と説明していれば、七五四の韻律でも1ランク昇格だったことを告げる。しかし、「やれやれ終わった。ご褒美の鯛焼きだ」というイメージなら、調べを明るくした方が良いと忠告し、添削を開始。「長ゼリフ終へたり」で一回カットを切り、嬉しい気持ちを強調するため「差し入れ"は"鯛焼」と助詞を整える添削に本人も納得。「凄く嬉しそうになりました。また勉強してきます」と反省する本人だった。
●[31] @23/01/12◆お題:
ラッキー『マフラーにきら失くしたはずのピアス』第6回冬麗戦4位(15名中)添削後
『マフラーのフリンジあらここにピアス』
季語は「マフラー」。ピアスをよく失くすが、ふとマフラーを見て光っていた物が失くしたと思って諦めていたピアスだったという幸運を詠んだ一句。句の感想を聞かれた梅沢名人は、自分の順位と視聴率のことだけ気に掛けて述べる。先生は「現実的な意味で一番ラッキー度が高い経験」だと前置きするが、俳句の世界で「失くしたはずのイヤリング」などのフレーズはあり、既視感がある点を指摘する。過去に「メールぴこんぴこん」と詠んでいる作者の句柄に合わせるため、マフラーの端の「フリンジ」を用いて「あらここに」を用いて添削。本人は嬉しそうに「次から『あらここに』使っちゃいそうで怖いです」と語った。
●[32] @23/01/26◆お題:
春の京都 三条大橋(京都府)『ささくれた橋へ零るるさくらかな』ふるさと戦⑥(京都)2位★添削後
『ささくれし橋へ零るるさくらかな』
季語は「桜」。歴史のある橋のため、よく見るとささくれている部分があり、たもとの方でたわたわに咲く桜の花びらが散っているという色の対比を考えて作ったと語った。志らく名人は「ささくれた」が京都にピッタリだと褒める。先生は、俳句としては面白いと評す。文末「かな」が文語表現のため、統一するなら「ささくれし」だと最初に添削を行う。写真なら京都の大きな橋だと想像できるが、俳句だけだと古い丸木のささくれた一本橋とする読みも出てしまう点を指摘。また、「零るる」がはらはら・ちらちらのニュアンスのため、写真俳句として桜の咲く位置と橋の位置との距離感が気になる点も併せて指摘する。写真の近景に桜が一枝写っていれば、写真俳句として俄然評価が高くなったと解説した。本人は「ついても離れてもいけないし、さじ加減ちょっと勉強します」と前向きに述べた。
●[33] @23/02/16◆お題:
つまずく『覚えなき青痣きっと春のせい』名人3段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「春」。全く覚えがないのに青痣が出来た経験があるという本人。春が大好きのため、行動的になってウキウキしすぎて作った気持ちと、「春」を自分の好きな人や夢中になっている仕事など、心が騒ぐことに夢中になったことが原因だと空想し、楽しく過ごすイメージの一句だと語った。横尾名人は「森口さんらしい可愛い句」だと述べ、浜田も共感する。査定ポイントは「春のせい」という着地の是非。「強引なのがいい!」と評す先生は、あるあるの経験を後半のフレーズでオリジナリティを高めた点を称賛。強引に決めつけることで詩を生み出すメカニズムの俳句であり、「春」の季節のせいだと全部押し付けることで、一句の奥行きが広がると解説する。陽気な「春」でも春愁を感じる季節でもあり、「青」「春」が一句の中にあることで読者の脳内に青春・甘さ・挫折を想像する効果もあると述べ、色んな所を狙ってないフリをして達成していると評した。作者なりの句柄が出来てきており、ますます面白くなりそうだとエールを送った。
●[34] @23/03/23◆お題:
レトルト『白粥は三日目春の風邪飽きた』名人4段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「春の風邪」。風邪をひいて体調が悪く、レトルトの白粥ばかり食べていて、気持ち良い春の屋外に出かけたいが、だるい体も白粥も全部飽きてしまった感じで、コロナ禍の現状にも掛けてみたと語った。査定ポイントは、この語順を選んだ効果の是非。「映像から心情へ」と評す先生は、白粥のアップからいく語順の好判断を褒める。白粥は今日で三日目だと強調し、「三日目」という時間経過も、「春の風邪」の季語が出てきた瞬間に腑に落ちると解説する。「飽きた」は、色んな物に飽きていることが言葉の奥に見えてきて、粥の味・同じ部屋・風邪の状態という全てに飽きたことが分かり、口語の効果をよく分かって使っている点を称賛。前回に続く昇格となった。
●[35] @23/04/20◆お題:
水筒『水筒の底にゐる春愁の澱』名人5段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「春愁(しゅんしゅう)」。「澱」(おり)とは液体の中に沈んだ"かす"のこと。春の何とも言えない鬱陶しい気持ちは、わかりやすくないという本人。春愁はいつ来るか分からず、どこに潜んでいるかわからないが、水筒の底に潜んでいる「澱」の中にもあることを感じると語った。梅沢名人は「森口節」と評して考えさせられる句だと褒める。先生は、水筒の底を覗く場面は残量確認や洗浄時だが、そういう瞬間を捉えて一句ができるのが上手いと評す。悩ましいのは「にゐる」の部分だが、「ゐる」により「春愁」というものが意思を持って底にいるかのような不穏なニュアンスを表現できていると称賛した。3回連続昇格で波に乗ってきた。
●[36] @23/05/11◆お題:
浜田雅功『ほんたうは優しいくせに青山椒』浜田杯6位(20名中)添削なし
季語は「青山椒」。浜田は実は優しい人で、成績が悪かった時も「惜しかったな」とか陰でフォローして頂くことがあり、本当は優しいと思う気持ちを素直に表現。青山椒はピリ辛で清涼感があるが、他の食材と合わせると寄り添ってまろやかにしたり食材を引き立たせるため、浜田に似合っていると思って取り合わせたと語った。藤本名人は「本当は優しい人」に疑問があり、後輩への浜田の所作を述べて笑いを取る。先生は、「ほんたうは優しいくせに」という呟きは、皆さんが浜田に対して多かれ少なかれ持ち合わせる気持ちだと前置き。台詞自体ありきたりなフレーズだが、「青山椒」を取り合わせたことが作者の一番の工夫だと述べる。前半で挨拶を送る相手へのメッセージを書き、季語を取り合わせる時は、作者のイメージをそのまま俳句で表現するため、「青山椒」の選択がとても良かったと評す。ストレートな取り合わせがご挨拶の気持ちとして真っすぐ差し出され、ご挨拶句の1つの見本として成立していると称賛した。
●[37] @23/05/25◆お題:
鯖の弁当『肴手土産に来る父の日の父』名人5段で
現状維持添削後
『父の日の父来肴を手土産に』
季語は「父の日」。「プレバト!!」ファンの父親は凄い寂しがり屋で、酒の肴を自分で「お土産だよ」って持ってきてしまう場面を詠んだと語った。梅沢名人は「父の日の父」が最初に来た方が良いと指摘し、原句が良いと褒める村上名人と意見が食い違う。査定ポイントは「肴」「手土産」「父の日」「父」の語順の是非。先生は「ほのぼのとした光景」だと前置きするが、梅沢名人に軍配を上げ、語順の悪さを指摘。「父の日の父」から始め、「来(く)」として「肴を手土産に」と続けた。手土産に持ってくる父の手元や父の表情が余韻として入れば得だったと解説。本人は棒読みで「非常に勉強になりました~」と述べるが浜田から「キレてんの、自分ちょっと」と注意された。
●[38] @23/06/29◆お題:
木漏れ日『木洩れ日に晒され空蝉のしずか』名人6段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「空蝉」。殻になった空蝉が木漏れ日に晒されることで一瞬生きているように感じるも、傍に寄ってみても命はなく、かえって空洞さが際立ったように感じた経験を詠んだと語るが、浜田に全く理解されない。査定ポイントは動詞「晒され」を選んだ是非。「良い意味での違和感!」と評す先生は、「晒され」の言葉の選択を称賛。「晒す」には「風雨に晒される」「恥を晒す」など負の印象の意味が含まれるが、かえって良い意味での違和感が生じて詩的リアリティーになったと解説する。木漏れ日はキラキラで、基本的には静かな光だが、空蝉の描写である「しずか」の後の余韻の部分が改めて「木洩れ日」を光を味わい直させてくれる効果があり、大したものだと絶賛した。
●[39] @23/07/20◆お題:
夕立『口々に夕立のこと路線バス』名人6段で
現状維持添削後
『口々に乗り来夕立の路線バス』
季語は「夕立」。路線バスに乗ってきた人たちが、みな夕立に降られたことを口々に喋り、ちょっと興奮したり濡れたりしている情景と、雨が止んだ後の外の雰囲気を考えて詠んだと語った。ジュニア名人は「バス車内かバス停で待つ光景か迷う」と指摘。査定ポイントは中七「夕立のこと」の効果の是非。先生はジュニア名人の指摘に賛同し、屋内・屋外を明確にした方が「夕立」の見え方がハッキリすると忠告。「口々に夕立」で、夕立のことを喋る人物の光景は伝わるとし、「のこと」を削除。さらに、季語を"ゆだち"と3音に読める特性も活かす。「口々に」の後に「乗り来(く)」で乗車する様子を示すように添削。口々に乗ってくる客の様子や、喋っている内容も全て伝わると解説した。本人は「"乗り来"で凄い分かりやすくなりました」と感謝の辞を述べた。
●[40] @23/08/03◆お題:
行きつけのお店『命日を集う紫陽花のレストラン』第7回炎帝戦11位添削されず
季語は「紫陽花」。行きつけの店である東京・飯田橋「CANAL CAFE」に、毎年友人の命日に集まる様子を詠んだ一句。先生は、「命日」とあるため「紫陽花」は作者の中で動かしがたい季語だと述べる。惜しかったのは「レストラン」という必要性の点で、「店」で上手く音数調整すると、馴染み感も季語を主役にすることも出来ていたと解説。惜しくもランク外となった。
●[41] @23/08/31◆お題:
夏休みの宿題②『箱庭の四人家族の無表情』名人7段へ
1ランク昇格添削なし
季語「箱庭」は箱の中に人形や木などを配置して作られた庭園。夏休みの宿題で箱庭を作った経験があり、家族を模した四つの人形を置いた途端、無表情な四人家族があまりにもつまらなそうで、箱庭も褪せてしまったような印象を詠んだと語った。査定ポイントは下五「無表情」の着地の是非。先生は、季語「箱庭」が夏の季語だと前置き。「家族」で紙粘土のような材質を想像させ、人形の小ささから顔の細部表現の難しさに共感できると述べる。「いい感じに出来たぞ」と思っても、四人家族の顔が何とも無表情でつまらなさそうな感じで、日常生活の中の人間関係を象徴させる点を意識させ、「無表情」で奥行き・心理の陰影のようなものを示唆していると解説。「一筋縄ではいかない箱庭の一句」だと評した。
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