「プレバト!!」で披露されたフリーアナウンサー 皆藤愛子の全俳句一覧です。
名人5段 皆藤愛子(かいとうあいこ) 合計39句
成績(2023年9月21日時点) <通常挑戦者時代>
才能アリ 3回、
凡人 2回
<特待生時代>
1ランク昇格 9回、
現状維持 7回、
1ランク降格 0回
第3回炎帝戦予選3位 ・ 決勝6位 、
第3回金秋戦予選4位、 第3回冬麗戦予選1位・ 決勝8位 第4回春光戦予選A6位 、第4回炎帝戦予選B2位、 第4回金秋戦予選B4位(最下位) 第5回春光戦予選B1位 ・
決勝8位 第6回春光戦予選D3位(最下位)、 第6回金秋戦予選C3位 ・
決勝10位(最下位) 第7回春光戦予選B1位 ・
決勝2位 夏の他流試合SPで小中学生選抜に28-29で
判定負け ふるさと戦(写真俳句)で
千葉編3位 ●昇格率 56.3%(9/16) ◆添削なし秀句 16句/39句 →50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ →
人物紹介 ◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 才能アリ 綿菓子の甘い風吹く夏の夜 2 才能アリ たんぽぽのわたと飛び乗る銀座線 3 凡人 チャイム鳴り駆ける袖から夏の風 4 凡人 食後酒に木犀の香甘み足す 5 才能アリ ががんぼのゆくえ目で追う女子トイレ 6 現状維持 赤錆の乾く傘立て旱梅雨 7 炎帝③予選3位 ラムネ瓶浮かぶ未明の五行川 8 炎帝③決勝6位 ソーダ水睫毛に跳ねる泡涼し 9 夏の他流試合× 夕立の粒木霊する高架下 10 金秋③予選4位 別れ蚊を払う一人の台所 11 1ランク昇格 冬隣る振込み画面の静電気 12 冬麗③予選1位 右肩に枯野の冷気7号車 13 冬麗③決勝8位 ほろ酔いの帰路すき焼きの仄かな香 14 1ランク昇格 シャンプーの泡伝う霜焼の耳 15 現状維持 風光る天気原稿靡く音 16 春光④予選A6位 春暁のカップ麺水面の油膜 17 現状維持 春暑しマスクポッケにA定食 18 現状維持 ダービー馬ハナ差差し切る芝静か 19 炎帝④予選B2位 検診結果封切る刃先日の盛り 20 1ランク昇格 終電を待つ二の腕に蚊の名残 21 金秋④予選B4位 秋渇きピアノに映る二重顎 22 現状維持 替え玉を伝える小声雪催 23 春光⑤予選B1位 休業と手書き格子戸に春塵 24 春光⑤決勝8位 木の芽晴あいこ三回照れ笑い 25 1ランク昇格 オリオンと重機の湯気と土煙 26 1ランク昇格 悴める手のひらを刺す乗車券 27 春光⑥予選D3位 春帽子手に駆け上るあと5段 28 1ランク昇格 夏近し恐竜図鑑踏むチワワ 29 1ランク昇格 座席五度倒しアイスの蓋剥がす 30 金秋⑥予選C3位 梨噛んで潤う両耳の鼓膜 31 金秋⑥決勝10位 打ちまくる大谷生姜擦る私 32 1ランク昇格 エコバッグに新米5kg雨の帰路 33 ふるさと戦(千葉)3位 春日和チャー弁膝に水平に 34 春光⑦予選B1位 春日向カーテンの到着は明日 35 春光⑦決勝2位 ギャラ明細は二行療養の春 36 浜田杯3位 夏期講座の帰路「WOW WAR TONIGHT」聴く 37 現状維持 梅雨寒のカフェ腿に愛犬の熱 38 1ランク昇格 閉ボタン連打秋夜のエレベータ 39 現状維持 七味の蓋差し直し初蕎麦待つ
▼人物紹介 「プレバト!!」では俳句で才能アリを2回連続で獲得したフリーアナウンサー。早大第一文学部卒で特技は書道5段である。既に10名以上の女子アナが挑戦する中、初回で才能アリを獲得したのは馬場典子に次いで2人目という逸材。
句の特徴は、可愛らしい光景を淡々と描写できる表現力。兼題写真に入り込んだ気持ちで詠んだ句は成功しているが、助詞の使い方や語順のミスを指摘される失敗で凡人も経験している。
才能アリを獲得すると周囲から褒められるが、凡人に沈むと誰も触れてくれず、「プレバト!!」は残酷な番組だと話している。
また、女子アナ初の特待生を狙うと意気込み、東国原名人からも「特待生のグループに早く入ってきてほしい。タイトル戦が殺伐としているから」と男性ばかりで華が無いことを遠回しに指摘しており、期待を寄せられていた。
そして、成績優秀者が集う特待生昇格試験スペシャルで3度目の才能アリとなり、通算22人目かつ女性4人目の特待生に見事昇格。アナウンサーとしては福澤明に次ぎ、女性アナウンサー初の特待生となった。
特待生となっての初回査定は「傘立て」を「傘」と語る痛恨の解説ミスで昇格を逃すも、東国原名人からも「素晴らしい」と俳句は絶賛された。その後の一斉査定SPで、初昇格を勝ち取り、続く査定でも昇格を決め、成長率が良い特待生とテロップ紹介されるほど。
鈴木光同様、最も憧れるのは「言葉選びが素敵」な村上名人と語っていたが、発想を褒められた梅沢名人にその後尊敬の矛先が移っていたようである。また、TBS系情報バラエティー「ゴゴスマ」で共演する東国原名人に名人昇格を褒められ、「神様のように見えた」と東国原派に移ったことを明かし、村上名人から妬まれている。
タイトル戦は、紅一点となった初回は5級ながら3位で決勝進出を決め、決勝は通過組ではトップの6位に。続く金秋戦予選では4位と惜しくも決勝を逃したが、冬麗戦予選では初の1位通過を果たす。第4回金秋戦予選・第6回春光戦予選は最下位に沈むなど浮き沈みが激しい。
全体的には、女性特待生の中では好成績な方で、査定頻度も多めで、最近はメキメキと頭角を現しつつある。
また、スタジオの廊下で先生と偶然会った際に、3級昇格時の俳句を褒められ、あまりに嬉しすぎてお風呂で泣いたとまで語っている。
さらに、[12]の句が夏井先生が選ぶBEST50の上位5句である「天地人」に特待生として唯一選出される快挙に本人は感動して涙を流した。そして、その句が中学生用の明治図書出版副教材にも掲載された。
紆余曲折の末に連続昇格を果たし、番組14人目、女性として中田喜子、森口瑤子に次ぐ3人目の名人へ昇格し、その後も連続昇格。名人3段までストレートで昇格したのは、1級からは番組初、初段からは千賀名人以来2人目の快挙である。名人になってから現状維持は1度のみと調子が良い。
ふるさと戦では地元出身として千葉編に登場。自信があると語っていたが、3位にとどまり県外出身者に優勝の座を奪われてしまった。
● [1] @17/07/20◆お題:夏祭り
『綿菓子の甘い風吹く夏の夜 (よる) 』 才能アリ1位 70点
添削後
『夏の夜 (よ) の帰路 綿菓子の甘い風 』 季語は「夏の夜」。幼少期の夏祭りを想うと、屋台の甘い香りやしょっぱい香りが印象的で、綿菓子を買ってもらうのが嬉しかったことを句にした。先生は、前半の綿菓子の描写が上手く、ふわっとした感触や甘い匂いが表現できており、嗅覚へ訴える表現を高評価。「風」とあれば「吹く」は不要で、余った2音を「夏の夜」の具体的な描写に使うべきだと指南し、「帰路」で場面が具体的になるよう語順を変えて添削した。最後に「風甘し」とカッコよくも言えるが、作者が若い女性の皆藤とわかった先生は、「甘い風」の方が作者の気持ちに沿っていると許容した。
● [2] @18/03/15◆お題:都会のたんぽぽ
『たんぽぽのわたと飛び乗る銀座線 』 才能アリ1位 72点
添削なし
季語「蒲公英(たんぽぽ)」の花の黄色のイメージを東京メトロ銀座線のイメージカラーに重ねた。活動的な季節に電車に飛び乗ると、コートにたんぽぽの綿毛が付いているイメージを詠んだと語った一句。東国原名人は「早く特待生に上がってほしい。タイトル戦が殺伐としている」と女性初の特待生中田喜子を差し置いて華がないことを問題視し、浜田からビンタを食らう。後半の展開が良いと評す先生は、「飛び乗る」という複合動詞が生き生きとした効果を生み、「銀座線」の固有名詞によって、都会・地下鉄・乗車という情報が全て入る表現力を最も強く褒めないといけないと解説。ありがちな発想がオリジナリティと映像を持って表現されていると結論づけた。「次回も1位なら特待生いよいよ」と期待する浜田に「楽しみですね」と性根丸出しの東国原名人であった。
● [3] @18/05/31◆お題:
更衣(ころもがえ) 『チャイム鳴り駆ける袖から夏の風 』 凡人4位 55点
添削後
『チャイム鳴り駆ける夏シャツはためかせ 』 季語は「夏の風」。衣替えから登校風景へと発想した。学校に遅刻しそうなとき、衣替えした制服で走っていると袖から風が入ってシャツがはためいている様子を詠んだ。梅沢・藤本名人に中七の表現がおかしいと指摘され、先生も同調する。出発点を意味する助詞「から」の使い方が問題で、「袖から入る夏の風」だと意味は通じるが「入る」が省略されているため誤読を生むと指摘。本人の意図に寄り添うべく、季語を「夏シャツ」に変えて、聴覚も連想できる表現を用いて後半を添削した。最後に「今回はもったいない」と添えた先生だが、「"風"を使わなくても"風"が吹くんですね」と本人は率直に理解したようだった。
● [4] @18/11/01◆お題:
晩秋のレストラン 『食後酒に木犀の香 (かざ) 甘み足す 』凡人3位 68点
添削後
『食後酒に足す木犀の香 (か) の 甘し 』 季語は「木犀(もくせい)」。テラス席でのディナーで、食後酒が出てきた時にキンモクセイの香りがしてより甘くなったことを詠んだ。特待生志らくは「"食後酒に"の言い方が引っかかるし、キンモクセイはトイレの芳香剤の匂いかと」と笑いを取る。藤本名人は「語順が違う」と指摘し、先生は偉いと褒める。材料は才能アリなのに勿体ないと評し、美味しいものを食べて満ち足りている状況が「食後酒」でわかり、香りが甘みを足す発想も明るくて楽しく、素質はバリバリだが、なぜ語順に気付かないかと指摘。「香(かざ)」で音数を合わせた工夫は理解できるが、「香(か)」とストレートに表現し、分かり易い語順に先生は添削。「甘み」だと味になるが、「甘し」とすれば嗅覚が表現されて季語がより活きるとし、最後に「これができていればぶっちぎりの1位」と添えた。浜田に「バカ!」と言われ、本人は頭を抱えて悔しがった。
● [5] @19/05/16◆お題:
学校の蛇口 『ががんぼのゆくえ目で追う女子トイレ 』 才能アリ2位▸5級 72点
添削なし
季語は「ががんぼ」で「大蚊」とも書き、血を吸わない昆虫の一種。学校の女子トイレで嫌いなががんぼを見つけると距離をとって場所を確認した思い出を詠んだ一句。梅沢名人は「"女子トイレ"が綺麗で良い。"男子トイレ"だと気持ち悪い」と若手女性の特待生昇格にご満悦な様子。先生は「ががんぼ」の発想がリアルと褒め、残りの描写もとても良いと評す。季語のもつ特徴を「ゆくえ」で表現した点は素晴らしく、使い方を間違えると映像になりにくい言葉だが、フワフワとした方向性の定まらない様子を的確に描写。さらに、「目で追う」も動けない気分で怖がっている描写だとわかり、「女子トイレ」のとどめも梅沢名人の意見に賛同。女子が一人で怖がっているか、この後数人の女子が騒ぎ出すのではないかという場面も想像できると解説。それぞれの言葉が必要な型で必要な場所にあるという特待生の最低条件を満たしたと認められ、鈴木光に次ぐ女性4人目の特待生となった。
[ここから特待生として査定] ● [6] @19/06/20◆お題:
コンビニの傘 『赤錆の乾く傘立て旱梅雨 』 5級で
現状維持 添削後
『ビニール 傘の骨の 赤錆旱梅雨 』 「旱梅雨(ひでりづゆ)」は空梅雨を指す季語。梅雨に雨が降らず、玄関の傘立てにビニール傘が沢山入っており、「傘」が赤く錆びていたと語った。特待生を待ち望んでいた東国原名人は「素晴らしい」と語るも、好意を村上に奪われズッコケる。「赤錆」がポイントとなるが、先生は「思いと言葉にズレがある」と評し、評価を2つ用意していたが解説を聞いて判断したと語り、査定に使われなかった昇格札も浜田が掲げる。上五と季語の取り合わせが良く、「赤」「旱」の色彩の対比、「錆」「梅雨」の呼応、「乾く」「旱」のイメージ、「傘立て」「梅雨」の呼応と各言葉がイメージを補填して一句の世界を作り上げたと先生は褒める。字面通りなら昇格の内容で、錆びるのが「傘立て」と解説すれば問題はなかったが、「傘の骨」の可能性を疑ったと語り、特待生なら思ったことと言葉が寄り添わないと切ないはずと忠告。語ったように添削し、原句も悪くないと添えた。浜田はハイテンションで皆藤をいじってしまった。
● [7] @19/07/18◆お題:
打ち上げ花火 『ラムネ瓶浮かぶ未明の五行川 』 第3回炎帝戦予選3位(決勝進出) 添削後
『ラムネ瓶浮かぶ未明の川しづか 』 季語は「ラムネ」。栃木県を流れる五行川河畔で行われる真岡市夏祭大花火大会によく行き、大会翌日の川に浮かぶラムネ瓶を見て、町に静けさが戻る様子を表現した一句。「村上名人の句が好き」と語ったことにご立腹の梅沢名人は「よくこれで3位に。"五行川"が一番ダメ。そこに花火大会があると誰がわかるか」と批判。しかし、当の村上名人は「"五行川"の固有名詞こそ良い。知らなかった人が調べればよい」と語り、2名人が激しく口論する。先生は「面白い言い合いだが、そこが大事なポイント」と否定せず、「言葉の配置が丁寧な句」と評し、「未明」の時間情報によって、ラムネ瓶と川の2つの光の印影が表現されたと称賛する。地名の字面の効果が微妙だと解説し、本人談の言葉を借りて、より映像化するよう添削。3音の可能性を突き詰めるよう忠告した。初参加のタイトル戦だが、見事決勝進出を果たした。
● [8] @19/07/25◆お題:
夏の波紋[緑の映る水紋] 『ソーダ水睫毛に跳ねる泡涼し 』 第3回炎帝戦決勝6位 添削後
『ソーダ水青し 睫毛に跳ねる泡 』 『ソーダ水甘し 睫毛に跳ねる泡 』 季語は「ソーダ水」「涼し」。ソーダ水を飲もうとコップを顔に近づけたら、ピチピチと泡が睫毛まで跳ねる様子を描写した句。志らくは「作者が分かったらとても可愛らしい」と持ち上げるが、東国原名人は「季重なりでどっちを主役にするか」と指摘。先生は、中七以降が体の感覚の描写で上五の季語の描写でもあるため、季重なりは気にならないと解説。中七で自分の感覚を正直に言葉ですくい取れたと褒め、睫毛がない人には作れない句と皮肉を述べる。「涼し」が気になる場合の添削例として、ソーダ水の季語の比重を強くすべきとし、色や味を書いて2カットの映像にし、名詞止めに変えた。「すごく良くなりました」と本人も納得し、タイトル戦予選通過組の中で最上位と健闘した。
● [9] @19/08/15◆お題:
夏空と電車 『夕立の粒木霊する高架下 』 夏の他流試合SP第2試合 28-29で
判定負け 添削後
『夕立の全てが 木霊高架下 』 季語は「夕立」。急な夕立に見舞われ、「どうしよう、早く止まないかな?」と高架下で雨宿りをする人物を表現したと語った。結果は「白南風よレールの下の砕石へ 」と詠んだ小学生に判定負けを喫す。評価の分かれ目は「粒」と語る夏井先生は、「夕立の雨が粒となり音になっていく描写を良いと評価するか、『夕立』『木霊する』『高架下』の情報があれば「粒」は当然で不要と考える人もいる」と指摘。宇多先生も後者の意見に同調し、「互角で甲乙つけがたい」と評す。高野先生は「臨場感があって良い」と評すも、「粒」を強調する場合、全体が鳴り響くように使えば印象が強い句になると添削例を示した。
● [10] @19/10/10◆お題:
冷蔵庫 『別れ蚊を払う一人の台所 』 第3回金秋戦予選4位 添削なし
季語「別れ蚊」は秋まで生き残った弱々しい蚊で、台所で寄ってきた別れ蚊を払うと余計に寂しさが増したという心情を語った。梅沢名人は「素晴らしい。物凄く世界観がある」と褒め、女性の決勝進出を望む下心から3位の石田と替わるよう提案した浜田に同調する。先生は「とてもキチンと出来ている」句と評し、夏の季語「蚊」ならパチンと叩くが、哀れな「別れ蚊」を「払う」という動詞の選び方のセンスと、寂しさが伝わる「一人の台所」の展開を称賛する。しかし、技術的には申し分ないが、独自性で損だと語り、"台所・蚊・一人・手で払う"という素材は俳句では詠まれがちだと指摘。『技術点』と独自の発想を織り込む『独自性』は車の両輪だと解説し、添削の必要はないがオリジナリティ不足が決勝進出を逃した理由だと明かし、梅沢名人は残念そうな反応を見せた。
● [11] @19/10/31◆お題:
ATMの行列 『冬隣る振込み画面の静電気 』 4級へ
1ランク昇格 添削なし
季語「冬隣(とな)る」は晩秋の時候の季語。ATM(現金自動預け払い機)の手元を「振込み画面」で表現し、冬が近づく様子を画面に触れたときの静電気で感じ取ったという一句。藤本名人は「俳句は何に目を付けるか。『静電気』に目を付けたのは完璧」と称賛するも、「着想は良い」と語る中田名人は「降格して欲しい」と仰天発言。女性同士の嫉妬心をむき出しにし、場が不穏な空気に包まれる。査定ポイントは中七の是非。「具体的な読みが広がる」と評す先生は、中七でATMと分かる表現を褒め、季語の光景から、指先の皮膚感へと移っていく言葉の配置は特待生の最低条件を満たすと解説。中七は「タッチパネル」でもほぼ同じ光景を描けたが、具体的なため振り込む人物の状況が様々に想像できると語り、子への仕送り・浪費の代金・振り込め詐欺の場面などを挙げ、この句の肝の表現だと押さえる。場面を限定する表現が功を奏して、初昇格となった。
● [12] @19/12/26◆お題:
年末年始の駅弁売り場 『右肩に枯野の冷気7号車 』 第3回冬麗戦予選1位(決勝進出) 添削なし
季語は「枯野(かれの)」。新幹線の車内で右の窓側に座り、肩に冷気がきたと思うと車窓の風景に枯野が広がっていたという句。藤本名人は「良いです。『右肩に』でどこの席か分かる。(新)大阪発東京行きならA席ですもんね」と追体験したかのように語る。先生は「本当に良い句でうっとりした」と切り出し、具体的な体の部位と場所を示す「に」の助詞から始め、季語を含む中七までの展開で小さな謎が読者の心に投げ込まれると、下五で状況が出る展開を称賛。読み終わった瞬間に、列車のどの席に座り、右の方に意識を傾けつつ窓外を眺める人物が想像できるのが上手いと褒め、「7号車」の数詞で、枯野をゆっくりカーブする先頭車が見えるかのような車窓の広がりが見えたと味わいも語り「お上手、素晴らしい」と総括した。タイトル戦は予選を初めて1位で通過した。
● [13] @20/01/03◆お題:
お鍋 『ほろ酔いの帰路すき焼きの仄 (ほの) かな香 』第3回冬麗戦決勝8位(次回シード権なし) 添削後
『ほろ酔いや すき焼きの香の 残 る 帰路 』 「すき焼き」は冬の季語。七五五に崩した一句は、すき焼きを外食した帰り道、髪の毛や服に染み付いた甘じょっぱい香りを感じながらほろ酔いで帰るという句。森口瑤子は「物凄く綺麗。香りが感じられて素敵」と褒め、予選の句を絶賛した梅沢名人は「チャレンジしたが、まだ定型を崩すのは早いかな」と語って本人も頷き、「すき焼きの匂いがどこからかしているとしか読めない」と評す。先生は梅沢名人の指摘に賛同し、読者に正しく伝わるかを客観的に検証するよう指南する。自分の身体に匂いが残っているならば、肝心な所を書くべきだと語る先生は、削る言葉を問い、正解する本人。「仄かな」を消し、上五を「や」で切って定型へと添削。「残る帰路」とすれば体に残る香りが間違いなく伝わると解説。本人は「(言いたかったのは)これです。精進します」と反省。藤本名人は「上手に直すな~」と感心した。
● [14] @20/01/09◆お題:
冬のお風呂[冬の入浴] 『シャンプーの泡伝う霜焼の耳 』 3級へ
1ランク昇格 添削例(本人のニュアンスで選択すべきと提案)
『シャンプーの泡霜焼の耳伝う 』 季語は「霜焼(しもやけ)」。あまり発想を飛ばさず、素直に詠んだという句。耳が霜焼になりやすく、お風呂で痒くなることがあり、そこにシャンプーの泡が伝ってゾワゾワっとする実体験を詠んだ。「耳」というシンプルな査定ポイントにおののく本人だが、結果は連続昇格。「触覚のリアリティー」と評す先生は、映像化できる技術により、リアリティーを持った光景が手に入ったと実力を認める。「泡」から「耳」へとアップの光景で流れるカメラワークも良く考えていると褒め、「霜焼」は手足などの部位を出すのが普通だが「耳」に着目した点と、前半の言葉で「風呂」「シャワー」の光景が読者の脳に立ち上がる点をさらに称賛。原句でも許容できるが、定型の調べに引き戻すよう語順を変えられると提案。句またがりの形で、最後に泡の映像・動きを見せる添削例を示し、本人が表現したいニュアンスで決めて良いと忠告。「こういうのが作れるようになりたいです」と謙虚な姿勢で上達を誓った。
● [15] @20/02/20◆お題:
天気予報 『風光る天気原稿靡く音 』 3級で
現状維持 添削後
『天気原稿は た め く風光る朝 を 』 季語「風光る」は、日差しの強くなる春には風も光り輝くと思える様子を指す。自身が務めた、朝の情報番組のお天気キャスターの体験を思い出して詠んだ。春の気持ち良い風が吹き、両手で持つ原稿が風で靡くのを一生懸命押さえながら読む様子だと語った。梅沢名人は「風で煽られて原稿がパタパタしてる?」と質問し、本人が同意すると「うわぁ…」とふんぞり返り、「『靡く』は原稿がパタパタしてない。音はしない」と表現の違和感を鋭く指摘し、査定ポイントも下五「靡く」の是非に。「靡くよりふさわしい言葉がある」と評す先生は、梅沢名人の指摘を褒め、「靡く」は風に揺らぐような感触で、「音」はしないはずだと指摘。「急に言われても」と添削できない名人に「これが言えないからずっとそこにいる」とダメ出しする。上五字余りで「天気原稿」から攻めるのも一手だと、手元のアップから始め、動詞を「はためく」に変え、風と音を演出。さらに「朝を」で中継の臨場感を出すよう添削。本人は「素敵。全部言いたいことが詰まった」と満足した。
● [16] @20/02/27◆お題:
カップラーメン 『春暁のカップ麺水面の油膜 』 第4回春光戦予選Aブロック・6位(予選敗退) 添削後
『春暁や 冷 ゆ る カップ麺の油膜 』 季語は「春暁」。カップ麺を食べた後の寝起きで、眼前にあるカップ麺のスープが油膜で固まった光景を描写した。ジュニア名人は、「油膜は上に張るものだから、『水面』は不要では」と指摘。さらに、ランキングシートの2位に座る岩永と6位の本人との2ショットの絵面に触れ、「美男美女。バス停なら恋が始まる」と余計な一言に浜田が「そういう風に見てまうやな」と反応。先生は、目の付け所は非常に良いと褒めるが、「水面」の問題点を指摘。「水面」は自然の光景を思わせるため、分かりにくい句になったとし、句またがりの型で「カップ麺」「油膜」の字面が離れたのも勿体ないと解説する。基本中の基本の型を提案し、上五の季語を明確に「や」で切り、時間経過したカップ麺を描写すべきと「冷(ひ)ゆる」を加えて添削。言葉の選択ミスで「勿体ないことをした」と言われてしまった。
● [17] @20/04/16◆お題:
ランチの看板 『春暑しマスクポッケにA定食 』 3級で
現状維持 添削後
『A定食春の マスクを ポケッ ト に 』 春の季語「春暑し」と冬の季語「マスク」の季重なり。実体験の句は、春の汗ばむほどの陽気な日に花粉症用のマスクを外してポケットにしまい、ランチを食べる時の句だと楽しそうに語った。しかし、梅沢名人は「マスク」が季語で季重なりの句だと指摘すると、本人は仰天して口に手を当てて赤面。言葉が良いので昇格の可能性もあると褒めるが、どちらの立場なのかと浜田に突っ込まれる。査定ポイントは2つの季語との取り合わせの是非。「中七が寸詰まり」と評す先生は、俳句に俗な言葉である「A定食」を敢えて持ち込む冒険は大変良いと称賛。季重なりをやめれば寸詰まりも解消できるとし、「暑し」に頼らない添削を試みる。花粉症のイメージなら「春のマスク」とすれば、季語として現代人に理解されている日が来ていると解説し、面白い発想を生かすには、語順も変え、可愛い「ポッケ」もやめるべきと忠告。最後は助詞「に」で動作の余韻を残すように添削し、本人も納得した。
● [18] @20/05/21◆お題:
デリバリー 『ダービー馬ハナ差差し切る芝静か 』 3級で
現状維持 添削後
『ハナ差差し切るダービーの 芝静か 』 「ダービー」は夏の季語で、競馬ファンだと語る本人。今の時期は無観客競馬だが、(歓声のない)静かな芝のコースを馬が走る様子を家のテレビで観戦する場面を詠んだと語った。梅沢永世名人は、「馬」はなくても他の言葉で競馬だと分かると指摘。査定ポイントは「ダービー馬」と「ハナ差」の関係の是非。「1文字惜しい!」と評す先生は、「ダービー」「ハナ差」なら「馬」以外浮かばないと語り、名人の指摘に同調。本人は「ダービー馬」の表現の意図を主張するが、「競馬ファン食いついてくるね、今日は。いつもは素直な子が」と本音を述べる先生。季語を立てるべきで、「ハナ差差し切る」から始める句またがりにして、競馬場のゴールのアップの場面を描き、読者の脳に大歓声を思い浮かばせる語順にするよう忠告する。観衆の中で芝だけが静かと思わせる展開なら、ひょっとしたら無観客かもと想像できると解説した。
● [19] @20/07/23◆お題:
封筒 『検診結果封切る刃先日の盛り 』 第4回炎帝戦予選B2位(予選敗退) 添削なし
季語は「日の盛り」。年に一度の人間ドックの検診結果が送られてきて、封を切る瞬間の緊張感を表現した一句。藤本名人は、「"刃先"で伝わる緊張感が良い」と褒め、予選通過を熱望する梅沢名人も同意。補欠に回った横尾名人は「お手上げ」だと語った。先生は、検診結果の封を切る発想も俳句では見られると前置きするが、「刃先」を中七に書いた姿勢を称賛。映像としてクローズアップされる刃先と、季語との取り合わせで緊張感が表現されたのは意図通りだと解説。最も太陽が強く照り付ける夏の午後の日差しの暑さとハサミの硬質な光の感触も緊張感になると続け、取り合わせのメカニズムを分かった上で作っているのがわかると褒めた。添削なしながら予選2位となり補欠に回った。
● [20] @20/10/22◆お題:
秋の電車 『終電を待つ二の腕に蚊の名残 』 2級へ
1ランク昇格 添削なし
季語「蚊の名残」は「秋の蚊」の傍題。少し涼しくなったホームで待つと、急に二の腕が痒くなったため見ると見事に蚊に刺されていたと語った句。梅沢名人は「良い句。読んだだけで全部わかる」と褒める。査定ポイントは季語「蚊の名残」を選んだ是非。「調和させる工夫!」と評す先生は、「蚊の名残」が全て季語になる点に触れ、「名残」が非常に印象を集めがちで、残りのフレーズとバランスをとるのが難しい季語だと語る。前半「終電を待つ」で場所・状況・人物が出た後、「二の腕に」にクローズアップの映像になる展開もよく考えていると称賛。「名残」を浮き上がらせないために、「終」「待つ」と名残のイメージに近い物が少しずつ混ざり、難しい季語が浮き上がらないよう、一句の中に調和させたと解説した。久々の昇格を果たした。
● [21] @20/10/29◆お題:
ピアノ 『秋渇きピアノに映る二重顎 』 第4回金秋戦予選B4位(最下位) 添削後
『二重顎映せ る秋の ピアノ嗚 呼 』 季語は「秋渇(がわ)き」。食欲の秋かつ芸術の秋で、食欲が止まらず、ピアノの前に座ったら自分の二重顎が綺麗に映っていた内容の一句。発想の面白さを褒める藤本名人は「良い意味で皆藤さんらしくない」と褒めたため、梅沢名人が「あんた、独身になってから美人に弱い」と痛烈に批判。その梅沢名人は「『二重顎』が不要」と支離滅裂な指摘をする。マニアックな季語「秋渇き」は、夏痩せしても秋に食欲が戻り、バクバク食べてしまう様子の面白い季語だと前置きする先生は、季語に挑戦した意欲を認めるが、語順が違うと述べ、食欲が戻ったから二重顎になったという因果関係も勿体ないと指摘する。「秋」のみに託した方がずっと面白いと指南し、「二重顎」のアップから始め、諸悪の根源「渇き」を消した。食欲・芸術の秋を一緒に出すため、「嗚呼(ああ)」と声をあげる添削を披露し、名人らの度肝を抜く。二重顎に対して「あ~あ」と後ろめたい想いと、ピアノを弾きながら発声練習に入る「嗚呼」の両方が表現できるとし、「二重顎」が滑稽に終わらず勝負できたと総括した。藤本名人は「難しい。これは中々」、浜田「なるほど、凄いな」、梅沢名人「洒落てるねぇ」と添削に感心する面々だが、本人は「いや~凄いですね。タイトル戦だとここまでレベル上げないと駄目ですね」と反省の弁を述べた。
● [22] @21/01/07◆お題:
食券機 『替え玉を伝える小声雪催 』 2級で
現状維持 添削後
『替え玉と 小声雪催の 屋 台 』 季語は「雪催(ゆきもよい)」。今にも雪が降りそうな寒い日に、(ラーメンの)替え玉が食べたくてこっそりお店の方に伝える様子だと語った。平場凡人55点の濱家に「ちょっと分かりにくいかな」と批評される。査定ポイントは中七「伝える」の是非。「『伝える』と書かなくても伝わる」と評す先生は、助詞の選択ミスを指摘。l「を」だから「伝える」が必要になるとし、別の助詞を提案する。浜田に振られた梅沢名人は不意打ち気味に「急に言われても…」と語り、先生に話を聞くように怒られる。「と」なら、替え玉と小声(で伝える)と伝わり、節約した音数で「雪催」を補強して、季語を主役にすべきだと先生は指南。「雪催」は屋外の方が肌で冷たさを感じるため、「屋台」を最後に入れて情景が出る添削に、梅沢名人も「あ~いい…」と思わず感動。「気持ちよく1級になってほしかった」と残念そうに語る先生に、「やっぱり見違えました。足りなかったですね」と本人は返した。
● [23] @21/02/18◆お題:
雲丹の軍艦巻き 『休業と手書き格子戸に春塵 』 第5回春光戦予選B1位(決勝進出) 添削後
『休業とあ り 春塵の 格子戸に 』 季語は「春塵(しゅんじん)」。コロナ禍の休業要請の現場を詠んだ一句。街中でよく見る光景で、大好きなお寿司屋さんも休業し、その張り紙がずっと貼ってあるという状況を詠んだと語った。梅沢名人は「素晴らしい!」と連呼して褒めちぎる。先生は、今の世相を切り取った姿勢を褒め、「休業」から始まり、「春の塵」を見せる工夫がとても良く分かると称賛する。一方、リズムが多少ギクシャクしているのが、小さな気になる所だと指摘。「休業」の字が「手書き」であることより、季語をクローズアップした方が良いと忠告し、直す必要がないと語った梅沢名人に相対して筆を執る。「休業とあり」で切れを入れてお店の前に立つ状況を表現。「春塵の格子戸に」で、格子戸にかかる春の塵と「休業」の張り紙とが明確に映像となるように添削した。本人は「ちょっと違和感を感じてたので、精進しなきゃなと思います」と反省した。
● [24] @21/03/25◆お題:
じゃんけん 『木の芽晴あいこ三回照れ笑い 』 第5回春光戦決勝8位(次回シード権なし) 添削後
『木の芽晴笑う 三回目 のあいこ 』 季語は「木の芽晴」。じゃんけんであいこが何回も続くと相手と気が合うと思いこみ、嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる心境を詠んだと語った。藤本名人は「自分の名前(愛子)を俳句に入れ込むのは、自分が好きなんだな」と芸人らしく批評する。先生は「気持ちが良い季語から始まり、じゃんけんの場面も素直に書いている」と評す。悩ましいのは2箇所あり、三段切れと「照れ」だと指摘。笑いの種類を説明せずとも「あいこ三回」である程度分かるのではないかと忠告する。「木の芽晴」から「笑う」にいき、「三回目のあいこ」と添削した。最後にじゃんけんしている手で終わることで、逆に季語「木の芽晴」に明るさが戻っていく印象もあると解説した。本人は「見違えました。なんか今一歩だなと思っていたのが」と添削に納得した。
● [25] @21/12/09◆お題:
冬の信号待ち 『オリオンと重機の湯気と土煙 』 1級へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「オリオン」。冬の寒い日、交差点での工事の場面。重機を見ると少し白んでおり、雑踏の中で空を見上げるとオリオン座がある光景だと語った。梅沢名人は「全てが良い」と曖昧に述べる。査定ポイントは助詞「と」「の」「と」を選択した是非。「助詞で映像化ができている!」と評す先生は、言葉の選び方・語順が熟考された一句だと述べる。助詞「と」は、前後の言葉を並列させる助詞で、「オリオン」「重機」の並列により、頭上にある自然物「オリオン」・地上にある人工物「重機」という方向と質感の2種類の対比が効いている点を褒める。中七「の」は「重機の~」と属性を説明し、「重機の湯気」「重機の土煙」と再び「と」によって対比が出てくるが、「湯気」は白い気体・「土煙」は土色の小さい粒子という色と質感の対比もしっかりと効いていると解説。名詞止めの終わり方もよく、選んだ3つの助詞を機能的に用いて、映像化が出来ていると称賛した。いよいよ、名人に王手をかけた。
● [26] @22/02/03◆お題:
最終電車の表示 『悴める手のひらを刺す乗車券 』 名人初段へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「悴む」。寒いホームで新幹線のチケットを握りしめ、角が手のひらをチクっと刺すところを書いたと語った。ジュニア名人は「間違いなく昇格」としきりに褒める。査定ポイントは動詞「刺す」の是非。「季語を生かした工夫!」と評す先生は「悴む」が季語になる点を確認。前半「手のひら」まではごく普通の展開だが、「刺す」がこの位置にくる語順について触れる。手のひらを刺すぐらいの強い冷たさ・寒気かと一瞬思わせ、刺すのが「乗車券」であるという展開が非常に上手いと称賛する。乗車券の「角」など些末な所を書くかで迷いたくなるが、「刺す」の動詞を信じれば、読み手は手のひらにその角を感じ、角と描写しなくても伝わると解説。「手のひら」も「刺す」も皮膚感の単語で、「悴む」も皮膚感の季語のため、最後「乗車券」が出た瞬間に「悴める」に感覚が戻り、読み手は作者の体験を共有できる良句だと評した。遂に番組3人目の女性名人となった。
● [27] @22/03/17◆お題:
階段orエスカレーター 『春帽子手に駆け上るあと5段 』 第6回春光戦予選D3位(最下位・予選敗退) 添削後
『発 車 ベ ル あと5段春帽子手に 』 (兼題の「間に合うか?」のテーマ性を出す)
季語は「春帽子」。駅で急いでいて、暑いため春帽子を脱いで手に持って階段を昇っている様子と語った。自身の名人昇格を褒めてくれた"恩人"である東国原名人は句をべた褒めし、自分のこと以上に結果発表で緊張したことを明かす。流派を離脱された村上名人は逆に「春」である必要性がないと貶すも、先生から「ポンチ君のお話は、全く当たっていません」と一蹴される。先生は、階段を駆け上がり、春帽子を手にしている状況、「あと5段」で具体性も描けている点は褒める。兼題写真を見ていれば、駅での光景だと分かるものの、少しだけ焦るような切迫感を入れ、「間に合うか?間に合わないか?」という兼題の二択のイメージがあればさらに良かったと忠告し、「駆け上がる」を諦め「発車ベル」と書いて語順を変えた。「あと5段」とあるため、駆け上がっている様子は伝わり、「発車ベル」を添えることで「間に合うか?」というテーマ性が出ると指南。本人は「ありがとうございます。勉強し直します」と反省の弁を述べた。
● [28] @22/05/05◆お題:
動物図鑑 『夏近し恐竜図鑑踏むチワワ 』 名人2段へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「夏近し」。兼題から愛犬のチワワ「姫」を思い浮かべたという本人。愛犬のチワワは何でも踏んで歩くが、恐竜に対する何の敬意もない感じが面白いと思って詠んだと語った。梅沢名人は「チワワが可愛い」、ジュニア名人は「恐竜とチワワの対比が計算されている」とコメント。査定ポイントは中七・下五に対する季語の効果の是非。「チワワの動きが明るい!」と評す先生はフレーズの良さを褒める。「恐竜図鑑」という物、「踏む」動きで、人間かと思わせて小さな「チワワ」へと展開した語順も称賛。大きな「恐竜」と小さな「チワワ」の対比、動かない「図鑑」と動く「踏む(チワワ)」とイメージの対比があり、これらの映像によって、初夏への期待・喜びが表現されたと解説。「時候の季語を使うお手本のような一句」だと総評を述べた。本人は3回連続で昇格を決めた。
● [29] @22/07/14◆お題:
アイス売り場 『座席五度倒しアイスの蓋剥がす 』 名人3段へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「アイスクリーム」。新幹線に乗って、深く椅子に腰かけて買ったアイスの蓋をペロっとめくる瞬間の句だと語った。村上名人は細かい着眼点を褒め、千賀名人は「五度」の謙虚さをコメントする。査定ポイントは「五度」「剥がす」にこだわったことの是非。「臨場感がよく伝わる」と評す先生は、「倒し」「剥がす」の動作の展開が非常に丁寧に書けている点を称賛。さらに、季語は本来「アイスクリーム」「氷菓」と書くのが定石だが、この句の場合は省略した「アイス」の雑な言い方と「剥がす」の少し乱暴な表現とのバランスが取れていると述べる。「剥がす」で指先の感触や蓋の裏にくっ付いているアイスを思うが、「氷菓の蓋」だと印象が変わってしまうため、雑な表現でアイスクリームだと分からせるやり方もあっていいと認めた。4回連続昇格を決めた。
● [30] @22/09/15◆お題:
食欲の秋② 『梨噛んで潤う両耳の鼓膜 』 第6回金秋戦予選C3位(決勝進出) 添削なし
季語は「梨」。梨が大好きで、食べると果汁が耳から出そうになって「うわ~」と思ったことを句にしたと語った。梅沢名人は「とても良いが少々大袈裟」、藤本名人は「五感を繊細に表現するのが上手」とコメント。先生は非常に面白い句とし、後半の展開を瑞々しい感覚ととるか、大袈裟ととるかで評価が真っ二つに割れると述べる。ただ、作者が意図は言葉の過不足なく表現され、独自の感覚もあるため、認めるべきだと解説し、添削をしなかった。最後に決勝進出が発表され、本人は思わず喜ぶことに。
● [31] @22/10/13◆お題:
大谷翔平 『打ちまくる大谷生姜擦る私 』 第6回金秋戦決勝10位(最下位・シード権なし) 添削後
『今 日 も 打つ オ オ タ ニ 私は 生姜擦る 』 季語は「生姜」。ニュースで大谷選手が打ちまくる活躍を観て、私は自分の目の前の出来ることを頑張ろうと料理をしている句だと語った。藤本・ジュニア両名人は、句は良いと感想を口にする。梅沢名人も取り合わせは良いとしながら、大谷選手が試合中投げて打つたびに生姜を擦っている光景だと指摘。村上名人は固有名詞に季語が負けた点を指摘する。先生は、大谷選手の写真から、生姜を擦る日常をスッと持ってくる生活感への発想の良さを褒める。惜しい所は永世名人2人が指摘した所で、1つは「大谷」選手に対し、季語「生姜」が支え切れるかというバランスの問題。もう1つは「打ちまくる大谷」が、シーズン全体か今日の一試合かが曖昧な表現だと指摘。添削は最初「生姜擦る今日も大谷打ちまくる」と簡単に考えていたと述べたが、「私」が重要である点を本人に確認。添削は「今日も」からいき、「打ちまくる」を遠慮して「打つ」とし、後半の語順を「私は生姜擦る」と逆にした。一行で書いた時に「大谷」の後に「私」がくるため、「オオタニ」とカタカナにすると、メジャーリーグの空気を少し出せると忠告。本人は「いや~やっぱり凄いですね~。ありがとうございます」と感謝した。
● [32] @22/11/03◆お題:
スーパーマーケットのシャケ 『エコバッグに新米5kg (キロ) 雨の帰路 』名人4段へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「新米」。スーパーマーケットから発想を飛ばしたという本人。新米は凄い大好きで、5kgは重いが頑張って毎年買ってるので、この句を作ったと語った。横尾名人は、「雨の帰路」に"寂しい"などネガティブな感じがあるが、「新米」で雨の中でもワクワクしているのが感じ取れる」と鋭くコメントし、お茶目だと褒める梅沢名人は、「5kg」「帰路」で「キロ」の韻を踏んだ点をエロそうな顔で褒める。査定ポイントは下五の着地「雨の帰路」の是非。「気持ちを伝える言葉選び!」と評す先生は、読んだだけで状況がハッキリと分かると述べる。字余りとなる「に」は必要な助詞で、この5kgがずっしりと感じる点で重要だと解説。「雨」で、"5kgが重い"というマイナスイメージが入るが、最後の「帰路」で新米を楽しみに帰っているという、心情・想いを語れており、季語「新米」を主役にする配慮があると称賛する。「kg」「帰路」は同音異義語だが、韻としてさりげなく効いてくると褒め、「大したもんだと思う」と総評を述べた。これで千原ジュニア以来の5回連続昇格となった。
● [33] @23/01/26◆お題:
小湊鉄道(千葉県) 『春日和チャー弁膝に水平に 』 ふるさと戦⑤(千葉)3位★ 添削後
『チャー弁は 膝に車 窓 の 春日和』 『チャー弁は 膝に二 人 の 春日和 』 季語は「春日和」。「チャー弁」は千葉の名物になりつつあるチャーシュー弁当で、小湊鉄道の沿線上にもお店があり、弁当を膝に大事に載せて電車に乗る様子だと語った。「チャー弁」を食べてみたいと感想を述べる村上名人は季語が正しいかどうかをポイントに挙げる。先生は、「チャー弁」の知名度の問題はあるものの、ここで押し出す意図のため良しと認める。それ以外のポイントが2つあると指摘し、季語が動く問題と下五を挙げる。「春日和」がいかようにも動き、「春の昼」「風光る」でも成立する点を指摘。また、兼題写真があれば乗車の光景と分かるが、なぜ「水平に」する必要があるかが句だけで読み取れず、写真に甘えてはいけないと忠告する。「チャー弁」を売り出したいなら上五で「それ何?」と思わせた方が良く、「チャー弁は膝に」の後に「車窓の」「二人の」と例示した。地元出身の「名人」として1位を獲ることが出来ず、他県出身者に優勝を譲られてしまった。
● [34] @23/03/16◆お題:
引越し[トラックの荷台] 『春日向カーテンの到着は明日 』 第7回春光戦予選B1位(決勝進出) 添削なし
季語は「春日向」。引越しでよくやる失敗を詠んだ一句。新居のカーテンの到着が間に合わないが、その時だけの景色が見られるからいいかなと思う句と語った。ジュニア名人は「未来に向けての明るさがある」、梅沢名人は「肩の力が抜けている」と両者ベタ褒め。先生は「引っ越し」という言葉を使わず、中七・下五で引っ越しあるあるを思わせる辺りが上手いと評し、季語も主役に立ったと述べる。カーテンが今ないという状況が「春日向」という季語の光景を描き、カーテンが着た時のカーテン越しの光・風をこの句の向こうに想像させる効果もあり、季語もテーマもしっかりと描けていると称賛。最後に「やっと皆藤さんらしい句が戻ってきた」と述べた。2年ぶりに予選を1位で通過した。
● [35] @23/03/30◆お題:
給与明細 『ギャラ明細は二行療養の春 』 第7回春光戦決勝2位(シード権獲得) 添削後
『療養の春や ギャラ明細二行 』 季語は「春」。2021年、突発性難聴と診断されて活動休止した際の給与明細の様子を詠んだ実体験の句。休養中に事務所から届いたギャラ明細が自身が出演する番組の「再放送」しかなく衝撃的だったことを句にしたと語った。村上・梅沢両名人は揃って言葉の使い方を称賛。先生は、コロナ禍の時代を詠んだ可能性に言及し、細部が上手だと評す。「ギャラ」で芸能系の仕事だと想像でき、明細がたった「二行」だという数詞にリアリティーがある点を褒める。先生は、季語をさらに主役に押し上げるには、語順を逆にすべきだと指南。「療養の春や」と詠嘆し、「ギャラ」で人物を出して共感を先に作り、「明細二行」と細部に切り込むように添削。助詞「は」を消すだけで引き締まり、添削例なら「今日はまた勝負が動いたかもしれない」と語った。自身初のシード権を獲得した。
● [36] @23/05/11◆お題:
浜田雅功 『夏期講座の帰路「WOW WAR TONIGHT」聴く 』 浜田杯3位(20名中) 添削後
『夏期講座の帰路や 「WOW WAR TONIGHT」聴く』 『夏期講座の帰路よ 「WOW WAR TONIGHT」聴く』 季語は「夏期講座」。「WOW WAR TONIGHT」は浜田がボーカルを務めたユニット・H Jungle with tの1995年発売の大ヒット曲。中学生当時に流行したこの曲を、学校の帰りにみんなで歌ったり、カラオケで歌ったり、聴いて帰ったりもしたと語った。先生は「浜田と自分との接点を探すタイプの句」と評す。事実を淡々と書いてるだけだが、「夏期講座」が季語として立っていて、企まないことでうまくいったケースだと解説。作者自身が学生の頃に流行った曲に違いないと読み取れるとも述べる。原句の韻律でも良いが、「帰路」の後に「や」「よ」で軽く詠嘆する方法もあり、作者自身で選択すべきだと忠告。タイトル戦は名人の中で最上位と好調を維持した。
● [37] @23/06/01◆お題:
雨の日のカフェ 『梅雨寒のカフェ腿に愛犬の熱 』 名人4段で
現状維持 添削後
『梅雨寒のカフェ 愛犬の熱腿に 』 季語は「梅雨寒」。梅雨で肌寒いカフェに座り、愛犬を自分の腿にのせてちょっと和む感じだと語った。査定ポイントは「梅雨寒」「カフェ」「腿」「愛犬」「熱」の語順の是非。「もう少し触感を伝える工夫を!」と評す先生は、場面・体験を書こうとした姿勢が良いと述べる。皮膚感を強く出す「梅雨寒」という季語の把握も正しく、「寒」と最後の「熱」の対比の企みもよく分かると称賛。全体の語数が多く「カフェ」という場所がなければ一句はもう少しゆったり書けるが、「カフェ」という情報を入れたい作者の意図があるため、語順を変える方法を指南。「梅雨寒のカフェ」の後の語順を「愛犬の熱腿に」と言い切らない形で、"愛犬の熱が私の腿に残っております"と余韻を残すよう伝授。この余韻が季語「梅雨寒」という皮膚感に戻り、余韻を膨らませることで、季語が活きてくる方法もあると解説した。本人は「深みが全然変わりました」と反省。連続昇格が5でストップした。
● [38] @23/09/07◆お題:
エレベーター 『閉ボタン連打秋夜のエレベータ 』 名人5段へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「秋夜」。秋の夜に、早く閉まってほしいエレベーターの「閉」のボタンを連打している様子だと語った。査定ポイントは「閉ボタン」から始まる語順の是非。「カメラワークが効果的」と評す先生は、語順の良さを褒める。ボタンのアップの映像から連打する場面へ展開し、「秋夜」という具体的な映像がない季語にポンと切り替わった瞬間、連打の意味が何となく読み手に伝わってくると解説。理由もなく寂しい秋、何だか分からない不安のようなものに囚われがちで、「秋思」のような秋の憂いを抱きがちな季節の夜が分かると述べる。「エレベーター」も長音がなく「タ」で終わることで、一音足りなさそうな気分が、「連打」「秋夜」の不安のようなものと微かに響き合い、様々なことを意識して言葉を選んだに違いないと判断できると評した。遂に5段に到達した。
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