2019年8月1日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は講評の50字要約です。
挑戦者→向井慧[8],森口瑤子[初],IKKO[初],髙橋海人[初],みちょぱ[3],中田喜子[31],東国原英夫[49] ※数字は挑戦回数●お題:猛暑日[35℃の電光掲示板]
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位72点 | 向井慧(パンサー) | ソフトクリーム垂れ点々と子の歩幅 | そふとくりーむたれてんてんとこのほはば |
2 | 才能アリ2位70点 | 森口瑤子
| 仏壇の向日葵までもくたばりぬ | ぶつだんのひまわりまでもくたばりぬ |
3 | 凡人3位55点 | IKKO
| 人生のお守りとなり曼珠沙華 | じんせいのおまもりとなりまんじゅしゃげ |
4 | 凡人4位50点 | 髙橋海人 (King&Prince) | 夏を飲む貴方を映すガラス玉 | なつをのむあなたをうつすがらすだま |
5 | 才能ナシ5位35点 | みちょぱ
| 炎天に映える黑肌まだ足りぬ | えんてんにはえるくろはだまだたりぬ |
6 | 名人2段で 現状維持 | ★中田喜子
| 竹籔のかわく葉音や極暑来る | たけやぶのかわくはおとやごくしょくる |
7 | 名人10段へ 1つ後退 | ★東国原英夫
| 立ち漕ぎの警官真顔炎天下 | たちこぎのけいかんまがおえんてんか |
→編集後記◆発表待ちシートで浜田 初登場はIKKOさんでございます。
玉巻アナ IKKOさんはエッセイなど数々の書籍を出版されていらっしゃいます。
IKKO エッセイとかね、あと演歌大好きなので
詞に関しては、そんなに…大丈夫かなと思うんですけど。
玉巻アナ そんなIKKOさんの書籍の中から、『
IKKO 心の格言200』という格言集も出されています。
ねぇ、あんた知ってた?犬を抱いてると10歳若返るの。 |
浜田 読まんでええわ!みちょぱ 何これ?
一同 (笑)
浜田 これIKKOさんの気持ちでしょ?
IKKO 人生サビついてるから~。
浜田 うるさいな!もう。
***
浜田 お隣、初登場は森口瑤子さんでございます。
玉巻アナ 森口さんの
旦那様は脚本家の坂元裕二さん。「世界の中心で愛を叫ぶ」「カルテット」「最高の離婚」など数々のドラマを手掛けられた日本を代表する脚本家でいらっしゃいます。
※本人は映画「万引き家族」にも出演と字幕で紹介されました。
浜田 これ、
まさか手伝うてもうたとか、そういうことないでしょうね?
森口 あ、もう全然。
向井 それダメですよ。
浜田 なっ。
向井 僕もピース又吉さんと住んでた時期に
ゴーストライター疑惑めちゃくちゃ掛けられましたから。
浜田 「お前、又吉に手伝うてもうたやろ」言うて。
向井 めちゃくちゃ言われる。それないですね?
森口 断言します。ないです。浜田 ホントですね。
***
IKKO やだね~。
みちょぱ ちょっとバラエティー色が強い。
向井 濃すぎませんか?相手が…。みちょぱ、IKKO。3位はまずいよ…。
***
→残った2人は才能アリ経験者
浜田 どっちも経験者が…今日はどっちかが最下位。
向井 うーわ!
みちょぱ うわっ、怖っ!
浜田 あはは。
みちょぱ でも意外とね、
才能あるんかなと思ってるんですけど。
浜田 特待生なれる可能性もあるってことですからね、今。
みちょぱ もしかしたら。
向井 でも(前回)
先生に添削されて、「ムカつく」みたいなこと言うて。
浜田 あ、言うてた。言うた。
向井 先生のファンにちょっと叩かれた…みたいな。
一同:(笑)
みちょぱ ちょっとね、ちょっとだけね。
▼1位は向井、最下位はみちょぱ
浜田 みちょぱ、何やってんの?こないだ才能アリだったのに。
みちょぱ あれ、おかしいな。
***
◎それでは順位別に見ていきます
◆1位
才能アリ72点 向井慧(パンサー)『ソフトクリーム 垂れ点々と 子の歩幅』◎技術的に成功した作品。読者の目線の誘導が上手い。動きながらの映像が切り取られた。セオリー通りで見事。
【本人談】子どもがソフトクリームを持ちながら、暑さで(クリームが)垂れているのに気づかずに、そのまま歩いて歩幅ぐらいの間隔で地面に垂れている様子を描写した。
東国原名人 これ
よくできてるなぁ!
パンサー君、本当に考えたの?浜田 いやいや…毎回、名前で言うてあげて。
東国原名人 又吉君の
『火花』の中にフレーズが入ってたり…。
本人 ないです、変なこと言わないで下さい。ないですよ。
夏井先生 非常に
技術的にしっかりした作品。
「
ソフトクリーム」が季語だが「氷菓」という夏の季語のグループの一つ。
「ソフトクリーム
垂れ」で
映像が書け、状態がわかる。その状態が「
点々と」。
描写がきちんと出来ている。
「垂れ点々と」と言うと
読み手の視線は下に行く。
そこに「
子」という人物が出てきて、「
歩幅」に点々と垂れているとわかる。
映像が全部きれいに、動きながらの映像が切り取られている。
セオリー通り、お見事でございます。直しはいらない。
本人 ありがとうございます。
浜田 いや、素晴らしい。
本人 嬉しいですね。
添削なし◆2位
才能アリ70点 森口瑤子『仏壇の 向日葵までも くたばりぬ』◎展開が良く俳人のセンスが大変ある。亡き人もくたばりぬと読める。淡々と思いを口語で書けば感情が伝わる。
本人 ええ~!何か
凄いトップになった気分。嬉しいです。
【本人談】春に「プレバト!!」が大好きだった母が亡くなった。凄く悔しい思いが沢山あり、仏壇に飾る花はいつも華やかな花だが、向日葵を飾ってみたら猛暑であっと言う間に枯れて「母みたいに早くくたばっちゃったな」と思った。
浜田 口悪っ!
本人 愛があるんです。
中田名人 「仏壇」から始まって、思いがけない「くたばりぬ」という言葉をここで書くかという
面白いセンスというか。
夏井先生 作者に非常に興味のあった作品。
こういうことを
淡々と吐ける人は、俳人としてのセンスがとてもある。
全体としての
展開が非常に良い。
特に最後の「
くたばりぬ」がいい。当然「くたばっている」のは「
向日葵」だと読めるが、
「仏壇」の亡くなった方に対しても「くたばりぬ」と言って、意味を合わせている。「くたばりぬ」だけで色んな読み方が出てくる。
もったいない点は、
「までも」はなくても「向日葵
も」で伝わる。
さらに、
淡々と自分の言葉をそのまま口語で書いた方が伝わってくるものが深くなる。
「くたば
つてゐる」と言い切る。
淡々とした自分のつぶやきをあえて歴史的仮名遣いで書くと、
深い愛・深い悲しみを持って「くたばつてゐる」と呟いているに違いない。
こうしていれば、
今日はこれがダントツの1位だった。
[ここがポイント]句にふさわしい言い回しを選ぶ
※文語で書くか、口語で書くかは句の内容で判断します。深い悲しみを詠んだこの句では、口語で書いた方が作者のつぶやきに聞こえ、より感情を生々しく伝えることができます。
添削後
『仏壇の 向日葵も くたばつてゐる(くたばっている)』◆3位
凡人55点 IKKO
『人生の お守りとなり 曼珠沙華』◎意味は伝わるが前半が観念的で映像ではない。「となり」が説明的。語った「墓」を入れ映像を機能させる。
※お墓参りへと発想を飛ばした一句。
【本人談】猛暑の時期はお盆を思い出す。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)が大好きだが、この花は世間では誤解されている気がする。お墓や田畑の周りに植え、害虫駆除でお墓を守っていた。しかし、「狐花(きつねばな)」と言われて不吉な花という感覚が私たちの間でもかなりあった。
浜田 ほんで、何が言いたい?本人 誤解を受けながらも、人の役に立ってるのに、誤解を受けるパターンって結構あるじゃないですか。
浜田 あ~、はいはいはい。
本人 そういう人たちのみんなお守りになっていたという…。
浜田 ほんで、何が言いたいの?本人 だから!わかんないかな~?
夏井先生 全体を読むと
言いたいことはきちんと伝わる。
「人生のお守りとなり」という言い方は、ちょっと
観念的。心の中のことだけで、映像となるのは季語「曼珠沙華」しかない。
「となり」が特に説明的。この3音で
映像を足すと季語が俄然活きてくる。
「守り」は名詞ではなく
動詞に読ませる。本人談にあった
「墓」を映像として足すだけで随分変わる。その後にもう1回「
守(も)る」。
こうすると、墓の映像が出てくる。
墓と曼珠沙華の大きさがわかる。色合いも灰色と赤と対比される。
映像として機能すると、主役の季語が立ってくる。
本人 浅はかだったな、私って。
浜田 なるほど。
本人 説明を…自分ではわかる。それを
皆さんが見ることなので、風景だとか背景だとかが足りなかったのが今凄く分かりました。
浜田 ほんで、何が言いたいの?本人 お守り~!
向井 そうなるのよ、毎回。途中、
ドリブル長いのよ~。
浜田 はははっ、せやねんな。
本人 言いたいの~。
添削後
『人生を 守り墓守る(はかもる) 曼珠沙華』◆4位
凡人50点 髙橋海人(King&Prince)
『夏を飲む 貴方を映す ガラス玉』◎これで自信アリが凡人の証拠。下五が占い師の水晶玉と誤解される。季語を「ラムネ」にして恋のイメージを。
本人 (最初に呼ばれ)早い。ドキドキハラハラ味わいたかった。
※猛暑日の温度計から、夏の恋模様に発想を飛ばした一句。
【本人談】炭酸飲料のように弾ける恋模様を詩にしたかった。カップルの男性が炭酸飲料を飲むのを、ラムネ瓶の中にあるビー玉が映しているのを書いた。
東国原名人 今話聞いたら、
ラムネの話なんだね。炭酸飲料にガラス玉が入ってる。それは
「ラムネ」っていうやつだね。
一同 (笑)
本人 …そうですね。
東国原名人 「
ラムネ」だけで季語なので、
「夏を飲む」よりもそっちを持ってきた方が良かったかもしれないな。
本人 あ~。
でもなんか…あ、いいっすか?東国原名人 (名人)
10段に何か文句ある?一同 (笑)
本人 すみません。
自分的にはホントに自信があって。
IKKO あはは。すてきよね。
浜田 お前、往生際悪いな。もう…4位やゆうてるねん。
本人 4位って思って…。
夏井先生 これで
自信があったと思っているのが既に凡人の証拠。
このままの字面だと
「ガラス玉」が何物かわからない。占いの水晶玉かと思う。
ラムネなんでしょ?
本人 そうですね。
夏井先生 飲んでて映るか?→浜田は手を叩いて喜ぶ
本人 違うんです。飲むじゃないですか。
「プハー」します。(自分を指し)「プハー」映ります。夏井先生 「プハー」って何よ?一同 (笑)
本人 飲んで…「プハー」します、はい。
夏井先生 「ガラス玉」が何かを書かないと描きたい光景は絶対に描けない。
上五は封印する。
自分で勝手にやれということ。
向井 一番気に入ってたとこでしょ?
本人 そうですね。
夏井先生 「夏」があるから、季重なりのため「ラムネ」が書けない。上五を封印して「
ラムネ玉」と書けばいい。これで季語と映像が確保される。
上五をどうするか。イメージが「
恋」なら恋と書けばいい。
ラムネの描写として「
弾ける」ぐらいはどうか。
こうすると、少なくとも語ったムードや空気感は読み手に伝わる。
どっちにしても、
ちゃんと勉強してきなさい。
[ここがポイント]季語の選び方
※この句は「夏を飲む」で始めたため、肝心な「ラムネ」という季語が抜けています。どの季語を選べば描きたい情景が描写できるか丁寧に考えましょう。
添削後
『恋弾ける 貴方を映す ラムネ玉』◆最下位
才能ナシ35点 みちょぱ
『炎天に 映える黑肌 まだ足りぬ』◎まさに散文的で情緒がない。季語「日焼け」で素直に表現した方が意図が伝わる。下五も説明で1字だけ残す。
【本人談】黒肌が凄く好きで、炎天は天然の日焼けサロン。私が大好きな季節に「もっともっと焼きたい。自分ではまだ足りない」という意味を込めた。
浜田 もう、
松崎しげるくらいまでいきたい?
本人 でもホント
大尊敬してます。
夏井先生 俳句としては
まさに散文的。散文をちぎっただけ。
この句は
「炎天」という季語に頼らず、ストレートに「日焼け」という季語で表現する方が素直に伝わるのではないか。
季語何か入れないと思って入れたんでしょ?
本人 …
そうです
夏井先生 うん、もうそれが見え見え。
向井 ちょっと
ピリピリした空気が。もう…両者。
一同 (笑)
夏井先生 「映える」もわざわざ書かなくていいこと。(消す仕草)
本人 「映える」が大事ですよ!
夏井先生 いらないのです!(もう1回消す仕草)
本人 いるの!映えるの黒肌は!夏井先生 いや、
いらないのです(さらに消す仕草)。
向井 「いらないのです」。
夏井先生 「
日焼け」という季語をストレートに使い「日焼け
の肌を」。「
美しき」と最初に置けば、まさに
あなたの美しい日焼けの肌。
「まだ足りぬ」で説明している場合ではない。
本人 えっ?何があんの?
浜田 「肌」しか残ってないぞ。
一同 (笑)
本人 あそこしか残ってない。
夏井先生 いいじゃないか、一文字残っただけで。
「
なおも焼く」という言い方でもいいし、それで足りなければ「
焼く焼く焼く」でもいい。
どのぐらいが好き?
本人 「焼く焼く焼く」がいいです。
夏井先生 じゃあここに
「焼く焼く焼く」って自分で書いといてね。
浜田 あははっ!
本人 書いてよ、そんくらい。書いてくださいよ。毎回書くじゃないですか横に。
添削後
『美しき 日焼けの肌を なおも焼く』
『美しき 日焼けの肌を 焼く焼く焼く』
★特待生昇格試験★
◆『竹籔の かわく葉音や 極暑来る』 中田喜子※夏の暑さを乾いた竹の葉の音で表現した一句。
【本人談】今回なかなか発想を飛ばせなかったので、京都に吟行してきた。嵯峨野に住む知人が毎年暑さが厳しくなっているということでこの句が浮かんだ。
夏井先生 この句の評価のポイントは
中七「かわく葉音や」ここです。
本人 うぅ~!(悲鳴)
■査定結果名人2段で
現状維持理由:音のリアリティーが足りない
◎時候の季語に竹籔の葉音で取り合わせる挑戦はさすが。複合動詞を用いて語順を変えて季語を音で反芻させる。
本人 「音のリアリティー」?
浜田 はい。
夏井先生 目の付け所はさすが。
季語は「
極暑(ごくしょ)」。ただの暑さではない。
映像を持たない時候の季語を「竹籔」の「葉の音」で表現しようとするのは、さすが名人。
もったいないのは、その
音のリアリティ。
暑いだけでもある程度竹の葉っぱは乾いてくるはず。”
極暑がいよいよ来たぞ”と。「極暑来る」が主役の季語に当たる。
この句は
「極暑来る」から始める。意味が切れて「竹籔」が来る。「の」は不要。ここで
複合動詞の出番。
→はぅ!と一歩引いて驚いた表情の本人
夏井先生 「乾く」だけでなく、もう一押し行く。
複合動詞!本人 (怖がるように)…はい。
浜田 あははっ。
夏井先生 「
乾ききる」はどうか。「や」はいらない。
“
暑い間乾いていたけど、もうこれはいよいよだよ”という。「
乾ききる葉音」までやると、この音が
読み手の耳に残って「極暑」という季語をもう1度音で反芻してくれる。
本人 「乾ききる」が
なかなか出ない!あぁ~!添削後
『極暑来る 竹籔乾ききる葉音』★永世名人への道★◆『立ち漕ぎの 警官真顔 炎天下』 東国原英夫【本人談】ポイントは「真顔」。臨場感や切迫感が分からないだろうか。警官が立ち漕ぎをしている。何かが起きたんでしょう。炎天下にかかわらず真顔だという光景。
中田名人 うーん、
「警官真顔」がやっぱり上手い!上手いです。
本人 ちょっと
漢字が多いのが気になったんですけど、はい。
浜田 向井はどう思う?
向井 何とも思わないです…。いや、すみません。まだそんなレベルにないので。
本人 どういうことや!
向井 ここまで凄くなると。
夏井先生 この句の評価のポイントは
中七「真顔」です。
向井 まさに。
本人 …また~?
■査定結果名人10段へ
1つ後退理由:(未発表)
◎緊迫感が足りない。動作より表情に焦点が当たる。「警官」で切り季語を映像で認識へ。2つ前進できた発想。
向井 ええ~!
本人 まじ!
浜田 ははは!
本人 厳しいよ、先生、それ。
浜田 それはもう名人ですから。
夏井先生 やろうとしていることは悪くない。
何が問題か。
「立ち漕ぎ」「真顔」なので、
緊急なことがあり、急いでそこに行こうとしているという風に受け止めた。
ところが、「真顔」でアップの映像にいくと、
急いでいるという動作に広がっていかない。むしろ、表情にアップがいく。
これが損をするのは、「立ち漕ぎ」という動作が色々な状況が考えられるから。例えば、坂道を真剣に漕いでいるかもしれない。それも真顔のうち。
「真顔」だけでは緊急性・緊迫性が出てきにくい。
→「そうか」と頭を抱える本人
「立ち漕ぎの」の後にどう漕ぐか。簡単なこと。「
全力」でいい。必死で漕いでいるという動きが全部出る。
誰か漕いでいるか分からない。ここから「炎天」にいく。「炎天
の警官」で切れる。
読む人の脳には必死で漕いで行った警官の後ろ姿が脳の中に印象として残る。
そうすると、
警官が小さくなればなるほど光景は広がっていき、「炎天」が映像として認識されて残る。ここで季語が主役になる。
これをやっていれば、
2つアップしたいくらいの発想ではあった。
本人 (人差し指を揺らして)ムリムリムリムリ。ムリムリムリムリ。
→浜田も動作を真似て確認をとる
本人 はい。
添削後
『立ち漕ぎの全力 炎天の警官』編集後記お題は猛暑日。気象庁が2007年に定義した「1日の最高気温が35℃以上の日」ですが、当方が所持する角川の歳時記には「猛暑日」の記載はなし(「猛暑」「真夏日」はあり)。時候の季語の雰囲気を持ちながら抽象的な兼題という一風変わったお題で、発想を大きく飛ばす必要があり、タイトル戦並みに難しく感じました。写真も緑の木々をバックにした35度を示す電光掲示板で、これを描写するのは至難の業。どうやっても季語以外で音数を取られます(当方も色々考えましたが「信号の灯も干乾びる酷暑かな」……まあという感じですね)。
初心者は「向日葵」など暑さを予感させる具体的な映像を持つ季語を用いた方が簡単で、上級者ほど「猛暑」などの抽象的な季語で詩を醸し出す感じを予想していましたが、案の定平場の成功者と名人でハッキリ分かれました。
1位は4度目の才能アリを獲得したパンサー向井さん。「ソフトクリーム」の描写と「点々と」が上手く機能し、「地面」と書かずに描写するのも見事で、2回目の添削なしを勝ち取りました。「子」を詠むのが得意なジュニアさんと発想が似ている印象もあります。芸人としての対応力もあり、特待生認定も近い感じですが、過去8句全てで季語を含む3つ以上の名詞の取り合わせと何らかの動詞、助詞「の」を用いる一方で、切れ字が使われないという顕著な特徴があります。違う傾向の成功句も見たいところでしょうか。
2位は初挑戦の森口さん。「向日葵」の擬人化が成功したのが大きなポイントでしたが、「までも」が説明的でした。先生は「くたばる」を堂々と書く姿勢を褒め、「くたばつてゐる」という歴史的仮名遣いを用いた口語表現にしましたが、これが書ければ一発で特待生ではないでしょうか。
3位は初挑戦のIKKOさん。「人生」の発想は面白く、長々と人生観を本人は語っていましたが、かつて辰巳琢郎さんが詠んだ「不可解や絶へぬ華厳の滝の白」を思い出しました。コメントも頂きましたが、「曼珠沙華」は仲秋の季語で「彼岸花」を指すようです。猛暑→お盆→墓参り→彼岸 という発想の飛ばし方という感じになり、方向性は2位の句と似ていました。
4位はキンプリから神宮寺さんに続く挑戦者となる髙橋さん。「ラムネ」を飲む様子とは伝わりませんでした。「夏」を飲むという比喩への挑戦は本人の工夫だと思いますが、別の季語があれば素直に書くべきという典型的な失敗例でした。
最下位は3回目のみちょぱ(池田美優)さん。何となく「日焼け」が”焼き”足りないというニュアンスは伝わりますが、これも映像がわかるように季語を添削されました。解説を素直に聞かず、先生と相容れない感じで、赤ペンを放棄して先生も対抗していたのが面白かったです。
名人2名はどちらも添削を受けました。
まず2段の中田名人。京都に吟行するという気合いの入れようで、発想を飛ばすのに苦労したようですが、やはり凄い視点でした。単なる「真夏」なら良かったのですが、「極暑」のもう一段階暑い感じが出ていないという評価で、時間経過の概念の入った複合動詞で添削されました。仮に「乾くまで」とするなら「葉音」の変化にも軸足がいくように感じました。正攻法の印象が強い中田さんは聴覚や嗅覚に訴える句が特徴的ですが、今回は惜しかったです。
そして4度目の後退で無星となった東国原名人。「真顔」が何とも言えず、炎天下の中で緊迫感があるのかダラダラやってんだか分からない無表情な警官の微妙な心境が読み取れる一句に感じました。最後に抽象的な季語が来るのは中田さんと一緒でしたが、語順を直された後のためか、添削されての後退は予想が付きました。先生は表情に軸足を置いては緊迫感が足りず、動作に焦点を置くよう「全力」という映像を補足する言葉に変えましたが、素人にはどちらが良いのか全く判断できないほどの高度な部分に感じました。東国原名人は、自身が主張したい句のポイントが独善的視点なのですが、査定する夏井先生の評価する部分との差異が結構目立ち、その度に後退しているように感じます。例えば数学でいうと、高次の関数(山あり谷あり)で極大値をもつのが句の特徴ではあっても、夏井先生はもっと単純化した関数にして最大値が明確にするよう目をつけて添削するような印象です(分かりにくくてスミマセン)。発想は面白いのですが、永世名人は大変遠い道のりですね。
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