20190808 プレバト!!俳句紹介【お盆のSA】
- 2019/08/08
- 20:20
2019年8月8日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は講評の50字要約です。
挑戦者→丘みどり[4],和田アキ子[5],厚切りジェイソン[2],星野真里[4],美保純[2],東国原英夫[50],河合郁人[12] ※数字は挑戦回数
●お題:お盆のサービスエリア(海老名SAの写真)
※番号クリックでリンク内移動します。
→編集後記
◆発表待ちシートで
浜田 まずは和田アキ子さんでございます。
アッコ よろしくお願いします。
玉巻アナ 和田アキ子さんは過去4回挑戦されていますが、1回目が才能ナシ、その後3回連続で凡人という結果でいらっしゃいます。俳句には相当拒否反応があったらしく、4年ぶりの御出演ということで。
一同 (笑)
アッコ 何ですか?この後ろの2人?
→東国原名人と特待生の河合を指さすアッコ
浜田 いや、これ…上の2人は偉なってるんです。
河合 そうです。
アッコ 河合なに?
浜田 特待生です。
河合 僕、特待生なったばっかなんですよ。
アッコ えぇ?俳句ででしょ?
浜田 そうですよ。何で偉そうなの?そんな。
***
浜田 星野真里さんでございます。
星野 お願いします。
浜田 今日もやっぱりそういう感じでくるんですか?
星野 プレバトは和装で、とことん形から入って名人を目指そうと思います。
玉巻アナ ちなみに星野真里さんは、前回は特待生昇格の期待がかかったのにまさかの6位に沈み、代わりにA.B.C-Zの河合さんが特待生に昇格されました。
浜田 そういうことでございます。
河合 やっぱ、勉強の仕方が違ったんでしょうね。
一同 (笑)
浜田 今回はもう?
星野 はい、初心に返って作ってきました。
***
浜田 そして、丘みどりさんでございます。
丘 よろしくお願いします。
玉巻アナ (2017・2018年と)2年連続で紅白歌合戦に出場した人気演歌歌手の丘みどりさんですが、才能ナシが2回、凡人が1回…。
浜田 何で来た?
丘 あははっ。ちょっと、ちょっと…。
浜田 散々やで。
丘 ラストチャレンジの気持ちで、今日は…来ました。
浜田 はははっ。
***
厚切り こんなに、凡人と並ばせていただくとね、(才能アリに)いけそうな気がしますね。
浜田 まあまあ、いけるんちゃうか、みたいな。わかりました。
▼3位は厚切りジェイソン
厚切り Why?
***
▼4位は星野真里
星野 あ~あ。悔しい!
アッコ ヤバい、最下位だ。
***
浜田 (カンペを確認し)あ?1位経験者?
玉巻アナ そうですね、お2人とも元々は1位を経験されていると。
浜田 じゃあ、もう残ってるのガラクタばっかり。
美保 やめて。
アッコ 分かんない、分かんない。
浜田 分かんない?
玉巻アナ 美保純さんは夏井先生とNHKでご一緒(共演)されているそうですね?
美保 俳句番組(『俳句王国がゆく』)で1泊2日一緒にいて、ずっと作ってて、先生から「センスあるね!」って言われたんですよ。
浜田 マジ?
美保 もしかして、ちょっと行けるかもって…。
アッコ 忖度とかないでしょうね!
→浜田がどつく
▼2位は和田アキ子
丘 すごい!
→東国原名人もビックリして立ち上がる
アッコ ウホッ!ウホッ!ウホッ!
浜田 ゴリラか!
一同 (笑)
アッコ ちょっと…泣きそう。マジ?ずっと…ずっと凡人やったから。えぇ~!嬉しい!ウアァァ!
→スキップのポーズで上機嫌に移動するアッコ
アッコ (才能アリ)初めて。
浜田 はい。
アッコ いやいや、ちょっと。はぁ~。
***
▼1位は丘みどり、最下位は美保純
丘 ああ~!ああ~!
美保 マジで~!ええ~!私3年ぶりなのに!
※美保は「夏井先生の愛弟子」と紹介される
美保 うわ~、酷いこれ。
丘 (涙を流し)嬉しい!ああ~!嬉しい!
浜田 うるさいな。はは。
***
◎それでは順位別に見ていきます
◆1位 才能アリ72点 丘みどり
『夏の雲 サイドミラーに ひしめきぬ』
◎素直に的確な表現でシンプルに描写。「に」で焦点が絞られ動詞も上手い。季語に勢いがある。よく勉強した。
【本人談】
お盆のサービスエリアの混雑時、「飲み物でも買おうかと」とふと車外に出ようかと思うと、サイドミラーに映った沢山の雲を見て「夏だな」と感じたという句。
東国原名人
よく見てますね。「映る」っていうのは作るんですよ。千原君が夏のスペシャルで、ボンネットに花火が映るっていう…。
浜田 はいはい。ありました。
→炎帝戦で詠んだ「渋滞や花火の映るボンネット」で千原ジュニアは予選2位となった。
東国原名人 これは、「サイドミラー」という小さい所に雲が「ひしめいている」という擬人化。なかなか出てこない。ここは相当ね…勉強されたか、誰かに考えてもらったか。
浜田 コラコラコラ。
本人 勉強したんです!
東国原名人 いきなり才能ナシからこう…。
本人 勉強したんです!
夏井先生
目に映ったものを非常に素直に的確な言葉を選んで表現・描写できている。これは褒めないといけない。
「夏の雲」だけで視線は見上げている。4位の句のように「見上げ」と書く必要がない。
「サイドミラーに」の「に」は小さなものに焦点を絞っていく効果をもっている。3位の句のように、「きりぎりす」がとまっているだけの「に」ではない。
「ひしめく」という動詞を選んだのが全て。中七で、鏡の中にさらに焦点が絞られ、そこにひしめいている。夏の雲の勢いもわかる。
シンプルだけどよく作れている。作者を見て、あんぐり!
よく勉強した。偉い!
浜田 あんな感じやったのにねぇ。
夏井先生 はい。この子だけは上手にならんと思うてましたよ。ほんとに、はい。直しはいらない。
本人 (嬉しそうに)ありがとうございます。
添削なし
◆2位 才能アリ70点 和田アキ子
『裏道も 果てなき尾灯 夏の月』
◎助詞「も」は上手く機能した。動詞の位置を変えて説明臭さをなくし映像に動きを。作者分かってビックリ。
【本人談】
混雑が嫌い。高速道路がいつまでも渋滞していてトイレも大変。裏道回っても結果みんな思うことは一緒で、ブレーキランプがついてそのうち夜になって見上げている。
東国原名人
俳句見る前は、圧力がかかって70点なのかと思った。この句を見たら、正当に評価されてると。「も」は非常に気をつけなきゃいけない助詞なんだけど、「裏道も」ということは、”表も”(渋滞が)が想像できるので。
河合 僕も「も」が凄い気になったんですけど、これで合ってるかな?って僕はちょっと思います。
浜田 君はそう思う?わかりました。
夏井先生
この句で考えないといけないポイントはまさに「も」。
特待生は「も」が大丈夫かどうか、わかるようになる。素晴らしい。
ただし、正解は名人の言う通り「も」は良い。
あなた(河合)の考えはまだまだ浅いということ。
「裏道も」なので、表の大きな道も当然渋滞していると作者は言いたいと。
しかしながら、読んでいくと「も」が気になると特待生以上の人は気付く。
「も」をあまり気にならないようにする方法もある。
中七をひっくり返し、「尾灯果てなし」と言い切る。
“裏道も果てがないですね”と文脈が下五に流れていくため、説明臭さを「果てなし」が受け止める。
(渋滞で)尾灯がずっと果てなく続いている。光景が広がってくる。
「夏の月」が赤く熱く、尾灯の様に浮かんでいると。
作者分かってもうビックリ!ビックリ!
本人 もう私、今日はホントに思い切り(酒を)飲みたいと思います。
[ここがポイント]
説明的な表現を避ける
※「果てなき尾灯」は果てしなく尾灯が続く状況を説明する、広い光景を表しますが、「尾灯果てなし」にすると、尾灯のアップから、それが果てしなく続く光景へ広がるため、映像に動きが出ます。
添削後
『裏道も 尾灯果てなし 夏の月』
◆3位 凡人65点 厚切りジェイソン
『旅の友 サイドミラーに きりぎりす』
◎季語を見つける発想はさすが。助詞「に」と上五の関係が悩ましい。どちらを大事にするか細かい判断が必要。
【本人談】
サービスエリアで飲み物でも飲み、車に戻った時に車体に何かが乗っている。きりぎりすとわかる。そのきりぎりすと一緒に次の季節まで旅が出来るのではないかと思った。
東国原名人
「サイドミラー”に”」という助詞の使い方がどうかということと、サイドミラーに「映っている」のか、「乗っかって」いるのか? もし走っているのなら、この「きりぎりす」はしがみついている感じですよね。パタパタしている感じ。
夏井先生
さすが良い分析。
兼題写真から「きりぎりす」という季語を脳の中で見つけてきたのは褒めるべき点。
悩ましいのは名人の指摘した助詞「に」と上五との関係。
“旅の友としますよ、サイドミラーにとまっているきりぎりすを”と言いたいなら、「に」という場所を示す助詞ではなく、「の」とすべき。
逆に「に」を大事にしたと。サイドミラーに帰ってみたら、”サイドミラーにきりぎりすがとまっていた”と。”コイツを友として旅をしようぜ”というなら、上五を変える。
「旅の」と言わなくても読み手は想像できるため、「友とせん」とすれば”友にしましょう”という意味になる。
「旅の友」「に」のどちらを大事にするか?
本人 まあ、「サイドミラー”の”きりぎりす」。
夏井先生
上五を生かして、「の」に変える。
細かい所を判断出来れば才能アリが定着してくるということ。
本人 そうですね、「の」にすれば良かったね。簡単に言うと。
浜田 そうね、はははっ。
添削後
『旅の友 サイドミラーの きりぎりす』
『友とせん サイドミラーに きりぎりす』
◆4位 凡人50点 星野真里
『見上ぐれば 天を頬張る 入道雲』
◎上五が大袈裟で「天」も誤解を生むのが勿体ない。季語で目線は上に行く。色の対比と雲の描写を描くべき。
【本人談】
シンプルに「入道雲」を詠おうと思い、空を食べてドンドン膨らんでいくイメージをこんな風に、入道雲に焦点を絞って詠んだ。
河合 「入道雲」と書いてあるんで「見上げる」がいらない気がしますね。
浜田 なるほど。
→本人はうんうんと頷きつつも、鋭い眼光で河合の方をにらむ。
浜田 めっちゃなんか凄い顔して見てたよ。はははは。
本人 凄い考えたんですよ。要るのかな、要らないのかなとは…。
河合 全然、悪くはないと思うんですよ。
一同 (笑)
本人 優しくなった。
夏井先生 言うじゃないですか!
河合 注意されたことあるんですよ、似たようなことを。
夏井先生
偉い、そしてその通り。
「見上ぐれば」と大袈裟に言うほどではない。ずっと上を見ている句。
勿体ないのは「天」で「空」とする。しかも何色?
本人 青?
夏井先生
その通り。「青空を」と書くだけで、色・空でみんな見上げる。
「頬張り」で良い。「入道雲」はどうなる?
本人 大きくなる?
夏井先生
その通り。「大きくなる」でも良いし、「太る」でも良い。
「入道雲太る」は逆に「太る入道雲」としても良い。
本人 そうかぁ。
浜田 「見上げる」っていうことは、ちょっとって思ったんやったら、そうしないと。そんな、河合にあんな目で見上げられたらアカンわ~。
一同 (笑)
[ここがポイント]
色の対比で鮮やかに
※この句は季語の「入道雲」で見上げていることはわかるので、「見上ぐ」はカット。「天」を「青空」に変えれば、空の「青」と入道雲の「白」で色の対比ができ、より鮮やかになります。
添削後
『青空を頬張り 入道雲太る』
『青空を 頬張り太る 入道雲』
◆最下位 才能ナシ30点 美保純
『地図に咲く 秋の先取り 彼岸花』
◎渋滞の地図表示が赤くなる様子とは伝わらない。明確に書いて季語と映像をダブらせる。コイツか!と思った。
【本人談】
お盆で帰省する時に、高速道路の渋滞のお知らせ(図形情報版)で都心から赤く散っていくのが彼岸花のようだというのを詠んだ。
河合 「彼岸花」って書くんだったら「秋」は要らないかなってシンプルに思いました。
本人 あ、そうなんですね。
東国原名人 「地図に咲く」でしょ?「彼岸花」が。
本人 あ、そっか。そこが。
東国原名人 (ジェスチャーしながら)「地図に咲く」?「彼岸花」…「地図に咲く」?
浜田 うるさいなぁ、もう。
河合 3回言いましたよ。
本人 うわ~!ヤバい!
夏井先生
コイツか!と思った。
ダメ出しだけ淡々とする。「秋」「彼岸花」の季重なり。
「彼岸花」は秋の仲秋あたりに咲くので、「秋の先取り」と言われてもキョトンとする。
よって、中七は全くいらない。
「地図に咲く」が謎だった。電光掲示板が渋滞で赤くなっていると。
本人 そうなの。都心から「ピャー」って。
夏井先生 何が「ピャー」だ。
一同 (笑)
本人 「ピャー」なの。
夏井先生
電光掲示板が渋滞表示で赤くなっていると書かなかったら無理。
この句に関しては「地図に咲く」も本当は要らない。
本人 要らないの?あ~、全部要らない。ヤバーい。
アッコ 「彼岸花」しかないよ。
夏井先生
語ったことを言葉にする。
「電光掲示板」と書いても良いが、どういう種類の情報かはわからない。
ここは「渋滞」とまず書くしかない。渋滞なんでしょ?
本人 渋滞なんです。海老名のイメージだったんですよ。
夏井先生 どこでもいいけどね。
一同 (笑)
夏井先生
「渋滞表示」と書けば、電光掲示板だろうと大体思ってくれるはず。
それが赤いならそう書くんだよ!「赤し」。
渋滞表示が赤くなって広がっている。そこに別の彼岸花の赤が映像でダブってくる。
こういう技法あるはず。カメラマンの兄ちゃん、あるよね?
「彼岸花の」とし、”赤”をもう一回使っても良いが、「赫(あか)し」としても良い。
「赫々(あかあか)」としてみる。
そうすると、2つの映像がダブってくる。
→東国原名人が無理という反応を見せる。
本人 私、(2つの映像がダブる)ビデオ編集はできるんですけど。
浜田 もうええわ、もう。
添削後
『渋滞表示赤し 彼岸花の赫々(あかあか)』
★特待生昇格試験★
◆『渋滞時 ぬるいソーダと 焼けた腕』 河合郁人(A.B.C-Z)
【本人談】
実体験。渋滞で車のフロントガラスから日差しが入ってきて、ドリンクホルダーにあるソーダが段々ぬるくなってきた。プラス、運転していると腕だけが焼ける。それをそのまま素直に書いた。
東国原名人
ジャニーズ君たちの句は、いつもファンタジーだったりロマンチックだったりするんです。これって非常に大衆的じゃないですか。普通に生活感がある。さすがMCを狙っているなとは思います。
一同 (笑)
東国原名人 大衆的です。
夏井先生
この句の評価のポイントは上五「時」と下五「た」の2音です。
■査定結果
5級で現状維持
理由:詰めが甘い
◎発想は良く実感もあるが「時」は説明的。並列「と」は成功。時間経過は「焼ける」に。細かい箇所に神経を。
本人 ヤバい!
夏井先生
発想は良い。実感もある。
渋滞という状況をまず言って、本来冷たいソーダがぬるくなるという時間経過もわかる。
下五で「腕」という具体的な部位も出てくる。やろうとしたことは決して悪くない。
本人 ありがとうございます。
夏井先生
ただ、詰めが甘い。
まず、「時(じ)」は”こういう時ですよ”と説明している。
好き嫌いは分かれるが、「や」で強調するか、「の」と続けていくか。仮に「や」とする。
「と」の並立は成功した。2つのものを取り合わせて1つの場面を描くのは良い。
問題は「た」。話をしっかり聞いたが、「焼けた腕」では既に焼けた腕・焼いてきた腕があることになる。
ここは何になる?
本人 「る」だ。
夏井先生 その通り。これが分からないといけない。
“今、焼けてヒリヒリしてこの渋滞はいつまで続くのか”と。
こういう細やかな所に心を使っていかないと特待生は一歩も上に上がれない。
浜田 はは、そこ止まりになってしまいますよ。
本人 そうですね。詰め甘いですね。
夏井先生 はい!
本人 今日1番の「はい!」ですね。
添削後
『渋滞や ぬるいソーダと 焼ける腕』
『渋滞の ぬるいソーダと 焼ける腕』
★永世名人への道★
東国原名人 (力説するように)せっかく獲ったね、星を取り上げられるのは、どれだけヘコむか。
浜田 確かに分かりますよ、前回はそうなりましたからね。
東国原名人 60過ぎてね、タクシー乗りゃあね。(運転手に)「取られましたな」。
浜田 はははっ。
◆『墓参り 後ろに誰か ゐるやうな』 東国原英夫
※サービスエリアからお盆の墓参りに発想を飛ばした一句。
【本人談】
墓参りに行くと、何かこの辺(後ろ)に気配がある。先祖なのか、何なのか。しかし、振り返れない。もし、先祖なら帰ってしまう気がする。大切にしながらずっと墓参りをする。その辺がゾーッとしているというのを句にした。
夏井先生
この句の評価のポイントは下五「ような」です。
■査定結果
名人10段で現状維持
理由:ゾクっとさせて欲しい
◎共感できるがリアリティーが足りない。「やうな」でなく具体的に「うしろ」に。語った「気配」も入れる。
本人 えぇ~!
夏井先生
伝えたいことはちゃんとわかる。
特に中七以降の「何かいるんじゃないか」という気配・気分は沢山の人が共感を持つはず。
そうなると、リアリティーがちょっとだけ足りない。その原因が「ような」。
そんな気がするんだけど…そんな”ような”っていうので、リアリティーが削げてしまう。
「誰か」から始める。「たれか」と平仮名で文語表現にして、「ゐる」へ。
本人が語った中に良い言葉があった。「気配がする」と。「けはひ」と書く。ここで切れる。“たれかゐるけはひ”がするぞと。
「墓参(はかまいり)の」とし、「うしろ」と平仮名で止める。
「うしろ」と言われた瞬間に読者は「えっ?」と思う。
ゾゾッとしませんでしたか?
アッコ する。
夏井先生
「けはひ」から「うしろ」へと展開するから、小さくゾクゾクッとする。
(語りかけるようにそっと)これが…出来れば、一歩前進ということ。
→少し泣き顔気味にみつめる本人
浜田 名人になると…。
本人 もう皆さん、どうですか?この難しさ。この厳しさ(訴えるかのように語り、腕組みをする)。
浜田 はははっ。いやいや、でも東さんも現状維持ということなんで、お2人次回頑張っていただきましょう。
添削後
『たれかゐるけはひ 墓参のうしろ』
編集後記
今回のお題は、海老名サービスエリアの駐車スペースから遠景に建物を映した写真。お盆の帰省ラッシュから話題のグルメ巡りと発想は飛ばしやすく、いかに詩を醸し出すかが勝負でした。
“特待生誕生”とずっと予告されていましたが、俳句コーナーではありませんでした。
1位は”ラストチャレンジ”と背水の陣で臨んだ紅白演歌歌手の丘さん。サイドミラーに発想する無難ながらも凡人2名の発想を一緒に混ぜたかのような一句で、下五の動詞の選択がポイントでした。「ひしめく」で入道雲が徐々に発達するかのような動きも読み取れる一句で、先生の「上手にならんと思ってた」は今となっては褒め言葉でしょう。演歌歌手の才能アリ獲得は伍代夏子さん以来2人目となり、珍しくコンスタントに出演しているので今後も益々期待できます。
2位は205週ぶりに出演したアッコさんで、番組の特待生制度が始まってからは初登場。前回の句は「サンマだと炭火おこしがまた楽し」で凡人50点(「サンマ」「炭火」が季語)。過去4回中3回で季重なりの失敗を犯していますが、初の才能アリで号泣するほどの一句は、助詞「も」が機能したという評価で、「尾灯」と「夏の月」を取り合わせるセンスが良いと思いました。かつて武井壮さんが詠んだ「夏逝くや離郷の尾灯連なりて」という成功句もありました。
3位は前回は才能アリだった厚切りさん。「サイドミラー」に「きりぎりす」の季語を持ってくるセンスは面白いですが、上五の意味が中七以降で明かされる語順の展開が1つのポイントで、散文をちぎったような感じにも受け取れるのが勿体ないと思いました。まだ才能アリは1回ですので、パックン以降の特待生になれるかは今後の勝負です。
4位は特待生認定の本命だった星野さん。今回も着物姿でしたが、連続の凡人となり特待生が遠のく結果に。季語の描写に焦点を絞った姿勢は良かったですが、無駄な言葉が多かったですね。「天」は「空」に添削されましたが、これは宗教的な意味合いを含む誤解を解くためでしょうか。「頬」の一字も具体的に描写しないと失敗しやすい印象です。
最下位はNHKの『俳句王国がゆく』に1年前に出演した美保さん。直後の『ごごナマ』でも夏井先生がゲスト出演しており、2回は共演済み。紙の地図に彼岸花が置かれている映像しか浮かばず、意味が全く伝わらない比喩となり、「秋」「彼岸花」の季重なりで失敗しました。”先生の愛弟子”という紹介表現は大袈裟にも思いますが、個人的には「秋立ちぬ折るをためらう袖の口」と詠んだ船越英一郎さんの方が良いセンスをお持ちではないかと『ごごナマ』の即興俳句コーナーを観て感じました。先生の期待を裏切らぬように頑張ってもらいたいですね。
特待生・名人はどちらも進めず。
河合さんは初の昇格試験。厳しい査定は放送前の動画予告で公開された上五「渋滞時」の時点で予想できましたが、実体験を詠んだ姿勢は良かったですね。季語の「ソーダ」が美味しくなさそうなのもマイナスポイントかもしれません。情報を詰めすぎた印象もあり、隣の名人は一切指摘せずに笑いに持っていきましたが、昇格がまだ遠そうです。
対する東国原名人のネガティブで面白い発想は、昨年炎帝戦で最下位に終わった幽霊の句を思い出す一句。しかし、「道」査定8度目の添削を受けました。今回も原句と添削後でどちらが良いのか素人には全く判断出来ないほどの高度な査定でしたが、文語表現で統一されていない点が、添削される一つの基準にも感じました。個人的に、原句は”おどろおどろしさ”がある一方で、「やうな」の後に”~気がする”などの説明が脳内に思い出され、もしこれが五七五七七の短歌の上の句なら下の句が気になるほどの印象ですが、俳句では野暮な表現なのでしょうか。添削後は、句またがりで歯切れが悪いようにも感じ取れますが、季語以外が全て平仮名表記で歴史的仮名遣いのため、過去の幼い自分に戻って句を書いたかのような所に臨場感を感じる添削に思いました。また、実況版ではありきたりの発想と指摘する声が結構ありましたね。昨年の俳桜戦の『ザ・テレビジョン』のインタビュー記事では、「類想類句に気を遣う」と本人は語っており、相当勉強していたはずです。それが、例の盗作疑惑事件にも繋がるのですが、今回は傾向と対策を怠ったのが最大の失敗ではないかと思いました。”奥の細道”で打率3割台と苦しむ東さんの逆襲に期待したいですね。
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は講評の50字要約です。
挑戦者→丘みどり[4],和田アキ子[5],厚切りジェイソン[2],星野真里[4],美保純[2],東国原英夫[50],河合郁人[12] ※数字は挑戦回数
●お題:お盆のサービスエリア(海老名SAの写真)
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位72点 | 丘みどり | 夏の雲サイドミラーにひしめきぬ | なつのくもさいどみらーにひしめきぬ |
2 | 才能アリ2位70点 | 和田アキ子 | 裏道も果てなき尾灯夏の月 | うらみちもはてなきびとうなつのつき |
3 | 凡人3位65点 | 厚切りジェイソン | 旅の友サイドミラーにきりぎりす | たびのともさいどみらーにきりぎりす |
4 | 凡人4位50点 | 星野真里 | 見上ぐれば天を頬張る入道雲 | みあぐればてんをほおばるにゅうどうぐも |
5 | 才能ナシ5位30点 | 美保純 | 地図に咲く秋の先取り彼岸花 | ちずにさくあきのさきどりひがんばな |
6 | 現状維持5級 | ●河合郁人 (A.B.C-Z) | 渋滞時ぬるいソーダと焼けた腕 | じゅうたいじぬるいそーだとやけたうで |
7 | 現状維持 名人10段 | ★東国原英夫 | 墓参り後ろに誰かゐるやうな | はかまいりうしろにだれかいるような |
◆発表待ちシートで
浜田 まずは和田アキ子さんでございます。
アッコ よろしくお願いします。
玉巻アナ 和田アキ子さんは過去4回挑戦されていますが、1回目が才能ナシ、その後3回連続で凡人という結果でいらっしゃいます。俳句には相当拒否反応があったらしく、4年ぶりの御出演ということで。
一同 (笑)
アッコ 何ですか?この後ろの2人?
→東国原名人と特待生の河合を指さすアッコ
浜田 いや、これ…上の2人は偉なってるんです。
河合 そうです。
アッコ 河合なに?
浜田 特待生です。
河合 僕、特待生なったばっかなんですよ。
アッコ えぇ?俳句ででしょ?
浜田 そうですよ。何で偉そうなの?そんな。
***
浜田 星野真里さんでございます。
星野 お願いします。
浜田 今日もやっぱりそういう感じでくるんですか?
星野 プレバトは和装で、とことん形から入って名人を目指そうと思います。
玉巻アナ ちなみに星野真里さんは、前回は特待生昇格の期待がかかったのにまさかの6位に沈み、代わりにA.B.C-Zの河合さんが特待生に昇格されました。
浜田 そういうことでございます。
河合 やっぱ、勉強の仕方が違ったんでしょうね。
一同 (笑)
浜田 今回はもう?
星野 はい、初心に返って作ってきました。
***
浜田 そして、丘みどりさんでございます。
丘 よろしくお願いします。
玉巻アナ (2017・2018年と)2年連続で紅白歌合戦に出場した人気演歌歌手の丘みどりさんですが、才能ナシが2回、凡人が1回…。
浜田 何で来た?
丘 あははっ。ちょっと、ちょっと…。
浜田 散々やで。
丘 ラストチャレンジの気持ちで、今日は…来ました。
浜田 はははっ。
***
厚切り こんなに、凡人と並ばせていただくとね、(才能アリに)いけそうな気がしますね。
浜田 まあまあ、いけるんちゃうか、みたいな。わかりました。
▼3位は厚切りジェイソン
厚切り Why?
***
▼4位は星野真里
星野 あ~あ。悔しい!
アッコ ヤバい、最下位だ。
***
浜田 (カンペを確認し)あ?1位経験者?
玉巻アナ そうですね、お2人とも元々は1位を経験されていると。
浜田 じゃあ、もう残ってるのガラクタばっかり。
美保 やめて。
アッコ 分かんない、分かんない。
浜田 分かんない?
玉巻アナ 美保純さんは夏井先生とNHKでご一緒(共演)されているそうですね?
美保 俳句番組(『俳句王国がゆく』)で1泊2日一緒にいて、ずっと作ってて、先生から「センスあるね!」って言われたんですよ。
浜田 マジ?
美保 もしかして、ちょっと行けるかもって…。
アッコ 忖度とかないでしょうね!
→浜田がどつく
▼2位は和田アキ子
丘 すごい!
→東国原名人もビックリして立ち上がる
アッコ ウホッ!ウホッ!ウホッ!
浜田 ゴリラか!
一同 (笑)
アッコ ちょっと…泣きそう。マジ?ずっと…ずっと凡人やったから。えぇ~!嬉しい!ウアァァ!
→スキップのポーズで上機嫌に移動するアッコ
アッコ (才能アリ)初めて。
浜田 はい。
アッコ いやいや、ちょっと。はぁ~。
***
▼1位は丘みどり、最下位は美保純
丘 ああ~!ああ~!
美保 マジで~!ええ~!私3年ぶりなのに!
※美保は「夏井先生の愛弟子」と紹介される
美保 うわ~、酷いこれ。
丘 (涙を流し)嬉しい!ああ~!嬉しい!
浜田 うるさいな。はは。
***
◎それでは順位別に見ていきます
◆1位 才能アリ72点 丘みどり
『夏の雲 サイドミラーに ひしめきぬ』
◎素直に的確な表現でシンプルに描写。「に」で焦点が絞られ動詞も上手い。季語に勢いがある。よく勉強した。
【本人談】
お盆のサービスエリアの混雑時、「飲み物でも買おうかと」とふと車外に出ようかと思うと、サイドミラーに映った沢山の雲を見て「夏だな」と感じたという句。
東国原名人
よく見てますね。「映る」っていうのは作るんですよ。千原君が夏のスペシャルで、ボンネットに花火が映るっていう…。
浜田 はいはい。ありました。
→炎帝戦で詠んだ「渋滞や花火の映るボンネット」で千原ジュニアは予選2位となった。
東国原名人 これは、「サイドミラー」という小さい所に雲が「ひしめいている」という擬人化。なかなか出てこない。ここは相当ね…勉強されたか、誰かに考えてもらったか。
浜田 コラコラコラ。
本人 勉強したんです!
東国原名人 いきなり才能ナシからこう…。
本人 勉強したんです!
夏井先生
目に映ったものを非常に素直に的確な言葉を選んで表現・描写できている。これは褒めないといけない。
「夏の雲」だけで視線は見上げている。4位の句のように「見上げ」と書く必要がない。
「サイドミラーに」の「に」は小さなものに焦点を絞っていく効果をもっている。3位の句のように、「きりぎりす」がとまっているだけの「に」ではない。
「ひしめく」という動詞を選んだのが全て。中七で、鏡の中にさらに焦点が絞られ、そこにひしめいている。夏の雲の勢いもわかる。
シンプルだけどよく作れている。作者を見て、あんぐり!
よく勉強した。偉い!
浜田 あんな感じやったのにねぇ。
夏井先生 はい。この子だけは上手にならんと思うてましたよ。ほんとに、はい。直しはいらない。
本人 (嬉しそうに)ありがとうございます。
添削なし
◆2位 才能アリ70点 和田アキ子
『裏道も 果てなき尾灯 夏の月』
◎助詞「も」は上手く機能した。動詞の位置を変えて説明臭さをなくし映像に動きを。作者分かってビックリ。
【本人談】
混雑が嫌い。高速道路がいつまでも渋滞していてトイレも大変。裏道回っても結果みんな思うことは一緒で、ブレーキランプがついてそのうち夜になって見上げている。
東国原名人
俳句見る前は、圧力がかかって70点なのかと思った。この句を見たら、正当に評価されてると。「も」は非常に気をつけなきゃいけない助詞なんだけど、「裏道も」ということは、”表も”(渋滞が)が想像できるので。
河合 僕も「も」が凄い気になったんですけど、これで合ってるかな?って僕はちょっと思います。
浜田 君はそう思う?わかりました。
夏井先生
この句で考えないといけないポイントはまさに「も」。
特待生は「も」が大丈夫かどうか、わかるようになる。素晴らしい。
ただし、正解は名人の言う通り「も」は良い。
あなた(河合)の考えはまだまだ浅いということ。
「裏道も」なので、表の大きな道も当然渋滞していると作者は言いたいと。
しかしながら、読んでいくと「も」が気になると特待生以上の人は気付く。
【助詞「も」】 ダラダラした文章のような句になりやすい |
「も」をあまり気にならないようにする方法もある。
中七をひっくり返し、「尾灯果てなし」と言い切る。
“裏道も果てがないですね”と文脈が下五に流れていくため、説明臭さを「果てなし」が受け止める。
(渋滞で)尾灯がずっと果てなく続いている。光景が広がってくる。
「夏の月」が赤く熱く、尾灯の様に浮かんでいると。
作者分かってもうビックリ!ビックリ!
本人 もう私、今日はホントに思い切り(酒を)飲みたいと思います。
[ここがポイント]
説明的な表現を避ける
※「果てなき尾灯」は果てしなく尾灯が続く状況を説明する、広い光景を表しますが、「尾灯果てなし」にすると、尾灯のアップから、それが果てしなく続く光景へ広がるため、映像に動きが出ます。
添削後
『裏道も 尾灯果てなし 夏の月』
◆3位 凡人65点 厚切りジェイソン
『旅の友 サイドミラーに きりぎりす』
◎季語を見つける発想はさすが。助詞「に」と上五の関係が悩ましい。どちらを大事にするか細かい判断が必要。
【本人談】
サービスエリアで飲み物でも飲み、車に戻った時に車体に何かが乗っている。きりぎりすとわかる。そのきりぎりすと一緒に次の季節まで旅が出来るのではないかと思った。
東国原名人
「サイドミラー”に”」という助詞の使い方がどうかということと、サイドミラーに「映っている」のか、「乗っかって」いるのか? もし走っているのなら、この「きりぎりす」はしがみついている感じですよね。パタパタしている感じ。
夏井先生
さすが良い分析。
兼題写真から「きりぎりす」という季語を脳の中で見つけてきたのは褒めるべき点。
悩ましいのは名人の指摘した助詞「に」と上五との関係。
“旅の友としますよ、サイドミラーにとまっているきりぎりすを”と言いたいなら、「に」という場所を示す助詞ではなく、「の」とすべき。
逆に「に」を大事にしたと。サイドミラーに帰ってみたら、”サイドミラーにきりぎりすがとまっていた”と。”コイツを友として旅をしようぜ”というなら、上五を変える。
「旅の」と言わなくても読み手は想像できるため、「友とせん」とすれば”友にしましょう”という意味になる。
「旅の友」「に」のどちらを大事にするか?
本人 まあ、「サイドミラー”の”きりぎりす」。
夏井先生
上五を生かして、「の」に変える。
細かい所を判断出来れば才能アリが定着してくるということ。
本人 そうですね、「の」にすれば良かったね。簡単に言うと。
浜田 そうね、はははっ。
添削後
『旅の友 サイドミラーの きりぎりす』
『友とせん サイドミラーに きりぎりす』
◆4位 凡人50点 星野真里
『見上ぐれば 天を頬張る 入道雲』
◎上五が大袈裟で「天」も誤解を生むのが勿体ない。季語で目線は上に行く。色の対比と雲の描写を描くべき。
【本人談】
シンプルに「入道雲」を詠おうと思い、空を食べてドンドン膨らんでいくイメージをこんな風に、入道雲に焦点を絞って詠んだ。
河合 「入道雲」と書いてあるんで「見上げる」がいらない気がしますね。
浜田 なるほど。
→本人はうんうんと頷きつつも、鋭い眼光で河合の方をにらむ。
浜田 めっちゃなんか凄い顔して見てたよ。はははは。
本人 凄い考えたんですよ。要るのかな、要らないのかなとは…。
河合 全然、悪くはないと思うんですよ。
一同 (笑)
本人 優しくなった。
夏井先生 言うじゃないですか!
河合 注意されたことあるんですよ、似たようなことを。
夏井先生
偉い、そしてその通り。
「見上ぐれば」と大袈裟に言うほどではない。ずっと上を見ている句。
勿体ないのは「天」で「空」とする。しかも何色?
本人 青?
夏井先生
その通り。「青空を」と書くだけで、色・空でみんな見上げる。
「頬張り」で良い。「入道雲」はどうなる?
本人 大きくなる?
夏井先生
その通り。「大きくなる」でも良いし、「太る」でも良い。
「入道雲太る」は逆に「太る入道雲」としても良い。
本人 そうかぁ。
浜田 「見上げる」っていうことは、ちょっとって思ったんやったら、そうしないと。そんな、河合にあんな目で見上げられたらアカンわ~。
一同 (笑)
[ここがポイント]
色の対比で鮮やかに
※この句は季語の「入道雲」で見上げていることはわかるので、「見上ぐ」はカット。「天」を「青空」に変えれば、空の「青」と入道雲の「白」で色の対比ができ、より鮮やかになります。
添削後
『青空を頬張り 入道雲太る』
『青空を 頬張り太る 入道雲』
◆最下位 才能ナシ30点 美保純
『地図に咲く 秋の先取り 彼岸花』
◎渋滞の地図表示が赤くなる様子とは伝わらない。明確に書いて季語と映像をダブらせる。コイツか!と思った。
【本人談】
お盆で帰省する時に、高速道路の渋滞のお知らせ(図形情報版)で都心から赤く散っていくのが彼岸花のようだというのを詠んだ。
河合 「彼岸花」って書くんだったら「秋」は要らないかなってシンプルに思いました。
本人 あ、そうなんですね。
東国原名人 「地図に咲く」でしょ?「彼岸花」が。
本人 あ、そっか。そこが。
東国原名人 (ジェスチャーしながら)「地図に咲く」?「彼岸花」…「地図に咲く」?
浜田 うるさいなぁ、もう。
河合 3回言いましたよ。
本人 うわ~!ヤバい!
夏井先生
コイツか!と思った。
ダメ出しだけ淡々とする。「秋」「彼岸花」の季重なり。
「彼岸花」は秋の仲秋あたりに咲くので、「秋の先取り」と言われてもキョトンとする。
【彼岸花】秋の季語 9月中旬から10月にかけて咲く花 |
よって、中七は全くいらない。
「地図に咲く」が謎だった。電光掲示板が渋滞で赤くなっていると。
本人 そうなの。都心から「ピャー」って。
夏井先生 何が「ピャー」だ。
一同 (笑)
本人 「ピャー」なの。
夏井先生
電光掲示板が渋滞表示で赤くなっていると書かなかったら無理。
この句に関しては「地図に咲く」も本当は要らない。
本人 要らないの?あ~、全部要らない。ヤバーい。
アッコ 「彼岸花」しかないよ。
夏井先生
語ったことを言葉にする。
「電光掲示板」と書いても良いが、どういう種類の情報かはわからない。
ここは「渋滞」とまず書くしかない。渋滞なんでしょ?
本人 渋滞なんです。海老名のイメージだったんですよ。
夏井先生 どこでもいいけどね。
一同 (笑)
夏井先生
「渋滞表示」と書けば、電光掲示板だろうと大体思ってくれるはず。
それが赤いならそう書くんだよ!「赤し」。
渋滞表示が赤くなって広がっている。そこに別の彼岸花の赤が映像でダブってくる。
こういう技法あるはず。カメラマンの兄ちゃん、あるよね?
「彼岸花の」とし、”赤”をもう一回使っても良いが、「赫(あか)し」としても良い。
「赫々(あかあか)」としてみる。
そうすると、2つの映像がダブってくる。
→東国原名人が無理という反応を見せる。
本人 私、(2つの映像がダブる)ビデオ編集はできるんですけど。
浜田 もうええわ、もう。
添削後
『渋滞表示赤し 彼岸花の赫々(あかあか)』
★特待生昇格試験★
◆『渋滞時 ぬるいソーダと 焼けた腕』 河合郁人(A.B.C-Z)
【本人談】
実体験。渋滞で車のフロントガラスから日差しが入ってきて、ドリンクホルダーにあるソーダが段々ぬるくなってきた。プラス、運転していると腕だけが焼ける。それをそのまま素直に書いた。
東国原名人
ジャニーズ君たちの句は、いつもファンタジーだったりロマンチックだったりするんです。これって非常に大衆的じゃないですか。普通に生活感がある。さすがMCを狙っているなとは思います。
一同 (笑)
東国原名人 大衆的です。
夏井先生
この句の評価のポイントは上五「時」と下五「た」の2音です。
■査定結果
5級で現状維持
理由:詰めが甘い
◎発想は良く実感もあるが「時」は説明的。並列「と」は成功。時間経過は「焼ける」に。細かい箇所に神経を。
本人 ヤバい!
夏井先生
発想は良い。実感もある。
渋滞という状況をまず言って、本来冷たいソーダがぬるくなるという時間経過もわかる。
下五で「腕」という具体的な部位も出てくる。やろうとしたことは決して悪くない。
本人 ありがとうございます。
夏井先生
ただ、詰めが甘い。
まず、「時(じ)」は”こういう時ですよ”と説明している。
【時】説明的で情緒がない |
好き嫌いは分かれるが、「や」で強調するか、「の」と続けていくか。仮に「や」とする。
「と」の並立は成功した。2つのものを取り合わせて1つの場面を描くのは良い。
問題は「た」。話をしっかり聞いたが、「焼けた腕」では既に焼けた腕・焼いてきた腕があることになる。
ここは何になる?
本人 「る」だ。
夏井先生 その通り。これが分からないといけない。
“今、焼けてヒリヒリしてこの渋滞はいつまで続くのか”と。
こういう細やかな所に心を使っていかないと特待生は一歩も上に上がれない。
浜田 はは、そこ止まりになってしまいますよ。
本人 そうですね。詰め甘いですね。
夏井先生 はい!
本人 今日1番の「はい!」ですね。
添削後
『渋滞や ぬるいソーダと 焼ける腕』
『渋滞の ぬるいソーダと 焼ける腕』
★永世名人への道★
東国原名人 (力説するように)せっかく獲ったね、星を取り上げられるのは、どれだけヘコむか。
浜田 確かに分かりますよ、前回はそうなりましたからね。
東国原名人 60過ぎてね、タクシー乗りゃあね。(運転手に)「取られましたな」。
浜田 はははっ。
◆『墓参り 後ろに誰か ゐるやうな』 東国原英夫
※サービスエリアからお盆の墓参りに発想を飛ばした一句。
【本人談】
墓参りに行くと、何かこの辺(後ろ)に気配がある。先祖なのか、何なのか。しかし、振り返れない。もし、先祖なら帰ってしまう気がする。大切にしながらずっと墓参りをする。その辺がゾーッとしているというのを句にした。
夏井先生
この句の評価のポイントは下五「ような」です。
■査定結果
名人10段で現状維持
理由:ゾクっとさせて欲しい
◎共感できるがリアリティーが足りない。「やうな」でなく具体的に「うしろ」に。語った「気配」も入れる。
本人 えぇ~!
夏井先生
伝えたいことはちゃんとわかる。
特に中七以降の「何かいるんじゃないか」という気配・気分は沢山の人が共感を持つはず。
そうなると、リアリティーがちょっとだけ足りない。その原因が「ような」。
そんな気がするんだけど…そんな”ような”っていうので、リアリティーが削げてしまう。
「誰か」から始める。「たれか」と平仮名で文語表現にして、「ゐる」へ。
本人が語った中に良い言葉があった。「気配がする」と。「けはひ」と書く。ここで切れる。“たれかゐるけはひ”がするぞと。
「墓参(はかまいり)の」とし、「うしろ」と平仮名で止める。
「うしろ」と言われた瞬間に読者は「えっ?」と思う。
ゾゾッとしませんでしたか?
アッコ する。
夏井先生
「けはひ」から「うしろ」へと展開するから、小さくゾクゾクッとする。
(語りかけるようにそっと)これが…出来れば、一歩前進ということ。
→少し泣き顔気味にみつめる本人
浜田 名人になると…。
本人 もう皆さん、どうですか?この難しさ。この厳しさ(訴えるかのように語り、腕組みをする)。
浜田 はははっ。いやいや、でも東さんも現状維持ということなんで、お2人次回頑張っていただきましょう。
添削後
『たれかゐるけはひ 墓参のうしろ』
編集後記
今回のお題は、海老名サービスエリアの駐車スペースから遠景に建物を映した写真。お盆の帰省ラッシュから話題のグルメ巡りと発想は飛ばしやすく、いかに詩を醸し出すかが勝負でした。
“特待生誕生”とずっと予告されていましたが、俳句コーナーではありませんでした。
1位は”ラストチャレンジ”と背水の陣で臨んだ紅白演歌歌手の丘さん。サイドミラーに発想する無難ながらも凡人2名の発想を一緒に混ぜたかのような一句で、下五の動詞の選択がポイントでした。「ひしめく」で入道雲が徐々に発達するかのような動きも読み取れる一句で、先生の「上手にならんと思ってた」は今となっては褒め言葉でしょう。演歌歌手の才能アリ獲得は伍代夏子さん以来2人目となり、珍しくコンスタントに出演しているので今後も益々期待できます。
2位は205週ぶりに出演したアッコさんで、番組の特待生制度が始まってからは初登場。前回の句は「サンマだと炭火おこしがまた楽し」で凡人50点(「サンマ」「炭火」が季語)。過去4回中3回で季重なりの失敗を犯していますが、初の才能アリで号泣するほどの一句は、助詞「も」が機能したという評価で、「尾灯」と「夏の月」を取り合わせるセンスが良いと思いました。かつて武井壮さんが詠んだ「夏逝くや離郷の尾灯連なりて」という成功句もありました。
3位は前回は才能アリだった厚切りさん。「サイドミラー」に「きりぎりす」の季語を持ってくるセンスは面白いですが、上五の意味が中七以降で明かされる語順の展開が1つのポイントで、散文をちぎったような感じにも受け取れるのが勿体ないと思いました。まだ才能アリは1回ですので、パックン以降の特待生になれるかは今後の勝負です。
4位は特待生認定の本命だった星野さん。今回も着物姿でしたが、連続の凡人となり特待生が遠のく結果に。季語の描写に焦点を絞った姿勢は良かったですが、無駄な言葉が多かったですね。「天」は「空」に添削されましたが、これは宗教的な意味合いを含む誤解を解くためでしょうか。「頬」の一字も具体的に描写しないと失敗しやすい印象です。
最下位はNHKの『俳句王国がゆく』に1年前に出演した美保さん。直後の『ごごナマ』でも夏井先生がゲスト出演しており、2回は共演済み。紙の地図に彼岸花が置かれている映像しか浮かばず、意味が全く伝わらない比喩となり、「秋」「彼岸花」の季重なりで失敗しました。”先生の愛弟子”という紹介表現は大袈裟にも思いますが、個人的には「秋立ちぬ折るをためらう袖の口」と詠んだ船越英一郎さんの方が良いセンスをお持ちではないかと『ごごナマ』の即興俳句コーナーを観て感じました。先生の期待を裏切らぬように頑張ってもらいたいですね。
特待生・名人はどちらも進めず。
河合さんは初の昇格試験。厳しい査定は放送前の動画予告で公開された上五「渋滞時」の時点で予想できましたが、実体験を詠んだ姿勢は良かったですね。季語の「ソーダ」が美味しくなさそうなのもマイナスポイントかもしれません。情報を詰めすぎた印象もあり、隣の名人は一切指摘せずに笑いに持っていきましたが、昇格がまだ遠そうです。
対する東国原名人のネガティブで面白い発想は、昨年炎帝戦で最下位に終わった幽霊の句を思い出す一句。しかし、「道」査定8度目の添削を受けました。今回も原句と添削後でどちらが良いのか素人には全く判断出来ないほどの高度な査定でしたが、文語表現で統一されていない点が、添削される一つの基準にも感じました。個人的に、原句は”おどろおどろしさ”がある一方で、「やうな」の後に”~気がする”などの説明が脳内に思い出され、もしこれが五七五七七の短歌の上の句なら下の句が気になるほどの印象ですが、俳句では野暮な表現なのでしょうか。添削後は、句またがりで歯切れが悪いようにも感じ取れますが、季語以外が全て平仮名表記で歴史的仮名遣いのため、過去の幼い自分に戻って句を書いたかのような所に臨場感を感じる添削に思いました。また、実況版ではありきたりの発想と指摘する声が結構ありましたね。昨年の俳桜戦の『ザ・テレビジョン』のインタビュー記事では、「類想類句に気を遣う」と本人は語っており、相当勉強していたはずです。それが、例の盗作疑惑事件にも繋がるのですが、今回は傾向と対策を怠ったのが最大の失敗ではないかと思いました。”奥の細道”で打率3割台と苦しむ東さんの逆襲に期待したいですね。

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