【2/2】「プレバト!!」で披露された舞台俳優 梅沢富美男の全俳句一覧(全2記事)の2記事目です。
永世名人(名人10段★5) 梅沢富美男(うめざわとみお) 合計188句+ドッキリ企画での披露句1句
◆当記事は
梅沢富美男さんのプレバト!!で紹介された
101番目以降の俳句を紹介しています(永世名人初の掲載決定句の次回以降)。
→
梅沢富美男の全俳句一覧①に、初期の俳句(1~100句目)を掲載しています(目録は全て当記事に掲載)。
※該当記事の情報量が多いため、記事を2つに分割しています。
※PCからの閲覧で、コメント欄が表示されない場合は一度リロードしてください。
【おことわり】 梅沢富美男さんの『句集 一人十色』で掲載された50句のうち、当番組で掲載が不明瞭な認定句(→永世名人認定時以前の18句)にどの句が該当するかなど、句集の内容に付随する補足の記載を行う予定は現時点でございません(※著作物の内容に該当するため)。当番組で発表された内容に従って記載いたします。あらかじめご了承下さい。 |
成績(2023年3月23日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ9回、俳句王決定戦
Bブロック2位<特待生時代>
1ランク昇格19回、
現状維持22回、
1ランク降格5回、
ドッキリ4ランク降格1回
【永世名人への道】★★★★★ 前進 10回、
現状維持 10回(うち星持ち5回)、
後退 5回(添削があれば即降格)
【永世名人・富美男のお手本】暫定50句・
残り0作(50句で句集出版決定)⇒句集『一人十色』
認定18句+
掲載決定 30句(査定)+2句(他流試合1回・タイトル戦1回)、
ボツ 48句
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第1回番組対抗戦
才能アリ2位
第1回炎帝戦6位、第1回冬麗戦3位
第2回俳桜戦2位、
第2回炎帝戦優勝、
第2回金秋戦優勝、第2回冬麗戦決勝5位
第3回春光戦決勝4位、第3回炎帝戦決勝2位、第3回金秋戦決勝8位、第3回冬麗戦予選3位・決勝4位
第4回春光戦決勝10位(最下位)、第4回炎帝戦決勝4位、第4回金秋戦決勝3位、第4回冬麗戦4位
第5回春光戦決勝3位、第5回炎帝戦6位、第5回金秋戦決勝6位、第5回冬麗戦5位
第6回春光戦決勝7位、第6回炎帝戦9位、第6回金秋戦決勝7位、第6回冬麗戦9位
春の他流試合SPで松山東高校に28-28で引き分け、秋の他流試合SPで東大王・鈴木光に9-10で
判定負け通信教育査定で
よく頑張ってる!査定1回
ふるさと戦(写真俳句)で
茨城編2位、福島編で3位査定とは別に2017年月間MVH二度受賞(1・6月)、2018年度月間MVH二度受賞(8月・19年2月)・特待生アンケートによる最優秀句選出(9月)
●通算昇格率 39.6%(59/149) 掲載率:38%(30/78) 前進率:40%(10/25) 昇格率:41%(19/46)◆添削なし秀句 75句/188句(ドッキリ企画は除く)
→50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ→
人物紹介
◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
※リンクのない番号は
記事①から詳細をご覧下さい。
1 | 才能アリ | 頬紅き少女の髪に六つの花 |
2 | Bブロック脱落 | ほろ酔いに赤いタワーも花篝 |
3 | 才能アリ | 万緑や風まきこみて水落つる |
4 | 才能アリ | 雲海や朝日をうみて富士光る |
5 | 才能アリ | 黄金なす陽の香背に負う稲架一重 |
6 | 才能アリ | しんしんと仏の白き息あおぐ |
7 | 才能アリ | トランクに腰掛けバス待つ春隣 |
8 | 才能アリ | 蒼き踏むあおぐ山頂空青し |
9 | 才能アリ | 乙女摘む一芯二葉夏は来ぬ |
10 | 才能アリ | たいくつなコスモス風を揺すりけり |
11 | 現状維持 | 千枚田海にくだけり稲すずめ |
12 | 1ランク昇格 | 湯もみ歌聞こゆ湯畑雪もよい |
13 | 現状維持 | 車窓にはじょんがらのごと雪しまく |
14 | 1ランク昇格 | 湯気ましろましらましろよ雪見の湯 |
15 | 1ランク昇格 | かやぶきの垂氷に溶ける空のあお |
16 | 現状維持 | 左見右見風を抱くや鬱金香 |
17 | 1ランク昇格 | ゆるゆると鷹鳩と化す日のリフト |
18 | 現状維持 | 菖蒲葺く背伸びの空や鯉3つ |
19 | 現状維持 | 万緑を穿つ朱なる列車かな |
20 | 1ランク昇格 | トランクの下の水たまりにも虹 |
21 | 現状維持 | 朝まだき町家にボレロ蝉しぐれ |
22 | 現状維持 | 肩上げのなおたくし上げ冷やし瓜 |
23 | 1ランク昇格 | 遠花火音のみ響くビルの底 |
24 | 1ランク昇格 | 滂沱たる風鈴の音や市の朝 |
25 | 1ランク降格 | 缶ピース線香がわり墓洗ふ |
26 | 1ランク降格 | 秋澄むや蒼し肺ふのありどころ |
27 | 1ランク昇格 | 富士遥かあぜのかりがね寒き朝 |
28 | 1ランク昇格 | ライン引き残してつるべ落としかな |
29 | 現状維持 | 午後の陽にバギーの寝息銀杏散る |
30 | 現状維持 | 南口きみ片待つや去年の冬 |
31 | 1ランク昇格 | 蜜柑「け」とばっちゃが降りた無人駅 |
D1 | 降格ドッキリ | 富士に手をかざして返す羽根日和 |
32 | 1ランク昇格 | 御降りの洗いて清し富士青し |
33 | 1ランク昇格 | 銀盤の弧の凍りゆく明けの星 |
34 | 現状維持 | 帯とけばころり福豆二つ三つ |
35 | 現状維持 | 菜の花や厨に眠るあさり貝 |
36 | 現状維持 | 桃色の先になくなる雛あられ |
37 | 1ランク降格 | 花びらも乗車するなり春隣 |
38 | 現状維持 | ハムサンド芥子おおくて夏は来ぬ |
39 | 1ランク昇格 | 紫陽花の泡立つ車窓午後の雨 |
40 | 現状維持 | あるじ無き病室の窓四葩咲く |
41 | 炎帝①6位 | 星空の螺鈿を恋ふる夜光虫 |
42 | 1ランク昇格 | いさばのかっちゃスカーフはあけびの色 |
43 | 才能アリ | 絵日記のはみ出すほどに茄子の牛 |
44 | 1ランク昇格 | 夜学果てまだ読みふけるおとがひよ |
45 | 1ランク降格 | えり足に冬の風ありLINE消す |
46 | 現状維持 | 手袋の中の指輪よ再開よ |
47 | 冬麗①3位 | ざくざくと空切りひらく雪下ろし |
48 | 1ランク昇格 | じっちゃんの咳ひとつ澄んだ空 |
49 | 現状維持 | 春待つや恵方知らせる店の声 |
50 | 現状維持 | 別珍の手触りのして梅の香よ |
51 | 現状維持 | 春の日は練り羊羹の甘さかな |
52 | 現状維持 | 天領に吹く風やさしつるし雛 |
53 | 1ランク昇格 | 友ふたり卒業の日の病室に |
54 | 俳桜②2位 | 空のあお富士の蒼へと飛花落花 |
55 | 現状維持 | 木漏れ日を蹴散らし子らは夏に入る |
56 | 1ランク降格 | おさな子の乳房ふくめる玉の汗 |
57 | 現状維持 | 曇天に俯く北の濃紫陽花 |
58 | 1ランク昇格 | 道ばたの花束ひとつ虹立てり |
59 | 現状維持 | 原子炉と共に溽暑に眠る町 |
60 | 1ランク昇格 | 嬰児の寝息の熱し砂日傘 |
61 | 炎帝②決勝1位 | 旱星ラジオは余震しらせおり |
62 | 現状維持- | 震禍の港あふるる笑顔初さんま |
63 | 現状維持- | 長き夜に母の声音の「ぐりとぐら」 |
64 | 金秋②決勝1位 | 廃村のポストに小鳥来て夜明け |
65 | 現状維持- | 関東炊き竹輪麩足して待つ帰り |
66 | 現状維持- | 義士の日のまねきに白く降る夜空 |
67 | 冬麗②決勝5位 | 万華鏡めける結露や初明かり |
68 | 現状維持- | 札止めの墨色の濃さ初芝居 |
69 | 1つ前進 | 牢名主のごと自販機のおでん缶 |
70 | 現状維持- | ビル街や窓にあまたの山笑ふ |
71 | 1つ前進 | 水やりはシジミ蝶起こさぬように |
72 | 1つ前進 | 紙雛のにぎやか島の駐在所 |
73 | 春光③決勝4位 | 鷹鳩と化すカフェオレの白き髭 |
74 | 現状維持- | 店先の香箱座り暮れの春 |
75 | 春の他流試合△ | 退院の雲なき空やつばくらめ |
76 | 1つ後退 | 手放せぬティッシュの甘く養花天 |
77 | 1つ前進 | 緑青のカラン石けんネット揺れて夏 |
78 | 1つ後退 | 薄暑なり日常を行く喪服の吾 |
79 | 炎帝③決勝2位 | 鯉やはらか喜雨に水輪の十重二十重 |
80 | 1つ前進 | 秋夕焼機内に遺影の席ひとつ |
81 | 金秋③決勝8位 | 徒歩で行く免許返納秋の風 |
82 | 1つ後退 | 茎漬けに添へて売り子の土地訛り |
83 | 1つ前進 | 乗り換えのマフラーの波寡黙なり |
84 | 1つ後退 | 笹鳴の庭後にして帰京せり |
85 | 冬麗③予選3位 | 初旅やほのかに匂ふポリ茶瓶 |
86 | 冬麗③決勝4位 | 湯豆腐にすの立ちはじむ四方の春 |
87 | 1つ前進 | 爪革の紅のさくさく霜柱 |
88 | 1つ前進 | 春近し鳩居堂二階句帳買ふ |
89 | 1つ後退 | 白髪の薄色に染め春立ちぬ |
90 | 現状維持- | 長閑なりかの日の屋上遊園地 |
91 | 1つ前進 | 花粉来て獺の祭りのごとちり紙 |
92 | 現状維持- | 給食費払えぬあの日の養花天 |
93 | 春光④決勝10位 | 風呂なしの四畳一間の三葉芹 |
94 | 現状維持- | まかないの独活あえ清し春の暮 |
95 | 頑張ってる! | 平成の蓬冷凍庫に眠る |
96 | 1つ前進 | 花束の出来る工程春深し |
97 | ボツ | 道中を終えて眼鏡の禿かな |
98 | ボツ | 半夏生宅配ピザのMサイズ |
99 | ボツ | おひねりや子役の見得に夏芝居 |
100 | 掲載決定 | 桐の花いつかは来ない紙袋 |
101 | ボツ | シンクの西日カップ焼きそばの「ボコン」 |
102 | ボツ | 藻の花やペットボトルにさやさやと |
103 | 掲載決定 | 水玉の模様クロックスの日焼 |
104 | 炎帝④決勝4位 | 行合の空の御朱印めぐりかな |
105 | 掲載決定 | 読み終へて痣の醒めゆくごと朝焼 |
106 | ボツ | ライスカレー匙のすっくと氷水 |
107 | ボツ | レジ横の「本日台風コロッケの日」 |
108 | ボツ | 野分の夜ほぐす卵ののの形 |
109 | ボツ | 口立てのカセットの声秋彼岸 |
110 | ボツ | 秋の灯に透かす卵に命あり |
111 | 秋の他流試合× 掲載決定 | 暮れてゆく秋の飴色セロテープ |
112 | ボツ | 芒散る雀色時つく列車 |
113 | 金秋④決勝3位 掲載決定 | 火恋し形見の竜頭巻く深夜 |
114 | 掲載決定 | 何度目のオセロ薄目のこたつ猫 |
115 | ボツ | 真珠婚妻の手の染み冬紅葉 |
116 | ボツ | 馬の鼻やわらかきもの雪催い |
117 | 掲載決定 | 妻よりと楽屋見舞いの加湿器来 |
118 | 掲載決定 | 四日はや雪駄でたぐる駅の蕎麦 |
119 | 冬麗④4位 | 鏡越しロット巻く手や春隣 |
120 | ボツ | 風花や改札口に眼鏡拭く |
121 | 掲載決定 | あえかなる鏡の色をして冬日 |
122 | 掲載決定 | 春の雪まだ現役の鯨尺 |
123 | ボツ | 〆に出るオモニ自慢の干鱈汁 |
124 | 掲載決定 | トリミング終えて仔犬の腹や春 |
125 | ボツ | 留守の間をルンバ操る仔猫かな |
126 | 春光⑤決勝3位 | 「最初はグー」聞こゆ志村忌春の星 |
127 | ボツ | やわやわと陽のあくび巻く春キャベツ |
128 | ボツ | 飯盒を逆さにしばし揚げ雲雀 |
129 | ボツ | 球春やベンチ入りするボトルガム |
130 | 掲載決定 | 春愁をくしゃと丸めて可燃ごみ |
131 | ボツ | 縦横に斜めに子らの昼寝かな |
132 | ボツ | 帰国の日アガシの白いハイヒール |
133 | 掲載決定 | 夏立ちぬバタークリーム強情で |
134 | 掲載決定 | ナイターの売り子一段飛ばし来る |
135 | ボツ | 紫陽花の蒼きはぜるや雨しとど |
136 | 掲載決定 | 子の傘に透ける窓あり青蛙 |
137 | 掲載決定 | 百物語最後の鏡に映る物 |
138 | ボツ | 永らえて短夜をなほ持て余す |
139 | 掲載決定 | 南国の果実色してハンディファン |
140 | 掲載決定 | 玉葱を刻む光の微塵まで |
141 | 炎帝⑤6位 | 若夏やTシャツという戦闘服 |
142 | ボツ | ババヘラの器用に咲かせ砂日傘 |
143 | ボツ | 火を纏う遠州男児筒花火 |
144 | 掲載決定 | 蜩の声かけ流す湯殿かな |
145 | ボツ | 白秋や漢字ドリルに書く名前 |
146 | 金秋⑤決勝6位 | 龍淵に潜む充電切れスマホ |
147 | ボツ | 伝言板くせ字も愛し秋うらら |
148 | 掲載決定 | 冷ややかや湖畔に肺の晒されて |
149 | 掲載決定 | 黒七味蕎麦に振り込む義士祭 |
150 | ボツ | ますかけの手にある我の木の葉髪 |
151 | ボツ | 名画座のフィルムの傷の雪雑り |
152 | 掲載決定 | 冬ざれや交差点蹴る明け烏 |
153 | ボツ | 薄明り杜氏のすする粕の汁 |
154 | 掲載決定 | 縫い初めの楽屋朝日は母にさす |
155 | 冬麗⑤5位 | 冬旱地図から消えた村の数 |
156 | ボツ | お歯黒のかすかにのぞく雛かな |
157 | 掲載決定 | セルフレジだけのコンビニ花曇 |
158 | 春光⑥決勝7位 | 長閑なり細くたなびく湯の放屁 |
159 | ボツ | 日だまりに仔猫の眠るボンネット |
160 | 掲載決定 | 髭あたる泡の甘やか目借り時 |
161 | ボツ | 暁光や桜隠しの五稜郭 |
162 | 掲載決定 | 桜蘂降るハシビロコウ瞬く |
163 | ボツ | 公園の夕焼煮詰まれば帰る |
164 | ボツ | 舌先を花山椒に噛まれけり |
165 | ボツ | まろび来る仔犬に夏の陽の香り |
166 | ボツ | まず眼鏡次に手のひらすぐ夕立 |
167 | ボツ | 言の葉や追えば消えゆく夏の蝶 |
168 | 掲載決定 | 赤札のプードルを抱く帰路夕焼 |
169 | ボツ | バーディで上がるホールや青葉木菟 |
170 | 掲載決定 | 祭果て開くや風の通り道 |
171 | 炎帝⑥9位 | 月見草文箱の底に出さぬ文 |
172 | ふるさと戦(茨城)2位 | 車窓より鹿島祭りの灯のはるか |
173 | ふるさと戦(福島)3位 | 赤べこの背なに揺られて山装ふ |
174 | 掲載決定 | 口開けの客は西瓜と連れ立ちて |
175 | 金秋⑥決勝7位 | ポケットにゴミ爽涼のユニフォーム |
176 | 掲載決定 | 秋寒や焦げた天麩羅箸の先 |
177 | ボツ | 大中小弁当箱に鮭の秋 |
178 | ボツ | 小さき手のピクルスつまみ出す小春 |
179 | ボツ | 吾子踏みぬ銀杏落葉の無尽なり |
180 | ボツ | ピザに焼く上顎の皮雪催 |
181 | ボツ | 榾の宿主十八番の夢芝居 |
182 | 掲載決定 | 冬木立シャンパン色にさざめきぬ |
183 | 冬麗⑥9位 | 夕の膳二つ「ん」のつく冬至かな |
184 | ボツ | 練り物の蓋持ち上げておでん鍋 |
185 | ボツ | お三時は固めのプリン春の雪 |
186 | ボツ | 赤チンの膝の記憶や養花天 |
187 | ボツ | 沸点の富士に近づく暮れの春 |
188 | 掲載決定 句集完成 | 湯玉ふつふつ春の厨の砂時計 |
▼人物紹介「プレバト!!」の番組初期から出演する舞台俳優で自称「300年に1人の役者」。俳句査定だけで150回を超える最多出場者で、自身を「ミスタープレバト」と呼んでいる。紅白出場歌手でもあり、俳句プレゼン前のBGMでは本人最大のヒット曲「夢芝居」のイントロが流れる。
番組内で夏井先生に悪態をさらして大バトルに勃発することがしばしばあるが、実際は夏井先生が感服するほどの影の努力家。
句の特徴は膨大な知識量からくる言葉のセンスと詩的表現力。発想は飛ばないが兼題写真の描写に徹して成功する句は見事である。また、王道な定型句での勝負が基本であり、方言や役者用語を用いることも多い。また、特殊な季語で挑戦する句も目立つ。大概の句は一見単調にも見えるが表現技法においては様々なバリエーションがみられ、常に新しいことに挑戦的な表現巧者でもある。
番組初の特待生かつ番組初の名人で、前人未到の「永世名人」そして「プレバト師範」に向けて終わりなき道をひた走っている。俳句査定挑戦のパイオニアであり、この番組での暴言ぶりと俳句の実力が評価されてTV業界でブレイクを果たしたと言ってよい。
その一方で、名人になってから13句連続で添削される([34]~[46])など、段位相応の高度な技を要求されることも多く、スランプに陥ることもあり完璧な句は意外と少ない。
王道俳句の位置づけがゆえに句の印象が弱くなりがちで、ライバルの東国原名人には全く句を覚えてもらえない。それゆえ発想が凡になりがちで挑戦回数は最多でも昇格率は名人の中でも常に低い。
夏井先生からは「発想が飛ばない点で本人は苦しんでいる」のだと第2回俳桜戦後の特集記事で語っており、炎帝戦のインタビューで「最近は一か所甘いことが多い」とも評している。
他人の句への論評も司会の浜田から真っ先に振られやすいが、時に的外れとも取れる指摘をしがちで、夏井先生から「3つに1つくらい当たる」と一見厳しく評価されている。しかし、タイトル戦など自分の権威を他の出演者に示せる状況下では絶好調のため、バラエティを意識した言動を行っている。名人10段となってからは指摘の的中率も高く先生から褒められやすい一方、分からない場合は「急に言われても」と返すのが常套手段となっている。
自己顕示欲が強いことで、番組では王者の振る舞いを見せることが多く、ヒール役に徹するイメージも強いが、浜田と夏井先生との結束は強く、3人の掛け合いや出演者とのやり取りが、この番組の魅力の一つである。また、浜田から「なんちゅう顔してんねん!」「メガネ割るぞ!」などとよく言われ、顔芸や傲慢な態度はお決まりのリアクションで、貫禄十分な番組の看板顔といえる。
本業で出演できない期間もあるが、出演しない時も以前の名言や査定結果がVTRで紹介されるため、本人は裏番組に出演できない(※)ことを気にしている。
さらに、俳句は当番組でしか披露しないことを決めており、俳句関連のオファーは全て断るなど、夏井先生を慕う姿勢や番組に対する熱意が深く、俳句甲子園の企画にも自身の劇団として協賛をするほどである。
段位としては長年最高ランクを維持し「俳句の絶対王者」として君臨してきたが、番組最多5度目の降格を経て一時東国原に逆転された。しかし、再び昇格して名人10段へ一番乗りを果たした。
また、タイトル戦の戦績も波瀾万丈。第2回俳桜戦までに参戦した最初の3回はいずれも最高段位ながら優勝できなかったため、巷では「無冠の帝王」と言われていたが、炎帝戦で遂に初戴冠を果たして汚名を返上し、過去最多13名参加の金秋戦でも覇者となり2冠を達成。しかし、三連覇をかけた冬麗戦では5位に屈した。また、防衛戦となった第3回金秋戦ではまさかの8位と大乱調でシード権を失うも、史上初の下剋上優勝を狙う冬麗戦では置きにきた句で難なく予選を突破。優勝賞金を視聴者プレゼントするという強気の発言で臨んだ決勝は4位に留まった。そして、第4回春光戦では初の最下位に沈み、再び裏番組へシフトする発言で夏井先生に噛みついた。タイトル戦の戦績は優勝2回、2位が2回、3位が4回、4位が4回、5位が2回、6位が3回、7位が2回、8位が1回、9位が2回、10位が1回と全体としては安定感があるが、最近は厳しい評価をされがちでタイトルからは2018年夏以来4年以上遠ざかっている。
失敗の許されない「永世名人への道」査定は合計25回と最多挑戦。挑戦当初は、「10段にしては甘い」「読者を信用していない」等と評されて5回連続で前進に失敗し、本人に牙をむく制度として苦戦を強いられたが、6度目にして初前進。その後は、「説明するな!」などと評されて後退も幾度も経験して星2つと3つの行ったり来たりを繰り返し、昇格レースは東国原・村上名人に一時並ばれて混沌を極める展開に。度重なる出演を重ね、遂に4度目の王手をかけた挑戦で悲願の永世名人に到達した。
そして、永世名人襲名記念に傑作を50句集めた俳句集の出版が決定するも、夏井先生から認められた秀句は6年半の挑戦で18句のみ。残り32句の傑作が必要という厳しい条件が判明し、過去の出演ペースからは計算上12年かけて査定に挑戦する長い道のりが明らかとなった。
その後はほぼ毎週のように出演することとなり、2年10か月の間に"富美男のお手本"として合計78回俳句を披露。ボツ句がシュレッダーにかけられる厳しい演出をされる中、コンスタントに計30句の追加掲載にこぎつけ、秋の他流試合での敗北句や第4回金秋戦の句も掲載決定に認められた。しかし、ボツ率が高いため「シュレッダー富美男」「シュレ沢さん」と名付けられてしまい、「シュレッダー率」は実に62%に上っている。
永世名人となってから、小学生からファンレターやプレゼントを多く貰うほどに好感度が上がっており、久々の新曲「ノスタルジア」は夏井先生から帯を書いてもらっている。
2020年秋の他流試合ではチームリーダーとして登場。第5試合で東大王の鈴木光と対戦するが、1点差で敗れている。
2021年4月末の放送で、ボツ査定でシュレッダーされた句の紙吹雪は全て回収され、梅沢富美男像に再利用されていることが判明。19回ボツ分で作られた胸像がお披露目されたが、最終的には3~3.5mの高さで作ることが発表され、本人は完成させまい意思を表明していた。その翌年4月のSDGs週間でもボツ33回分の紙吹雪で作られた胸像がお披露目され、幅45cm、全高100cm程度に完成予想図のサイズが修正された。また、10月・秋のSDGs促進週間でもボツ37回分の胸像がお披露目され、美術スタッフによると残り3回のボツ査定で胸像が完成することが告知された。そして11月の放送で3回連続ボツとなり、句集完成まで残り2句と迫りながらも胸像の完成が確約。その翌週の放送で計42回分の紙吹雪を固めて色塗りされたフォルムがお披露目された。また、ボツ回数が多いため、像完成以降のボツによる紙吹雪は「夏井像」の作成に使われることも明らかにされた。
ちなみに、2020年秋に開始した有料サービス「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」に興味を寄せているようで、自身のブログをはじめ番組でも宣伝していたが、遂に入会したことを告白。真偽は定かではないが、番組と並行しながら一般会員としても俳句を詠まれるのかも含め、今後の動向が注目される。
なお、2022年に出版された夏井先生の句集 伊月集『鶴』の中に梅沢富美男を題材とした句「梅沢富美男劇団本日は虫干(むしぼし)」が掲載。本人は喜んで句集を宣伝した。
2022年5月に浜田が濃厚接触で自宅待機となった際、代理MCを独特の梅沢節で務め、俳句はボツ査定となったため、屈辱のシュレッダーボタンを自ら押した。
2022年9月のふるさと戦で県内観光PRポスターの俳句掲載を懸けて「写真俳句」に挑戦したが、福島県出身ながら優勝できず、福島編は第1弾ふるさと戦の放送では唯一地元以外の出身者に戴冠を譲ってしまった。
50句の句集完成間近となると、完成を機に番組を卒業する旨の発言を毎回のようにしていたが、2023年2月の放送で子どもからの応援の手紙などが多いことを理由に番組卒業発言を撤回している。
2022年10月に48句目・12月に49句目の掲載決定となり、50句の句集完成に向けて秒読み段階に入ってからも、4回連続ボツという混沌となる展開だったが、2023年3月の春光戦前の査定で遂に30回目となる掲載決定を勝ち取り、永世名人認定から78回の査定・150週の月日を経て、遂に50句の句集が完成した。
梅沢富美男『句集 一人十色』(いちにんといろ/本体1,400円+税/ヨシモトブックス発行/ワニブックス出版)は50句の掲載決定の放送翌日から予約開始となり、2023年4月7日に発売となった。
※本人は方便のつもりで言った可能性は高く「裏番組」が具体的に何を指すか明言を避けているが、TOKYO MX「バラいろダンディ」木曜(毎週21:00~)にレギュラー出演しており、SP編成では時間帯が重なることがあるため(第2回金秋戦)、そのことを意識した可能性がある。また、日本テレビ系「ぐるぐるナインティナイン」や「秘密のケンミンショー」で出演が重なる時間帯も過去にあった(提供情報)。
◆以下は101句目からの掲載となります。初期の俳句は
梅沢富美男の全俳句一覧①を参照してください。
●[101] @20/06/11◆お題:
100円ショップ『シンクの西日カップ焼きそばの「ボコン」』永世名人19句で掲載
ボツ添削後
『湯捨つれば西日のシンク鳴る「ボコン」』
季語は「西日」。事務所の近くに100円ショップでカップ麺が売られていたのを見て、苦労した過去を思い出した本人。17歳の頃は貧乏な一人暮らしで、カップ焼きそばを作り、お湯をシンクに捨てた時に「ボコン」とステンレスの音が鳴る点に注目し、自分の体験談を俳句にしたと語った。才能アリの山之内すずは、「”ボコン”が何かの名前なのかと思った」と物怖じせずに問題点を指摘し、凡人査定の松原智恵子は「分からない」と率直に述べる。結果は4度目のボツ。「不要な言葉がある」と評す先生は、字面通りに解釈すると「ボコン」という名前のカップ焼きそばかと思うと山之内に賛同。本人の意図通りに、昔のアパートのシンクも想起されるが、「シンク」「ボコン」の字面が離れたため誤解を招きやすいと指摘する。「本人はいい加減に作った」と詰めの甘さを叱責し、「西日」以外の名詞が多いため、季語の比重が沈むと続ける。中七は諦めるべきで、シンクが「ボコン」と鳴ったと伝わるように湯を捨てる行為を書くべきだと添削を行う。喚き叫ぶ本人に、「全国のお子さんの期待を裏切らないように勉強し直しなさい。直せば良い句だが、本人の句は句集に載せない方が良い。全国の子ども達のために」と駄目を押した。
●[102] @20/07/02◆お題:
ペットボトルのお茶『藻の花やペットボトルにさやさやと』永世名人19句で掲載
ボツ添削後
『ペットボトル冷えて藻の花さやさやと』
季語「藻の花」は綺麗な小川や湖沼の流れの中に咲く淡水藻の花のこと。仕事で寄った米原の街道筋での光景を詠んだという本人。水生植物が生える川には綺麗な水が流れていたが、お土産に西瓜を売っているような川辺で、ペットボトルが冷やされているのを思い出したと語った。シュレッダーが嫌だと語るようにみちょぱに媚を売るほどだったが、5度目のボツに。「ちゃんと冷やせ!」と評す先生は、季語「藻の花」を「や」で強調したことで、川や泉などの水辺を読み手は思い浮かべるが、「ペットボトル」が次に出た瞬間に、何割の人がペットボトルの飲み物を川の水で冷やしている光景だと思うかという誤読の可能性を問題点に挙げる。ペットボトルがゴミのように藻の花に流れ着いたと読む人も一定数いるため、「冷えて」の情報を入れるべきだとダメ出しし、河辺の映像を明確にし、小さな時間が生むように添削し、「さやさやと」が活きてくると解説。いつものように反論する本人に「ちゃんとしましょう。子どもたちの期待を裏切らないように励むべき」と忠告した。
●[103] @20/07/09◆お題:
サンダル『水玉の模様クロックスの日焼』永世名人20句目に
掲載決定
添削なし
季語は「日焼」。兼題写真に写るクロックスを便所草履に喩え、見たことも履いたこともないため作句に困ったと大袈裟な本人。自身の娘が母と談話した内容から、クロックスのサンダルを履いた足に水玉模様の日焼けをした様子を詠んだと語る自信作。「語順の勝利」と評す先生は、読み進めると色が変化する展開を称賛する。「水玉の模様」で水色・青など涼やかな生地を思う読者がほとんどだが、「クロックスの日焼」で穴の部分で足が日焼けしたと最後に分かると述べる。「水玉」は涼やかな色だが、日焼けした肌の色だと分かり、色が変わる効果を意図的に狙っているのが、読み手に伝わると解説し、「その意味での語順の勝利」とまとめた。遂に20句掲載の大台に乗せてご満悦の本人だが、「早くババっと番組から消えてなくなりましょう!」と浜田に出演の多さをイジられてしまった。
●[104] @20/08/06◆お題:
ポイントカード『行合の空の御朱印めぐりかな』第4回炎帝戦決勝4位(シード権獲得)添削なし
無季。「行合(ゆきあい)の空」は夏と秋が混ざるような頃の空のこと。兼題の実感がなく作句に悩んだという本人。神社などで貰う御朱印がポイントカードみたいに感じ、季節感がハッキリ出る言葉を季語の代わりとする"チャレンジ"だと語った。4位という結果に最初は納得した様子だったが、「私をこんな中途半端な順位に置くなんて。視聴者は他のチャンネルに替えている。お前ら責任取れよ。なっちゃんも考えないと!」と吠えるいつもの展開に。先生は、後半は言葉がキッチリ入っているため、「行合の空」をどう評価するかが大きなポイントだと評す。歳時記に載ってない言葉を入れるチャレンジ精神には敬意を表したいと認めるが、優勝の可能性がある発想ではなく、大体この辺りの順位で終わると突き放す。「口のきき方に気を付けろよ!全国の子どもたちが観てるんだ。泣いてるんだぞ!」と喚く本人に、「泣いても何でも事実は事実。残念でした」と返す。「何か直して1位になるものがあんだろ!」とさらに反論する本人に、「いや、直しても4位、直さなくても4位」と先生は冷静に諭した。
●[105] @20/08/13◆お題:
本棚『読み終へて痣の醒(さ)めゆくごと朝焼』永世名人21句目に
掲載決定
添削なし
季語「朝焼」の時間経過を痣(あざ)の色の比喩で表現した一句。本を一晩中読み、気付くと夜が明けて朝焼けが出ている。痣がパンと赤くなり、紫になり黄色に変化する様子を思い出したと自信満々に語った。「梅沢の句集を読んで死んでいきたい」と言う高齢のファンに「貴方が生きているうちに早く句集を出したい」と応える本人。「やっと新境地を切り開いたかも!」と評す先生は、「とても良かった」と高評価。上五で時間経過をささやかに表現し、意外性のある「痣」が出てきて読み手に疑問を抱かせるが、痣が朝焼の比喩と分かった瞬間のハッとする驚きがあると味わいを語る。比喩に留まらず、読み終わった後の思いや心情も「痣」と響くような感じもあり、非常に瑞々しい感覚だと称賛。「初めて純粋に期待を抱いた」と投げかけた。ご満悦な本人の「タイトル戦なら優勝か?」の質問に、「ダントツの優勝。藤本さんの獲得賞金を半分分けて」と返し、炎帝戦覇者の藤本名人がおどける展開に。2回連続でシュレッダーを回避した。
●[106] @20/08/20◆お題:
カレーライス『ライスカレー匙のすっくと氷水』永世名人21句で掲載
ボツ添削後
『氷水に匙直立すライスカレー』
季語は「氷水」。自身が子どもだった50~60年前の時代は、大衆食堂などで「ライスカレー」を注文すると水が入ったコップが一緒に運ばれるが、コップにはスプーンが差してあり、"すっく"と立っていた。なぜかは知らないが、それを思い出して詠んだと語った。しかし、結果は6度目のボツ。「語順が違う」と評す先生は、語順の判断すらできない本人を最初に叱責。明治から昭和にかけての呼び方である「ライスカレー」で、時代の手触りはあるのは良いと褒め、本人と同じ時代を生きた先生も共感する。しかし、時代背景を知らない若者には「氷水に匙が立っている意図」が伝わらない問題点を挙げ、中七までで多くの読み手は、匙をご飯に入れて掬っている様子だと思うと指摘。明確に書くべきだと忠告する先生に続け、浜田が「"氷水"からいかないと」と語順の正解を述べる。格好つけた表現「すっく」も消され、匙が真っ直ぐ突っ立ってたのかを先生は確認。「それを書くのだよ!」と再び怒りの声を上げ、「直立す」と添削し、最後に「ライスカレー」と最後に光景が広くなるように展開した。シュレッダー演出前にも、イチャモンをつける本人だったが、言葉に詰まる事態に。
●[107] @20/08/27◆お題:
コンビニのホットスナック『レジ横の「本日台風コロッケの日」』永世名人21句で掲載
ボツ添削後
『「本日台風コロッケの日」の暴風雨』
季語は「台風」。コンビニのレジ横にあった「本日台風コロッケの日」の貼り紙をそのまま描写した一句。台風の日にみんなでコロッケを食べる運動がインターネット上の記事で話題となったのを詠んだと語った。「あまりにも芸がない」と評す先生は、昔から台風が来る時には「まず飯を炊け」と言われていたと時代背景を語る。食べ物の準備をする風習が変化し、台風が来るとコンビニでコロッケを買う点に着眼したのは面白いと褒める。しかし、「レジ横の」が説明的でいかにも芸がないと繰り返す。季語「台風」は鍵括弧内の字面の意味合いで季語として弱いため、補強をすべきと指南する先生は、最後に「暴風雨」を加えた。本日が台風である点と、暴風雨の中に買いに来た点を明確にし、季語を補強できていれば天晴れだったと感触を語った。「見た目を書けと先生はよく言ってるじゃん」と負け惜しみの本人だが、「レジ横にあったからと"レジ横"と書く人は3点なのです」と平場最下位となった生見を引き合いに出して本人に忠告。2連続掲載見送りとなった。
●[108] @20/09/03◆お題:
お箸『野分の夜ほぐす卵ののの形』永世名人21句で掲載
ボツ添削後
『野分の夜ほぐす卵に小さき渦』
秋の季語「野分(のわき)」は台風の古名。ファンの人気に応えるべく、子の気持ちになり詠んだ一句。台風の日に料理をする母に、怖がる子が寄り添ってくるが、「の」の形に箸で卵を溶く様子が台風の渦のようだという発想で「富美男ワールド」と語る本人。先生は発想力を褒め、溶き卵を静かにほぐすため「の」の形に見える展開が可愛く、台風と溶き卵ともに渦がある点に気付いた点も素晴らしいと称賛する。しかし、せっかくの発想と季語を活かす点に於いて、一石二鳥を狙って損をしたと評し、2句に切り分けるべきだと忠告。後半を生かす場合「朧夜の」「朝寝して」「桜さく」など柔らかい季語にすべきだとし、前半「野分の夜」を活かすなら可愛くぶらず、しっかりと台風を映像にしないと駄目だと指摘。最後を「小(ち)さき渦」と描写すれば、本人の意図が読み手に伝わり、溶き卵に「小さな台風があるね」と会話する子のニュアンスは想像できると解説した。「俺は納得できないぞ。村上ワールドと言っといて、俺のワールドはどうなってんだ!」とイチャモンをつける本人だが、「2句に分けたら俺のワールドが出てくると親切丁寧に解説した」と先生は反論。中々引き下がらない本人だが、浜田が進行し、村上名人にシュレッダーの赤ボタンを押させる展開に。2回連続で"台風"を詠んだ句はボツ査定と終わった。
●[109] @20/09/10◆お題:
イヤホン『口立てのカセットの声秋彼岸』永世名人21句で掲載
ボツ添削後
『カセットに父の口立て秋彼岸』
季語は「秋彼岸」。「口立て」は芝居の口頭による打ち合わせのことで、幼少期は記録媒体がないため全て口立て稽古だったと語る本人。子役時代は親が教えてくれる台詞を聞いて覚え、自分が役者を目指した若い頃にカセットテープが登場した。親父の稽古を録音して、台詞回しなどを一生懸命勉強した時代を経て、300年に1人の名人といわれるような…と自身を大袈裟に比喩するも、そっけなく「そうですね」と返す浜田。稽古する親父の声が収録されたカセットテープが見つかり、懐かしいなと思って「秋彼岸」を季語にしたと語った。「誰の声かを書け!」と評す先生は、「口立て」を句に取り込むのは非常に良く、演劇の稽古の場面だと分かる言葉の経済効率を称賛する。さらに、季語「秋彼岸」で「声」の主は亡くなっていると想像できる点も褒める。しかし、読み手は声の主が誰なのかと小さな不満を持つと指摘し、師匠か、幻の名人か分からないと述べる。「父」と書くべきであり、お父さんへの尊敬の念が足りないと手厳しく返し、浜田も便乗。「カセットに」と物から始める語順に添削した。演劇をやる親子だと伝わる瞬間に、季語を通じて親子がもう一度繋がるようにすれば、お父さんは泣いて喜ぶと解説した。初の4連続ボツ査定に、浜田からも「シュレッダー富美男」と呼ばれるようになってしまった。
●[110] @20/09/17◆お題:
たまご『秋の灯に透かす卵に命あり』永世名人21句で掲載
ボツ添削後
『電球にかざせる秋の有精卵』
季語は「秋の灯(ひ)」。昔は店の裸電球の近くに売られていた卵。買う時に電球に透かし、有精卵だと中に血管が見える時がある。「この卵にも命があるんだな」と思った思い出を書いたと語った。ジュニア名人に「に」の多用を指摘され、「永世名人の感覚が『に』だ」と苦し紛れな本人。5回連続のボツ査定に「下手な役者が見栄を切っているような句」と評す先生は、ジュニア名人の指摘が大変正しいと褒め、「に」「に」「あり」の叙述が非常に散文的だと本人を叱責。下五「命あり」と見栄切った気持ちは分かるが大変陳腐で品がないと結論付ける。本人の語った「電球」「有精卵」を句に取り込み、「灯」でカッコよくせず「電球」の生身を出すべきだと忠告。動詞も「かざす」として上にあげる動作を出し、「秋」の季語が有精卵の命をクローズアップされる添削をした。「今日は特別版なんだから。少しは俺の事考えたら」と吠える本人だが、「そういう時こそ、実力発揮しないで、なんで下手な見栄切っているのか」と改めて先生は叱責。「違う。浜ちゃんが(夏風邪で)休む前は良いやつ書いたんだから」と言い訳するもボツ通算10回目で、永世名人の底が見えてしまった。
●[111] @20/09/24◆お題:
文房具『暮れてゆく秋の飴色セロテープ』秋の他流試合SP第5試合 9-10で
判定負け添削なし
季語は「秋」。来年改装される自分の事務所のビルから着想。「お掃除しませんか?」とみんなに言われたため、所有物を整理すると、デビュー当時の綺麗な女形の写真が出てきたと自慢げに語る本人。ずっと壁に貼っていたため、セロハンテープが飴色に変色してしまい、「ああ!こういう時があったな」と思いつつ、35年過ぎても第一線にいる自分の素晴らしさを思って詠んだ。志らく名人は、「良い句だと思うが、エピソードを聞くと『ポスター』だと分からない」と注文を付け、「これ、志らく!」と説教する本人と応酬に。敵チームとなる東大王の鈴木光は「本当に素晴らしい。『秋』『飴色』の相性の良さがあり、『秋』は落葉など茶色を連想させ、『飴色』と響き合って凄く素敵な句」だと絶賛する。結果は「封筒の刃痕やボンの月の暈」と詠んだ鈴木光に判定負けを喫し、唯一特待生である北山を大将戦に残しながら余裕で勝利できると語った展開を裏切られたため、チームメイトの横尾名人がブチ切れてしまう。先生は「負けたが良い句」と本人をなだめ、上五の時間経過とともに「秋」がすぐ出るため夕暮れの光景も一緒に出ると描写力を褒める。「秋の飴色」の言葉の響き合いも良く、秋の季節の色と言われた時に、「飴色」がしっくりと溶け込む効果があると解説。たかがセロハンテープだが、色褪せている表現で、「セロテープ」のチープな物で「秋」という大きな季語を描く挑戦は、句集50句に載せてもよいほどの良い句だと結論付けた(※)。負けに納得しない本人は、「四の五の言わないけど。恥ずかしい。リーダーとしてここは負けちゃダメでしょ」と口説くも、「それは私に言うことじゃないでしょ」と先生は冷静に返した。
※のちに22句目の掲載決定句に認定された。
●[112] @20/10/22◆お題:
秋の電車『芒散る雀色時つく列車』永世名人22句で掲載
ボツ添削後
『雀色時を列車や芒散る』
季語「芒(すすき)散る」は、ススキの穂が段々と白くなって散る様子を指す。芝居の言葉と語る「雀色時」は、空が雀の羽の茶色に染まるような夕暮れ時。「もしもこれをボツにしたら『詫びろ~!詫びろ~夏井ー!』」とゲストの市川猿之助が演じた『半沢直樹』の伊佐山部長の台詞にちなんで脅しに懸かる本人。「語順が違う」と評す先生は、句の素材の良さと「雀色時」の言葉の選択に感心し、芝居の言葉と分かると素晴らしいと称賛するが、語順のミスに気付かない本人を非難する。季語の後に「雀」が出ると、ススキに雀が群れていると読み手が誤読する問題点を挙げる。助詞「を」を入れて語順を変え、「雀色時」を最初に持ってくる。夕暮れの空が映り、その時間と空間を列車が走る光景があると思うと、最後にススキのアップで終わり、季語が主役に立つと順番に解説する。ススキを前にして、夕暮れの空と列車の姿が遠景として残ると添削後を味合う先生。査定で6連続ボツに「確かにクラスは上がってますよ。でもね、なっちゃん。私は!俳句を詠むCMを断ってんだよ!」と番組以外の俳句関連のオファーを全て断っていることを暴露する本人だが、虚しく浜田に進行された。
●[113] @20/11/12◆お題:
7時過ぎの時計『火恋し形見の竜頭巻く深夜』第4回金秋戦決勝3位(次回シード権あり)添削なし
季語は「火恋し」。昨年死去した兄貴を思って詠んだ一句。"ローレックス"の高い腕時計を兄貴へプレゼントしたが、「富美男に返してくれないか?俺の形見だと思ってもっててもらいたい」と遺言を授かったこと思い出し、竜頭(りゅうず・腕時計のねじを巻くつまみ)を巻かなければ兄貴の思い出が消えてしまうと深夜に巻いた情景を詠んだ見事な俳句だと自負したが、浜田に"ロレックス"だと誤解を訂正される。3位の順位に不満がる本人だが、先生は「思いが伝わる良い句」と称賛。季語「火恋し」は身近に火が欲しくなる時季を指し、秋の深まりで朝晩が冷えてくる様子だと解説。「形見の竜頭」で時計を表現し、竜頭を「巻く」のは当然の動作だが、敢えて入れることで深夜に一人で偲びつつ巻く様子が分かると味わう。「巻く」の行為は亡き人の時間を動かし続けたい想いがあり、「深夜」もしっとりしており大変良いと終始褒め、50句句集の掲載決定を認めた。本人は「なっちゃん。少しは番組のことも考えろよ。こんなにみんなのレベルが上がったのは誰のせいだと思ってんだ!」と反論するが、先生は「私のおかげ」だと冷静に分析する。本人は「そんな馬鹿な!」と台詞を吐くも優勝は叶わなかった。
※23句目の掲載決定に認められた。
●[114] @20/11/19◆お題:
オセロ『何度目のオセロ薄目のこたつ猫』永世名人24句目に
掲載決定
添削なし
季語は「こたつ猫」は、寒さでかじかんでこたつの中やこたつ布団の上でじっとしている猫。約40年前、姪っ子らとオセロで遊んだが、子どもは勝つまで諦めずに「とんこ爺、もう1回」とせがんでくる。ふとこたつの猫を見ると、「まだやんの?」って顔をして、フニュっと眠そうにしていたのを思い出して書いたと語った。「言葉以上の光景が見える!」と評す先生は「本当に良かった」と褒め称える。「何度目のオセロ」で意味が切れるが、現場の光景がありありと浮かぶ言葉遣いだと解説。何回でも勝つまでせがむ相手に、「やれやれ」と思いながら相手をする大人の表情が見えると続ける。後半の季語を含むカットは、「薄目」が大事だと押さえる。ずっと寝ているくせに「勝った」「負けた」と声がすると薄っすらと目を開けて「まだやってんのか」と思うのか薄っすらと目を閉じる猫の表情まで出ると語り、「今日は褒めましょう」と称賛した。7連続ボツ査定を避けての掲載決定となったが、浜田から「とりあえずボタン押しましょうか」とシュレッダーにかけられそうな展開に本人が戸惑うことに。
●[115] @20/11/26◆お題:
箱根の紅葉『真珠婚妻の手の染み冬紅葉』永世名人24句で掲載
ボツ添削後
『手の染みも愛し紅葉の真珠婚』
季語は「冬紅葉」。結婚30年のお祝いで行った夫婦の初旅行を句材とした一句。「冬紅葉」のように真っ赤なもみじもあれば、紅葉が終わって色がくすむもみじもあるが、可愛い手だった妻の手にもシミが出来、「あ~俺が苦労させたからだな」という想いを詠んだと語った。「150%自信がある」と語るも結果はボツ。「ちゃんと愛を伝えて!」と評す先生は、真珠婚の句を作ろうという殊勝な夫の気持ちは褒めたいと最初に句を詠む姿勢を評価するも、「妻への配慮が足りない」と指摘。ごねる本人に対し、「こういう句を作って"ちょっと機嫌とっとくか"ぐらいの光景が見える」と下心を見抜き、「手の染み」が悪目立ちする語順の問題を挙げる。さらに、「冬紅葉」ではこの後枯れるだけな印象が強い問題点を挙げ、結婚記念日が冬なのかを本人に尋ねる。「10月だよ!」と本人が答えたため、「『冬』いらねえだろよ!」と口悪く消す先生。続けざまに「妻の」とわざわざ書く点もあざといと語り、「真珠婚」で「手の染み」なら大体奥さんのものだと思うはずで、わざと「妻」と書いていい顔しようとしていると意図を読む先生。語順は「手の染み」から始めるべきで、"迷惑かけたな、俺が悪い事したなと愛しく思ってる"なら「それを書くんだよ!」と怒り心頭に忠告する。敢えて「も」を置き、「愛(いと)し」と口先だけでも良いから書くように指南。後半に「紅葉の真珠婚」とすれば、「紅」と真珠の「白」がめでたい紅白な感じで最後にスッと残ると解説し、奥さんが愛されていると分かると総括した。シュレッダー演出後も悪態で反論しようとする本人に、「私は俳句の出来言ってるだけで、後は夫婦で解決して」と冷静に先生は諭した。
●[116] @20/12/03◆お題:
ジーンズ『馬の鼻やわらかきもの雪催い』永世名人24句で掲載
ボツ添削後
『雪催い馬の鼻とはやわらかき』
季語「雪催(もよ)い」は今にも雪が降りそうな空模様。競馬の馬「アイルビーバック」を所有した時の馬の鼻の感触を描写した一句。北海道の牧場の方は必ずジーンズを履いて馬の世話をするが、冬に自分の馬を引くと、たまたま馬の鼻からまっ白な息が出た。馬の鼻は触るとめっちゃ柔らかいと語った。「語順が違う!」と評す先生は、「そろそろ語順考えてから出しても良いのに」とけなす。季語の選択は良く、馬の鼻が思いのほか柔らかいと感じる場面も良いと褒めるが、語順の間違いを批判する。ここで、浜田が「季語からいったら良い」と指摘し、先生も同意。「雪催い」から始めれば、読み手は空を見上げる視点を持ち、次に「馬の鼻」で、非常に近い位置に鼻があり、遠近感ができると添削方針を指南。最後は「とはやわらかき」と置いた。暗い空、冷たい空気に馬の鼻が現れ、馬の白く温かい息が目の前に出て、触る皮膚感があると句の味わいを述べる先生。わざと「やわらかき」の連体形で留めることで、余韻が膨らみ、読者は再度雪催いの空に視線をスッと戻し、季語が主役に立つと解説。シュレッダー演出後、「なっちゃん、役者さんだからこういう語順になっちゃうのね。でも…」と引き下がらない本人へ「ハハハハハ」と思わず先生は苦笑してしまった。
●[117] @20/12/17◆お題:
プレゼント『妻よりと楽屋見舞いの加湿器来』永世名人25句目に
掲載決定
添削なし
季語は「加湿器」(「湯気立」の傍題)。コロナ禍で行われた名古屋の御園座公演での楽屋の情景を詠んだ一句。コロナ禍による密を避けるために、楽屋に自分以外一切来れず、妻が楽屋用の加湿器を送ってくれたため「来(く)」と入れたと語り、「これは深い。今の気持ちをグッと前に出した」と自信ありげに語った。「『と』と『来』が上手い!」と評す先生は、「今の時代を役者と言う立場から切り取った一句」だと押さえ、最大のポイントとなる「来」を良しとするかしないかで評価は変わると解説。加湿器が「届く」「送られる」と書けば意味の上ではスルっと入るが、最後「来」で止める決心があったのではないかと意図を読み、加湿器を擬人化したかのような「来」の踏ん切りが出来たと称賛。「やっぱり永世名人ですね」と実力を認めた。凡人査定に沈んだかまいたち・山内に誇らしげな本人だが、句集まで残り25句と発表されると、「OKになれば、本が出来てこの番組からいなくなります!」と梅沢名人の番組卒業を期待する浜田であった。
●[118] @21/01/07◆お題:
食券機『四日はや雪駄でたぐる駅の蕎麦』永世名人26句目に
掲載決定
添削なし
季語「四日」は1月4日を指す新年の季語。正月のお節料理に飽き、飲食店の蕎麦を食べたいと思い、雪駄履きの普段着で駅に行って蕎麦を食べた(=たぐった)句と語った。「やっと語順が分かってきた!」と評す先生は、季語「四日」を知っていた事実を褒めるも、平場に「『一日』から『四日』までが季語だ」と放った本人の知識自慢を嘘だと指摘し、「七日」までが季語だと訂正する。「雪駄」の足元と「たぐる」の動詞を入れる展開で読み手に一瞬何をたぐるかと思わせ、「駅の蕎麦」で蕎麦をたぐると歩調が合うと語順を称賛。今までの本人なら、「雪駄で駅の蕎麦たぐる」とやったはずだと駄目な例を挙げ、「たぐる」の動作で終わると味や深みがないと解説する。この句の語順は、温かい蕎麦の映像で終わるため、語順が功を奏した句だと語る先生は「この語順がやっと分かったか。長い時間かかりましたね」と窘めながら称賛。見事に連続掲載を決め、2021年を幸先良いスタートを切った。
●[119] @21/01/14◆お題:
輪ゴム『鏡越しロット巻く手や春隣』第4回冬麗戦4位添削後
『ロット巻く手や春近き日の鏡』
季語は「春隣」。女性客も来る理容室で、自分のカット中に隣の席を鏡越しで見ると、女性がパーマをかけていた。その時に理容師が手首に輪ゴムをはめ、ロットに髪を巻きながら、輪ゴムを手早くかけていく。ウェーブの髪型が完成し、女性が喜んだのを見て春が近いことを感じた様子を詠んだと語った。先生は、気持ちの良さに目を付けた着眼点と「鏡」「ロット」「春隣」の3つを取り合わた判断の良さを褒める。さらに、中七「や」が「手」を強調するため、手の動きなども具体的に見える描写力も称える。しかし、「越し」が微かに説明臭いという唯一の欠点を挙げ、語順を変えるよう指南する。「ロット巻く手や」で手元のアップの映像から始め、季語も「春隣」から「春近し」に変更。「春近き日」で広い光景を出し、「鏡」へと着地する添削をする。「鏡」に春の近い光が全部集まり、映像を持たない季語が映像になると解説。「これはおっちゃんの力ならやれたはず」と感触を語ると、本人は「何でそんなに直すの?」と注文を付ける。タイトル戦は今回も中途半端な順位に終わった。
●[120] @21/01/21◆お題:
雪の東京駅②『風花や改札口に眼鏡拭く』永世名人26句で掲載
ボツ添削後
『改札を出て風花に拭く眼鏡』
季語「風花(かざはな)」は青空を舞う雪の切片。半径30cm以内の身近な部分を詠んだチャレンジと意気込む本人。東京駅を出て、雪が眼鏡のレンズについた様子を詠んだ一句。本来下五は「拭く眼鏡」が良いはずだが、私の気持ちは「眼鏡拭く」だと強気のトーンで語った。「出来ているけど普通!」と評す先生は、定石通りに型に入れた句だと押さえるも、作者が行動で見せた語順の方が季語が活きると指南。「改札口」と場所ではなく、「を出て」と動作を示せば、読み手の共感を得やすいと筆を執る。「風花」の後の助詞「に」が大事で、「拭く眼鏡」と着地する添削を行った。納得がいかない本人は「そんなに私が嫌いかい?村上の俳句と大して変わらないじゃないか!」と吠えるも「大して変わってます」と冷静に返す先生。シュレッダー演出後、「なっちゃん、よく聞いとけよ! 俺のプライドをズタズタにしたのはお前だからな!」とブチまける本人に「はい、私です(笑)」とにこやかに認める先生。句集挑戦20回中14回がボツとなり、シュレッダー率は再び7割に乗ることに。
●[121] @21/01/28◆お題:
鏡『あえかなる鏡の色をして冬日』永世名人27句目に
掲載決定
添削なし
季語は「冬日」。「あえかなる」は頼りないほど弱々しい様。破調で詠むチャレンジと語る本人の句は、「冬日」が寒々とした鏡の色のようだと表現した。ジュニア名人は「あえかなる」の表現を褒める。「上手なフリをしていない!」と評す先生は、今までの本人なら「あえかなる鏡の色の冬日かな」と作句し、「かな」のある方が上手っぽく見えていたはずだと指摘し、比較検討をする。敢えて「をして」を選ぶ点に成長の跡が見える点を褒め、「鏡」までで映像が手に入るも、中七「色をして」の展開で「冬日」の比喩に変化していく展開が上手いと称賛。さらに、「かな」は単なる詠嘆だが、「をして」で自分の目に映ったものを淡々と即物的に描写している言葉になると解説し、言葉選びも高評価。安易に「かな」と詠嘆せず、腹を決めた点が評価のポイントだったと総括した。本人は、「夏井先生は私の心まで読んじゃうから。くふふふっ」と上機嫌に掲載決定を喜んだ。
●[122] @21/02/04◆お題:
加湿器『春の雪まだ現役の鯨尺』永世名人28句目に
掲載決定
添削例(添削なしを許容)
『春の雪なお現役の鯨尺』
季語は「春の雪」。自画自賛するほどの句は、和装などの着物で使う物差し「鯨尺」を題材とした。昔、ストーブの上にヤカンがあり、湯気がぽうぽう出ていた時、おふくろが私の衣装を全て縫ってくれたのを思い出して書いたと語った。「少ない言葉でドラマが描けている」と評す先生は、季語「春の雪」と「鯨尺」の出会いが小さなドラマを見せていただいてるかのようだと絶賛。「鯨尺」で和裁用物差しだと一発で分かり、春の雪の降る日に、暖かい部屋で湯気を立てながら着物を縫う光景ではないかと取り合わせで分かると味わう。さらに、「現役」も母が使っていたものを、今自分が引き継いで使っているかもしれないと読み解ける使い方で、大変経済効率の良い言葉を持ってきたと褒めちぎる。「まだ」も意味の上では大事だが、微妙なニュアンスが気になる先生は「なお」を提案する。「まだ」は"少し足りない"的なニュアンスが少し強いため、活字にする時は「なお」に改めても良いと指南し、「とても良い光景を気持ちよく書いている」と終始褒め称えた。本人は「『なお』にさせていただきます。お師匠さんですから。私は弟子ですから」とご満悦ながら提案をあっさり受け入れた。
●[123] @21/02/11◆お題:
焼肉『〆に出るオモニ自慢の干鱈汁』永世名人28句で掲載
ボツ添削後
『酒足りてあとはオモニの干鱈汁』
季語は「干鱈」。行きつけの韓国料理店「ミセス韓(ハン)」のオモニ(母)が、酒を飲んだ後の自分に干鱈汁を毎度持ってきてくれるという場面を詠んだと語った。「説明はうんざり!」と評す先生は、美味しそうで人間関係も見えるため、句材は良いと褒めるが、上五が説明的で、シメに出るのが干鱈汁だと説明していると指摘する。「おっちゃんの説明はいい加減にしてくれと再三言ってるが、また悪い癖が出た」と批判すると、本人は「何?スープ先に飲む客もいるんだよ!」と即座に反論。先生は「〆に出る」を消した後、「自慢」も説明的だと続ける。美味しいに違いないと書くのが愛情というものだと非難し、梅沢名人の性格を理解している先生は、。「酒足りて」と状況の言葉を置いた。「あとは」を加えると、「あらいい!」と感心する本人。「あとは」で、毎回楽しみにしている干鱈汁を酒の最後にオモニは嬉しそうな顔で注文せずとも持ってくると想像できると味わいを語り、「これくらいやってから文句を言って」と牽制した。シュレッダー演出後、世界中からお手紙を貰っていると悪あがきに走る本人に、「世界中ったって、アメリカだけでしょ」と先生に冷静に返した。
●[124] @21/03/04◆お題:
ドライヤー『トリミング終えて仔犬の腹や春』永世名人29句目に
掲載決定
添削なし
季語「春」と飼い犬の夢ちゃんのトリミング後の腹を取り合わせた一句。トリミングしてくるとパパさんのところに行って、お腹を出して「抱っこ抱っこ」を要求するが、トリミングした後のとても良い匂いがすると、春がそろそろ来るんだな~という感じがしたと語った。「『や』の使い方が巧い!」と評す先生は、兼題からの発想を褒める。一番褒めるべきが下五「や」で、すぐ上の「腹」を強調・詠嘆する効果があると前置き。「トリミング」の伏線によって、「腹」がどんな感じかを描写せずとも、気持ちよさそうで清潔そうな良い匂いがするに違いないことが分かると解説。「や」がこの位置に来ることで、強調・詠嘆はしているが、結果論「春」という大きな季語を一緒に詠嘆する作りになったと述べ、「毎回こういうの出してくれたら私は苦労しなくて済む」と本人に忠告した。本人は最下位となった芸人・ニューヨークに「お前ら幸せだぞ。こんな視聴率高い回に出てきて」と吐き捨て、「これは盛り上がりましたよ」と掲載決定を喜んだ。
●[125] @21/03/18◆お題:
家電量販店『留守の間をルンバ操る仔猫かな』永世名人29句で掲載
ボツ添削後
『留守番の仔猫ルンバに乗りたがる』
季語は「仔猫」。手紙を沢山もらっているため、子ども人気にあやかったと語る本人の一句は、お掃除ロボット「ルンバ」に乗る仔猫のYouTube動画を題材とした。留守番中の猫がルンバに乗って操っているんではないかと語ったが、「『かな』がなっちゃん嫌いなの」と不安げに述べる。久々のボツ査定に「擬人化がクサい」と評す先生は、仔猫の可愛い場面を描こうとした意図を褒める。問題点は「かな」が良いのかどうか以上に、動詞の「操る」だと指摘。「おっちゃんは擬人化したら何かやった気になる」と本人の性格を質す先生。擬人化せず、仔猫の様子を描写するだけで十分だと述べ、擬人化は軽やかにすべきだと筆を執る。「留守番の」から始め、「仔猫ルンバに」と続けて仔猫の映像化。自解で述べた「乗りたがっている」を「乗りたがる」として下五に入れ「かな」を消した。可愛い小さな動画を思わす添削を行った先生は、「お子さんにこんな感じで出せば、もっともっと人気が出るんじゃないですか」と忠告するが、本人が反論したため、先生は早くシュレッダーにかける演出を懇願。初めてシュレッダー演出を眼前とする東国原名人に「バックで映る画ってすんごい綺麗」と言われるが、本人は「子どもが泣いてるぞ」と捨て台詞を吐いた。
●[126] @21/03/25◆お題:
じゃんけん『「最初はグー」聞こゆ志村忌春の星』第5回春光戦決勝3位(次回シード権あり)添削なし
季語は「春の星」。3月29日に一周忌を迎える志村けんの追悼句。「最初はグー」は志村けんが流行らせたが、みんなに愛されていつかは志村忌になるのではないか。志村けんは生まれた時も亡くなった時も春のため、星になっていった様子を詠んだと語った。同じく追悼句を詠んだ東国原名人は、自分の句より映像が明確だと褒める。先生は両名人が発想で被ったことに仰天するも、「穏やかに自分の思いが伝わる句」だと褒める。動詞「聞こゆ」がいるのかどうかが最大の問題で、俳句では書かないのが定石だが、追悼句のため「まさにその声が今聞こえてきたような気がする」の意図を感じるため、消すのは違うと思うと感触を語る。「聞こゆ」「志村忌」「春の星」と三段切れとなるが、忌日の句でありながら明るく軽やかなリズムを作り、その明るさに志村さんの業績・人生をくっつけて一句に表現した工夫を称賛。死去一年のため、「志村(けん)忌」が春の季節感を持った忌日の季語だと気づく人はまだ多くないが、春の季節感を味わう日が来るまでにこのような忌日表現と別の季語を入れる句が必ず詠まれ、その行為は大事なことだと述べる先生。タイトル戦は今回も優勝ならずだったが、「老兵は去るのみですよ。ただのジジイ」と本人はすねてしまった。
●[127] @21/04/08◆お題:
あくび『やわやわと陽のあくび巻く春キャベツ』永世名人29句で掲載
ボツ添削後
『おひさまのあくびを巻いて春キャベツ』
季語は「春キャベツ」。三浦半島で春キャベツを見てきた経験をもとに、ふわっとあくびしているような感触でキャベツの葉が緩やかに巻く様子を詠んだという一句。「そろそろ季語を信じてほしい」と評す先生は「なんで季語を信じるということを知らない男なのだろう」と叱責するが、中七で表現した太陽のあくびを巻いたかのような春キャベツの発想を褒める。しかし、上五「やわやわと」のオノマトペがあるため中七の調べが窮屈になり、調べが内容と似合わない句だと評す。「春キャベツ」の季語に「やわやわ」との感触が含まれると解説すると、敢えて入れたと本人は猛反論するが、「黙れ!」と先生は一喝し、上五を消してゆったりとした調べにするよう指南する。「おひさまの」と柔らかく平仮名にし、「あくびを巻いて春キャベツ」と添削して調べを整えた。「もうそろそろ分かろうよ、季語を信じようよ!」と再び先生は忠告するが、「しょうがないじゃん!」とやけくそになってキレる本人。シュレッダー演出後にも、平場出演者の石野真子にあやかり「真子ちゃんが一緒に出てんだよ。私と一緒に明治座でお客さん満杯にした芝居してるんだよ」と捨て台詞を吐いた。
●[128] @21/04/15◆お題:
リュック『飯盒を逆さにしばし揚げ雲雀』永世名人29句で掲載
ボツ添削後
『飯盒を逆さに蒸らし揚げ雲雀』
季語は「揚げ雲雀(ひばり)」。兼題からキャンプへ発想。飯盒(はんごう)の御飯を蒸す時に逆さにし、ふと空を見たら雲雀が飛んでいて、「あ~長閑だな~」という光景を詠んだと語った一句。「配慮が足りない!」と評す先生は、ほんの小さな1点が勿体なく、良い所でもあるが、配慮が少し足りない所でもあると解説を始める。作者の世代では飯盒を逆さにして蒸らしていたが、今どきはそうしないことも多く、「逆さにしばし」の動作の意味が分からない若い世代もいる点を指摘する。中七「しばし」を動作を表す「蒸らし」に添削した。「蒸らす」なら「しばし」の時間のニュアンスを含むため、これなら名句だったと本人に忠告。納得しない本人は、「なっちゃん!よくそんなこと言うな!この番組は全部の人にっていうことでなくてさ!」と怒り心頭になり、ネクタイを首から緩めてケンカ腰になる。しかし、シュレッダー演出後に意気消沈することに。
●[129] @21/04/22◆お題:
ボトルガム『球春やベンチ入りするボトルガム』永世名人29句で掲載
ボツ添削後
『球春やベンチの端にボトルガム』
『球春やベンチの端のボトルガム』
季語「球春」はプロ野球などが始まる春の時期のこと。大リーガーや日本のプロ野球で、ベンチにいる選手らがガムをクチャクチャ噛む動作を見て「ボトルガムもベンチ入りしたんだな」と思う俳句だと語った。自信とは裏腹に4連続ボツ査定に。「臭い!」と評す先生は、ベンチにボトルガムという句材だけで、俳句になる材料が揃うと褒めるも、中七の擬人化が臭いと指摘。「おっちゃんは擬人化をやると何かやった気になる」とダメ出しし、淡々と描写すべきだと忠告する。「ベンチの端」に置いてあった光景を描き、この後の助詞の展開で「に」「の」の二例を挙げてニュアンスの違いを解説する。場所を示す「に」は、"こんな所にボトルガムが置いてある"という小さな発見を言える一方、「の」だと球場から奥のベンチへとカメラの視点が絞られ、ボトルガムが見えてくる効果があると語る。どちらを選ぶかは作者が決めるべきタイプの句で、添削例なら本当に面白い句だと評した。本人は「役者に『臭い』って言うな!」と吐き捨て、夏井先生が選者を務める投句サイト「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」を宣伝したことで媚を売ろうとするも、時すでに遅し。シュレッダー演出後に黙ってしまい、藤本名人にも「4連敗ですか。うわあ~、臭いですね」と笑って返された。
●[130] @21/04/29◆お題:
分別タイプのゴミ箱『春愁をくしゃと丸めて可燃ごみ』永世名人30句目に
掲載決定
添削なし
季語は「春愁」。春の嫌なことは「くしゃ」とくしゃみにして丸めてごみに捨てましょうという句だと端的に語った。「詩の言葉に出来ている!」と評す先生自身も「春愁を丸める」発想の句を作ったことがあることを告白。この句は「可燃ごみ」という展開が面白く、詩になりにくい言葉を詩と成立させた発想を先生は絶賛し、丸められないものを丸める発想の切り口・パターンを上手く活かしたと解説。可燃ごみにして「捨てる」まで今までなら書いていたはずだが、それが要らないとだいぶ体で理解したのが分かると褒め、成長を認めた。過去のシュレッダー演出の紙吹雪が本人の胸像として再利用されていることが判明した回だったが、本人は上機嫌で「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」にも入会したことを宣言した。
●[131] @21/05/06◆お題:
昼寝『縦横に斜めに子らの昼寝かな』永世名人30句で掲載
ボツ添削後
『子ら三人昼寝縦横斜め逆』
『園児らの昼寝縦横斜め逆』
季語は「昼寝」。自身の3人の子が幼少の頃、時計の針のようにあっちこっちと無造作な寝方で昼寝をする光景を詠んだ一句。「大切な情報が足りていない」と評す先生は発想と語順を褒め、「縦横斜め」の表現に加え、最後に種明かしをする企みも十分理解できると評す。しかし、この発想の面白さを俳句に活かすには、「子ら」が何人かなど付加情報を入れるべきと提案。「子ら三人」から始め、「昼寝縦横斜め逆」と語順を展開させる。また、上五を「園児らの」とすれば、園の先生がクスっと笑う光景も出ると添削例を挙げ、浜田も「こっちの方がいいですね!」と同調。「永世名人ならこれくらいやれるのでは」と批評される始末で、シュレッダー演出後に「そんなに私が憎いかい? 村上と一緒に落ちていく私がそんなに面白いか?」と負け犬の遠吠えを本人は放った。
●[132] @21/05/13◆お題:
シューズ売り場『帰国の日アガシの白いハイヒール』永世名人30句で掲載
ボツ添削後
『帰国の日アガシの白靴の悲し』
『帰国の日アガシの白靴の眩し』
季語は「白靴」だが、本人の意図で「ハイヒール」を用いた。「アガシ」は韓国語で「お嬢さん」の意味。若い時にソウルに遊びに行き、たまたまデパートの女の子と付き合うチャンスがあったが、最後にプレゼントした靴が韓国ではお別れの印で彼女に泣かれてしまった。自分が日本に帰る際、泣きながらそのハイヒールを履いて見送りに来てくれた思い出を詠んだと語った。「想いが足りない」と評す先生は、ドラマを描くチャレンジを良しと認め、「白いハイヒール」が季語と捉えられる問題も確かにあると指摘する。最大の問題が、帰国が晴れやかなものか、切ないものかというヒントが書かれていない点だと指摘。本人の悲恋話に驚く先生は、最大の意図である「ハイヒール」を捨て、「白靴」へと添削し、残った音数で季語を描写することを指南する。悲恋物語なら「悲し」とストレートに感情語を乗っけても良く、晴れやかな帰国なら「眩し」などとでき、3音を無視すべきでないと本人に忠告した。沖縄の大型台風来襲を懸念して帰る際の那覇空港で、当時のニュース映像に浮気相手と共に映ってしまった本人の苦いエピソードも俳句にするように浜田から促されるが、本人はいやいや拒否。不調が続くシュレッダー演出となった。
●[133] @21/05/20◆お題:
ケーキ『夏立ちぬバタークリーム強情で』永世名人31句目に
掲載決定
添削なし
季語は「夏立つ」。「強情で」の部分に、バタークリームと昭和の男を重ね合わせたと語る一句。自分の世代のケーキはバタークリームが主流で、冷蔵庫に入れるとカッチンカッチンに固くなり、昭和の男と同じように「バタークリームも強情だな」というのを詠んだと語った。「言葉が出てこない」と自信のなさを打ち出したが、掲載決定で掌を返す本人。「やっと擬人化が分かりかけてきた」と評す先生は、擬人化を成功させるポイントを、映像・音・皮膚の感触が表現されているかが大事だと解説する。「強情で」の擬人化により、バタークリームらしい感触が表現され、非常に素直に書かれた点を褒める。夏が来た勢いで、バタークリームの濃厚な舌触りや匂いが一緒に来る感じとなり、生命感が季語と付かず離れずで良いと称賛。"下手に「やってやった」と思わない時の方が良い句が出来る"と感触を述べた。久々の掲載決定となり、昇格を決めたジュニア名人に説教する上機嫌の本人だった。
●[134] @21/05/27◆お題:
コーラ『ナイターの売り子一段飛ばし来る』永世名人32句目に
掲載決定
添削なし
季語は「ナイター」。野球観戦に行くという本人。「いかがですか?」と観覧席を廻る売り子に「おーい!」っと手を挙げただけで、階段を一段飛ばしの勢いで上がって近づいてくる売り子の様子を詠んだ一句。「色々悩んだ結果と信じたい!」と評す先生は、夏の季語「ナイター」から始まる語順を褒め、夜の野球場・観客・歓声・強いライトが季語だけで立ち上がると解説。悩ましいのは下五で、「で」を入れるべきか否かで意見が分かれると述べる。「一段飛ばし"で"来る」が正しい表現だが、「飛ばし」「来る」と小さな断絶により、乱暴・強引と言われても勢いを尊重した方が良いと作者が考え、口語表現にした意図があると判断したと語る。文語表現は「一段飛ばしで来(く)」となるが、臨場感が削がれるため、「作者が熟慮した上で口語にしたに違いないと信じている」と疑いながらも総評を語った。「どうなんですか?」と真意を問う浜田に「その通りです!」とすぐさま返答する本人。しかし、「その顔がどうも信じにくい」と先生は追及し、「顔で判断するな!」とぶちまけて返す本人だった。
●[135] @21/06/10◆お題:
雨宿り『紫陽花の蒼きはぜるや雨しとど』永世名人32句で掲載
ボツ添削後
『紫陽花の蒼きよ雨にはぜる蒼』
季語は「紫陽花」。強い雨が当たった紫陽花がピチャピチャと跳ねている様子を「蒼きはぜる」でイメージしたという一句。「言葉がケンカしている!」と評す先生は、作者の感じ方は良いと前置き。「はぜる」という単語を見つけたおかげで、紫陽花の色彩だけでなく動きが綺麗に出てくる点を強く褒める。しかし、「しとど」と「はぜる」が語感の上でケンカしていると指摘する。「はぜる」はパタパタとした勢いだが、「しとど」は雨・汗・涙でぐっしょりとひどく濡れる様子のため、下五で語感が重くなり、せっかくの言葉の鮮度が落ちてしまったと解説。ここで、平場4位の若槻の句を引用し、「富美男はぴえんだよ!」と悲しい気持ちを表現して笑いをとる本人。「紫陽花の蒼きよ」と軽く色を詠嘆し、「雨にはぜる蒼」と再度色を出して、季語と雨の強弱を出す先生の添削に、思わず本人は「なるほど」とこぼしてしまう。浜田にその反応を突っ込まれたため、いつもの通り反論できない本人だった。
●[136] @21/06/17◆お題:
折り畳み傘『子の傘に透ける窓あり青蛙』永世名人33句目に
掲載決定
添削なし
季語は「青蛙」。自身の住む150坪ほどの小さな家(?)の近くに小学校の通学路があり、登下校する児童の傘にビニル加工された透明な窓があった発見と、その窓から青蛙を覗くように見る好奇心旺盛な子どもの様子を詠んだという一句。童心に戻るように「あっ、青ガエルだ」とお茶目に物真似するが、浜田から厳しく批評される。「伏線がはれている!」と評す先生は、良いところに目を付けたのを褒めたいと高評価。特徴ある今どきの子の傘を映像として描いたが、コンパクトながら確かな表現だと押さえる。「あり」の表現の一見説明的なにおいが伏線となるが、季語「青蛙」が飛び出すかのように活き活きと出る効果を演出し、透ける窓から青蛙を今見つけたと思わせ、作者の思い通りの展開に読み手を引っ張ったと解説。好奇心旺盛な子は、青蛙を傘の窓に乗っけるなど、色々な遊び方も一緒に想像できるとし、確かな俳句で直しはいらないと称賛した。解説後、本人は「夏井先生、あなたの説明は100点満点です!」と平場挑戦者のティモンディ高岸のセリフに便乗するも、浜田から「腹立つから押したろか」とボツ時のシュレッダーボタンを押されそうなヒヤヒヤする展開になった。
●[137] @21/06/24◆お題:
ただ今のお待ち人数『百物語最後の鏡に映る物』永世名人34句目に
掲載決定
添削なし
「百物語」が夏の季語。兼題の番号札で待つ状況が経験がなく、発想を飛ばした御大。「百物語」は数人で100話の怪談話を披露する会で、1話終わるごとに100本あるロウソクを1本ずつ消していき、自分の顔を鏡で見るというもの。100話終わると、変なものが映りこむという話があるが、いざ自分が話を披露する順番になり、自分の顔が鏡にどう映るのかわからず、そこから転じて人を騙すのは実に簡単だという思いを詠んだと語った。「あえて語らない効果」と評す先生は、百物語の後に何か恐ろしいことが起こるという発想はあり、そのような意味合いの季語だと前置き。「最後の鏡に映る」展開の後が勝負所で、「物」を称賛する先生。自分の顔が映る場合、今までの本人なら「我」や「私」としていたはずだが、「物」とあえて言わないのが大事なポイントで、読み手が恐る恐る鏡を最後にのぞき込み、その人にとって一番恐ろしいものを各自が勝手に想像する効果があり、「喋らなくても伝わるということを学び始めている。もう喋るな!」と激励の言葉を放つ。連続掲載で調子が上がってきた。
●[138] @21/07/01◆お題:
寝坊『永らえて短夜をなほ持て余す』永世名人34句で掲載
ボツ添削後
『巡業の短夜をなほ持て余す』
『逢いみての短夜をなほ持て余す』
季語は「短夜」。自分のことを詠んだという句は、若い時は一晩中寝ることができたが、高齢となった今は夜中にすぐに目が覚めてしまう短い夏の夜だという心境だと語った。「知らないじいさんが作った句だと思った」と評す先生は、一見しみじみと美しく作れていると述べ、一定の評価をする。しかし、作者名が日本中のどんな爺さんでも全く違和感がないとダメだしをする先生は、作者・梅沢富美男のオリジナリティが出ておらず、ただ長く生きている情報のみがあると批評する。日本中の爺さんが当てはまる「永らえて」の5音を消し、梅沢富美男劇団の地方巡業ならば「巡業の」、自称・恋多き男であるならば「逢いみての」で老いらくの恋を意味する添削例を挙げる。本人は「なるほどですよ」と諦め気味に靴下をいらい始め、先生に指摘される羽目に。
●[139] @21/07/08◆お題:
携帯扇風機『南国の果実色してハンディファン』永世名人35句目に
掲載決定
添削なし
季語は「扇風機」。にこるん(=藤田ニコル)と仕事で家電量販店に行った際、ハンディファンが何十種類と店頭に並ぶ光景を見て、「あれ?ここ果物屋さんかい?」と感じるほど色合いが沢山あった思いを詠んだと語った。家電の色を果物と感じる感覚の是非について、平場最下位のおいでやす小田と口論に。「やっと永世名人っぽくなってきた!」と評す先生は、店頭に並ぶ携帯扇風機を見て、南国の果実色と感じ取るところに詩があると褒め、語順も良いと述べる。明るく開放的で豊かな「南国の果実」を、複数の果実と受け取った読者は売り場だと感じるため、複数の映像効果があると解説。最も良いのが「南国の果実」で物かと思うと「色して」で比喩につながる点だとし、果実ではなく「ハンディファン」が出ることで、自然と人工物との落差・対比もさりげないと称賛。さらに「携帯扇風機」では音数や字面が窮屈になるが、片仮名表記の軽い感じが内容に似合い、表記もきちんと心を使っていると終始褒めちぎり、「やっと永世名人らしくなった!」とエールを送る。本人は、「小田を怒って!永世名人を馬鹿にしたんだ、コイツ!」と喧嘩を売る小田を叱るように進言し、先生は淡々と「コラ!コラ!」と雑に𠮟りつけた。
●[140] @21/07/15◆お題:
夏野菜カレー『玉葱を刻む光の微塵まで』永世名人36句目に
掲載決定
添削なし
季語「玉葱」の描写に焦点を絞った。玉葱をみじん切りに刻むと白い玉葱の粒が綺麗にピカ~っと光っている様子がまるで宝石のように感じたと語った。同じく玉葱句で掲載を決めていた東国原名人は「『光の微塵』の表現が詩的で、梅沢さんの能力を超えた言葉」だと褒めながらも揶揄し、「僕はお子様に向けてます」と語る本人と応酬。「観察眼と描写力!」と評す先生は、東国原名人と同じ季語に仰天するも、アプローチが違う点を前置き。季語だけで17音を構成する「一物仕立て」は、観察・発見・描写のそれぞれの精度が重要で、実力がないと出来ないと解説する。「光の微塵まで」の表現が詩になり、みじん切りにより細かくなった玉葱の透明感を増したところに光が照り込み、まるで光をみじん切りにしているかのような気持ちになると味わう。オリジナリティとリアリティを持っている点を絶賛し、「とても満足のいく勝負、回だったと思う」と総評。さらに、「二階堂さんはおっちゃんの弟子になるべき。基礎を学ぶべき」と平場最下位の二階堂へ忠告。しかし、二階堂は「東さんの方がカッコいい」と語り、梅沢名人がキレだす展開に。
●[141] @21/07/22◆お題:
Tシャツ『若夏やTシャツという戦闘服』第5回炎帝戦6位(60名中)添削後
『若夏やTシャツ一枚の闘い』
「若夏」は沖縄方面の季語。自分が若い頃はTシャツと短パンしか夏に着るものがなく、どの店でもこの格好では門前払いをされていたと語る御大。貧乏のため、いつまでも俺はこれで若い時は戦闘服だと思っていたという気持ちを込めたと語った。藤本名人は昔の時代を知らないため、渋谷でナンパするチャラ男ではないかと指摘し、本人と口論に。先生は、「戦闘服」の言い方に類想感があり、理屈・説明の匂いがするが、「若夏」で沖縄をイメージさせるため、下五の「戦闘」に別の思いを持っている方向性の句だと理解したと語る。しかし、若い頃にTシャツ1枚で生きることと闘っていた意味合いならば、「戦闘」をばらした方が作者の意図に近いはずだと指摘し、添削を行う。理屈の「という」を消し、「Tシャツ1枚の闘い」と誤読を避けて具体的に描写し、作者のイメージに言葉が寄せた。納得しない本人はいつものように字を消したことに抗議するも、3年ぶりのタイトル戦制覇は今回も叶わず不本意な成績に終わった。
●[142] @21/08/05◆お題:
ソフトクリーム『ババヘラの器用に咲かせ砂日傘』永世名人36句で掲載
ボツ添削後
『パラソルが派手でババヘラアイス婆』
季語は「砂日傘」。「ババヘラ(アイス)」は主に秋田県の町中で中高年女性が露店販売し、花のように盛り付けてくれるアイスクリーム。ファンだと語る本人だが、その販売所の日よけにビーチパラソルがある光景を詠んだ。「砂日傘でいいのか?」と評す先生は、問題点を2点挙げる。まず、「ババヘラ」の単語を調べて意味が分かったと前置きし、読み手に理解しやすいように「アイス」と書くべきだと忠告。さらに「砂日傘」の本意は海水浴場の砂浜に差して日陰を確保するもので、移動販売する意図であれば「砂」の一字が問題で、読み手を妙な場所に連れて行くと指摘。「傘」が差してあったと語る御大と応酬する先生は冷静に本人を諭す。「ババヘラアイス」が面白いリズムの言葉のため、「ちゃんとした句を作って流行らせれば、ここのおばちゃんたちの儲けが上がる」と先生は大幅に添削を行う。大きい傘を「パラソル」とし、目立つ意図を「派手」に変更。「ババヘラアイス」の後、再び「婆(ばば)」と置いて韻を踏み、「これでババヘラアイスを有名にしましょう!」と先生はノリノリになる。キスマイデビュー10周年記念回で、良い所がなかった本人は文句たらたらだが、眼鏡を浜田にド突かれて万事休す。結果的に永世名人以降、一単語しか残らない添削を受ける屈辱を味わった。
●[143] @21/08/12◆お題:
打ち揚げ花火『火を纏う遠州男児筒花火』永世名人36句で掲載
ボツ添削後
『火まみれの遠州男児筒花火』
季語は「筒花火」。職人が手筒花火を持って火花を噴き上げることで有名な静岡県の遠州新居手筒花火を詠んだ一句。筒花火を何か月もかけて各自作るが、それが30秒くらいでワッとなくなるという遠州男児の心意気を詠んだと語った。東国原名人は「言葉の発するエネルギーが良い」と褒めるも結果はボツで、諦め気味にネクタイを外し始める本人。先生は、中七・下五の力強さと、漢字表記による迫力を出す効果を称賛し、「火」から始めた語順も褒める。問題はただ一点で、動詞「纏う」だと指摘。「纏う」は衣類なら「身につける」、苔なら「べったりとくっつく」意味となるが、迫力の点において浮足立ち、全部迫力で押すべきだと忠告。「火まみれの」で火の粉に勢いがついてくるニュアンスへと添削した。ネクタイを締めない本人は「なんで私がボツですか?これがボツですか!?」と怒り狂うが、笑っていた浜田に釣られてしまう。シュレッダー演出後、「よくそんなことができるもんだな、このクソばばあ、ほんとにふざけやがって!えっ?」と捨て台詞を吐くが、結局浜田からおでこにビンタするいつもの展開に。
●[144] @21/08/19◆お題:
蜩『蜩の声かけ流す湯殿かな』永世名人37句目に
掲載決定
添削なし
季語は「蜩(ひぐらし)」。コロナ禍の前の温泉で、風呂に入っていると、「カナカナ」とひぐらしの声が聞こえた。こんないいお風呂に入ってひぐらしの声を聞いて、「あ~ホッとするなぁ」という思い出を書いたと語った。ジュニア名人に「『かけ流す』がひっかかる」、志らく名人に「多くの句集にすでに詠まれた発想」だと指摘され、金切り声を発する本人。先生は、まず中七の見立ての問題を挙げる。「声かけ流す」は蜩の声をかけ流している見立てでありつつ、湯殿でお湯・源泉をかけ流す実景とを掛ける意図を持った句で、見立てに文句を言えないと評価する。詠嘆「かな」は、「自分はそんな風に感じているが、皆さんはどうですか?」と相手に判断を委ねるのが本来のニュアンスだと前置き。「私は湯殿で蜩の声をかけ流しているような、そんな思いがする湯殿ですが、皆さんはどうですか?」という意味となり、「かな」も巧いと称賛する。中七は先生自身好きではないと述べるも、作品として成立しているため、掲載すべきだと語った。ご満悦の本人は、番組卒業ネタを担保に名人らを脅しにかかるが、ジュニア名人は笑いながら承諾する展開に。
●[145] @21/08/26◆お題:
宿題『白秋や漢字ドリルに書く名前』永世名人37句で掲載
ボツ添削後
『漢字ドリルに白秋の我が名記す』
季語は「白秋」。俳句を始めて読めない漢字が多いことに気付き、小中学生向けの色んなドリルを買って勉強したという御大。中卒で学歴がないのが辛く、漢字を勉強した自分のための宿題を表現した句だと語った。村上名人が中七を褒めるも結果はボツ。「ジイさんならジイさんらしく書け」と評す先生は、本人の向学心に胸を打たれたと前置きし、コツコツ勉強する姿勢によって小学生ファンが多いと納得する。「ドリル」で誤魔化さずに、「漢字ドリル」として言葉の勉強を明確に示した点と、「白」を入れて人生の秋を表現した季語の選び方の二点を褒める。しかし、ダメ押しが弱いとし、季語とフレーズがそれぞれ匂わす人物像の違和感を語る。漢字ドリルに名前を書く小学生が、俳句も学習していて「白秋」の季語を選ぶ読みもされかねないと先生は指摘。作者がじいさんなら、そう分かる書き方をすべきだと指南する。「漢字ドリル」のアップから始め、詠嘆は外し、下五を「我が名記(き)す」と添削した。添削後は堂々と代表句と語って良いと進言された本人は納得するも、言葉少なめに拗ねてしまった。
●[146] @21/09/30◆お題:
バッテリー切れ間近(携帯電話の電池残量)『龍淵に潜む充電切れスマホ』第5回金秋戦決勝6位(次回シード権なし)添削後
『真っ黒な液晶画面龍淵に』
季語「龍淵に潜む」は、中国の伝説「龍は春分に天に昇り、秋分に淵に潜む」に由来する秋分の頃の季語。今の携帯電話は夢の世界のような機械で、何でも出てくるのではとビックリすることが多い。充電が切れると画面が暗くなるが、「あれ、龍でも潜んでいるんじゃないか」という期待感を感じ、パッと画面が明るくなって我に返ると「お~」と思い出すようなことを俳句にしたと語った。6位という順位に拗ねてしまうも、先生は説明が凄く良いと褒め、胆力のある思い切った取り合わせと素材の良さを絶賛する。上位にするには、充電が切れた事実を書くのではなく、具体的な映像化を提案する。暗い画面なら「真っ黒な」とし、「液晶画面」に続け、季語は「龍淵に」と縮めた。最後に季語が残れば、画面の奥に龍が潜む様子を思い浮かべやすいと解説し、「おっちゃん、これやってたら今回は1位・2位を争う句だった」と総評を述べた。「恐れ入りました」と納得する本人は、「龍淵に」で成立することを初めて知った事実を明かす。しかし、6位に置かれたことに対し、「視聴率がなくなってるじゃないか、もはや!」と聞き飽きたかのような文句をたらたらと述べ、「俺はもう絶対喋んないからね!」と不貞腐れてしまった。
●[147] @21/10/28◆お題:
待ち合わせ『伝言板くせ字も愛し秋うらら』永世名人37句で掲載
ボツ添削後
『秋麗やくせ字愛しき伝言板』
季語は「秋麗」。携帯電話もない時代、彼女と待ち合わたが来ないため、当時駅にあった伝言板に「喫茶店で待ってるよ」などと書き綴った思い出を詠んだと語った。「少々雑!」と評す先生は「意図と気持ちはよく分かる」と共感し、「伝言板」でノスタルジックな時代が出てくる点を褒める。しかし、「くせ字も」の「も」が散文的で雑だと指摘すると、最後の季語が投げたように置かれた点が気に食わないと批判する。季語は音読みで「秋麗(しゅうれい)や」と詠嘆する展開をすべきだと指南し、「くせ字愛しき伝言板」と添削した。秋の美しい光を季語で見せ、くせ字だけでなく「伝言板」に書いた人自身も愛しい印象が伝わる形にすれば、より本人の意図が伝わると述べた。2か月ぶりに査定を受けた本人は「素晴らしいけど、久しぶりに番組に出たのよ? それをアンタ、グッチャグチャに…」といつもの負け犬の遠吠え。さらに、句集のボツ査定を受けて「なっちゃんが俺の俳句を直した本を出せば良いだろ!」とまくし立てると、ブレザーを脱ぐ仕草まで見せた。シュレッダー演出で抹殺された後、本人は無口になった。
●[148] @21/11/04◆お題:
富士と紅葉『冷ややかや湖畔に肺の晒されて』永世名人38句目に
掲載決定
添削なし
季語は「冷やか」。富士の湖畔に行った際に爽やかな空気に感動したという本人。「今まで吸っていた空気は何て汚れていたんだろう」と思うと、吸っていたものがサーッと入ってきて、肺が勝手に口から飛び出て肺まで綺麗にしてもらうほど爽やかだった感じを思い出したと語った。岩永は季語と「肺」との因果関係が気になると指摘。「余韻も良い!」と評す先生は、秋の季語「冷やか」が皮膚感に訴える季語で、「湖畔」の場所にリアリティを生み、読み手が場面を具体的に想像できると述べる。「肺」という人間の肉体の感じと「冷ややか」の皮膚の感じが響き合い、肺が「晒される」まできて肺が清らかになっていくという意味が否応なく分かると解説する。「晒されて」と言い切らずに余韻を敢えて作ることで、再びその冷ややかな空気を、読み手も一緒にもう一度肺に吸い込むかのような所まで企んでいると称賛した。例によって、紹介したお手紙の子へ歓喜の報告を行うが、腹立つ浜田に危うくシュレッダーのボタンを押されそうな羽目に。
●[149] @21/11/18◆お題:
七味唐辛子『黒七味蕎麦に振り込む義士祭』永世名人39句目に
掲載決定
添削なし
季語は「義士祭」。12月14日の赤穂浪士が討入りする前夜に蕎麦を食べた逸話から発想。「黒七味」は四十七士の一人である原惣右衛門(はらそうえもん)の子息が黒七味を作った所から詠んだと語った。「取り合わせた季語が良い」と評す先生は「おっちゃんはこういう句になると上手い」と褒め、それぞれの単語をなぞる。最後はどの季語を入れてもある程度俳句にはなるが、「義士祭」は思い切ったと挑戦を称賛。黒七味を振って蕎麦を食べていた時、今日は義士祭の日だとふっと心によぎり、そこに季語を認識する心があると解説し、俳句として十分味わえると述べる。「義士祭」は歳時記では春の季語で載ることが多く、東京・高輪(たかなわ)の泉岳寺(せんがくじ)の行事が4月に行われるという理由を述べると、顔面蒼白になる御大。しかし、春の季語でも句の味わいは変わらないため、心配した顔をする必要はないと忠告する。ジュニア名人に「春の季語って分かってました?」と質問されると、「お前はそうやって。えっ? 誰のおかげでこんな立派な人間になれたと思ってんだ?」と質問を棚に上げて強気の本人だった。
●[150] @21/11/25◆お題:
秋の東京駅『ますかけの手にある我の木の葉髪』永世名人39句で掲載
ボツ添削後
『ますかけの手相ぞ我に木の葉髪』
季語「木の葉髪」は、冬にかけて髪が多く抜けることを木の葉が散るのに喩えた語。両手とも「ますかけ線」とよばれる強運の持ち主と称される手相を持つ本人。徳川家康やMC浜田も持ち、一説には「天下を獲る手相」だと自慢げに語る。今まで芸能界にいられたのは"ますかけ線"のお陰だが、年々薄くなる私の髪が心残りだという心境を俳句にしたと語った。村上名人は「ある」「我」が必要か否かを指摘する。「配慮が足りない」と評す先生は、「ますかけ」が「ますかけ線」の手相と分かる人とそうでない人に分かれる点を指摘し、後者が調べたいと思わせる小さな配慮が永世名人には必要だと批評する。本人を咎めながら「手相と書くべき」だと咄嗟に放った浜田の指摘が的中。「手相」を入れるため、村上名人が指摘した「にある」の可否と関連する問題だと先生は続ける。添削は「ますかけの手相ぞ」と偉そうな前半の叙述で強調。カットが切れた後、「我に木の葉髪」で、"そういう我だが、今は木の葉髪の時期であるよ"と謙遜する印象のギャップを出すべきだと指南する。「こうすると、おっちゃん自身が多少奥ゆかしい人にも見える」と忠告した。久々のシュレッダー演出のためか、裁断が細かくなったといちゃもんを付ける本人は「シュレッダーレベルが上がってるんじゃない?」と述べて笑いをとった。
●[151] @21/12/02◆お題:
映画館『名画座のフィルムの傷の雪雑(まじ)り』永世名人39句で掲載
ボツ添削後
『名画座のフィルムに雑ざる雪の傷』
季語は「雪」。昔の映画作品で、フィルムの傷により映像に入る黒い点のようなノイズを「雪雑(まじ)り」と表現し、映画館の外でも降雪する季節感を出した一句。東国原名人は「フィルムの傷のような雪雑じりというごとく(俳句)ですよね」と季語が比喩に扱われた点を指摘し、急に自信がなくなる本人は、ボツ査定で革靴を履き落としてしまう。「雪のリアルをあと少し!」と評す先生は、「名画座」の上手さを褒め、日本各地の街にある古き良き時代の良作を上映する小さな映画館が伝わると語る。「雑り」が惜しいと指摘し、語順を変える提案をする。"傷という名の雪"ではなく、"雪という名の傷"と書いた方が雪の匂いが僅かにプラスされると忠告。「フィルムに」と助詞を変えて展開し、「フィルムに雑ざる雪の傷」と添削した。雪と思えたものが、実は傷だと分かれば雪という実体が少しだけ匂い始めると述べ、これが小さな技術だと評した。東国原名人に続くWシュレッダーとなり、解説中に浜田に蹴られた本人の靴が張本人の手によってシュレッダーの紙吹雪の餌食となってしまった。
●[152] @21/12/09◆お題:
冬の信号待ち『冬ざれや交差点蹴る明け烏』永世名人40句目に
掲載決定
添削なし
季語「冬ざれ」は冬の草木が枯れ、山や海も荒れ果てた様子を指す。朝方、信号機の上にカラスがいるが、青信号に変わるとパッと飛んでいく印象の一句。「明け烏」は、一夜の恋をした男女が朝方に別れる様を指す言葉でもあり、お吉が周囲にねたまれて身投げする「お吉物語」で、お吉が着る明け烏の衣装も色っぽいが、芸者としては縁起が悪いという意味でもあると本人は力説。「そういう色っぽい言葉を知ってるのよ」と自慢げに語った。「時間や情景が鮮明」と評す先生は、時候の季語「冬ざれ」が、見渡す限りの冬の荒れさびたような景色だと前置き。季語を「や」で詠嘆し、寂しく寒く荒れた感じで映像がまだないが、中七以降で映像化した点に言及する。「交差点蹴る」までで多くの読み手は人物の動作だと思うが、「明け烏」が出た瞬間にと「蹴る」主体がカラスの動作・描写であると分かり、アスファルトを蹴る爪の音が聞こえてくると解説。また、「明け方」と分かることで、「冬ざれ」という季語がさらにクローズアップされ、まだ暗い朝の冬ざれだとわかると述べ、「さすがですね~。おっちゃん、こういうのはね。うまいもんだ」と称賛した。ご満悦になる本人は、同じく昇格した皆藤・藤本名人に自身の姿勢を手本とするように述べるも、藤本名人に「わかったて」と冷たく返されてしまった。
●[153] @21/12/16◆お題:
ヒートテック『薄明り杜氏(とうじ)のすする粕の汁』永世名人40句で掲載
ボツ添削後
『杜氏らのすする粕汁明けの星』
「粕汁(かすじる)」は冬の季語。お酒を造る杜氏(とうじ)が薄明かりの寒い所で一生懸命働いているが、粕の汁を飲みながらホッとしている場面だと語った。村上名人は、季語とフレーズとの相性が良いのか首を傾げる。「努力不足!」と評す先生は、表現意図に理解を示すが、下五「粕の汁」という言い方が気に食わないと指摘し、4音の「粕汁」を下五で音数調整するために「粕の汁」にしたと推測したと述べると、図星の表情を見せる本人。先生は窘めるように、4音のまま使う努力をなぜしないのかと忠告する。音数調整は別の部分で出来ると語る先生は、「杜氏らの」の複数形で上五を構成すれば勢いが出ると解説し、「杜氏らのすする粕汁」と手直し。村上名人の指摘通り、最後の「薄明り」がぼんやりしているため、「明けの星」で映像の確保する添削に、本人も「わ~、イイ!」と納得する。夜通しの仕事でしみじみと粕汁をすすりながら「あ、明けの星が今出てきたなと」と味わえる方が断然いいと先生は解説した。いつもの通り、いちゃもんをつけようとする本人だったが、浜田にすぐさま進行されて2021年最後のシュレッダー行きとなった。
●[154] @22/01/06◆お題:
カーテンを開けた瞬間『縫い初めの楽屋朝日は母にさす』永世名人41句目に
掲載決定
添削なし
「縫い初め」が新年の季語。生前のお袋は手先が器用で、自分が演じる女形の衣装を全て縫ってくれたという本人。客から頂戴した生地を母親がタァーッと縫うが、朝日がサッと母親にかかってるのを見て「有り難い」と思った句を詠んだと語った。森口名人は「母への愛と感謝が後半のフレーズに感じられて素晴らしい」、横尾名人は「他人には見えない優しさを言葉で表現するところに梅沢さんの優しさがある」と称賛する。「映像だけで思いを伝えている!」と評す先生は、新年の季語の現場として、オリジナリティ・リアリティが両方ともある点に言及する。「縫い初めの楽屋」で意味の切れ目があるが、舞台の衣装を縫うか手直しする現場があり、「朝日」で夜なべの徹夜の仕事だったのかもしれないと伝わる点を解説。「朝日は」の「は」の強調もよく、まさに「母にさす」感じがある点を褒める。この句は映像しか書かれてないが、母への気持ちが詰まっており、気持ちを言葉で書くのではなく、映像を描くことでその奥にある心情を読み取ってもらうというポイントを語る。「お母さんに堂々と差し上げても良い、佳句」だと評した。しかし、俳句のシュレッダーがバンクシーと同様に価値があると事前に語っていた本人は、「この俳句が1億円ですよ!バンクシー富美男と呼ばれてこの俳句は…」と偉そうに鼓舞して、称賛の雰囲気を台無しにしてしまった。
●[155] @22/01/13◆お題:
人生ゲーム『冬旱地図から消えた村の数』第5回冬麗戦5位(14名中)添削なし
季語「冬旱」は冬に雨が降らず、大地が枯れたようなさま。人生ゲームから故郷の福島と東日本大震災を発想。災害によって、地図から消えていく村が世界中にいくつもある思いを詠んだと語った。東国原名人は中七の説明臭さを指摘。良い句だと前置きする先生は、兼題写真から「地図から消えた村の数」への発想の深さに感心したと述べる。「地図から消えた村」は災害や戦争を想起し、「村」が人が住めなくなった地域・国を示唆していると解説。「数」と名詞止めにしている部分も上手いと褒める。惜しいのは「冬旱」の季語の選択で、「冬旱」によって地図から村が消えたという因果関係が読める点を指摘。季語を変えれば問題は解消されるが、敢えて添削は本人に委ねた。本人は「私が経験したときにはそれ(の季語の気持ち)だったんです」と主張するも、先生は「はい、お疲れさん」とあっさり。今回もタイトル戦は中途半端な順位に終わった。
●[156] @22/03/03◆お題:
おもちゃ屋さんの雛人形『お歯黒のかすかにのぞく雛(ひいな)かな』永世名人41句で掲載
ボツ添削後
『お歯黒のかすかに雛の笑まひけり』
季語は「雛」。昔の既婚女性が歯を黒くした「お歯黒」を、お雛様でもしていることに気づいた発見を表現したと、滔々と述べた一句。志らく名人は「お雛様を見てお歯黒に気が付く気配り」があると称賛する。「また説明してる!」と評す先生は、「このおっちゃんに私は今まで何回『説明をするな』『映像にしろ』と散々言ってきて、まだやるか?」と嗾ける。問題点である「のぞく」を本人が指摘できるまで問いかけ、両者喧嘩腰に。「のぞく」で説明せず、何で覗いているのかを作者の映像で描写すべきだと先生は忠告し、中七を「かすかに雛の」、雛の微笑んだ表情を「笑(え)まひけり」と添削した。「かすか」が雛の笑み、お歯黒の両方の意味を押えると解説し、「これやってたら、夏井先生のお陰って言ってもらってもいいんですけど」と再び嗾ける。しかし、本人は「冗談じゃないよ!ふざけやがって!」と猛反論。先生の句集に「梅沢富美男劇団本日は虫干」が掲載されたため、句集をインスタグラムでも番組でも宣伝した本人が上から目線に「誰がこの本を紹介したと思ってんだ」と強気な姿勢を見せるも、「ありがとう」と先生は冷静に対応。本人にとって今年最初のボツ査定は久々の大バトルとなった。
●[157] @22/03/24◆お題:
セルフレジ『セルフレジだけのコンビニ花曇』永世名人42句目に
掲載決定
添削なし
季語「花曇」は桜が咲く頃の曇りがちな空。セルフレジはやることが難しいため、辛くなって気持ちが落ち込んでいく気分を、決して暗くはないが晴天でもない「花曇」と重ねた一句。東国原名人はセルフレジと季語との取り合わせは正解だが、全体的に簡単だと指摘する。「力を抜く勇気!」と評す先生は、淡々と書いて企みがないのが良いと前置きする。「セルフレジ」「だけのコンビニ」「花曇」で五七五を構成する作りだが、前半が人工物な「セルフレジ」「コンビニ」というカタカナ語に対し、自然の季語とを合わせる遠近感を考えていると評価。「だけの」が大事な部分で、「あ~、全部セルフレジか」というささやかな困惑の気持ちが「花曇」という季語と響き合い、"甘やかで美しい憂鬱"が表現されていると述べる。コンビニで買ったのは花見の弁当や酒かもしれないなどと、季語から読み手に想像させる工夫があると評し、「もうおっちゃん、下手なことしない方が良い!」と称賛した。ボツ査定の東国原名人を突き放す貫録を示した。
●[158] @22/03/31◆お題:
ハプニング『長閑なり細くたなびく湯の放屁』第6回春光戦決勝7位(次回シード権なし)添削後
『長閑なり湯にたなびける放屁の泡』
季語は「長閑」。兼題から、温泉につかった際のおならへ発想。下からお湯が沸いてくるように、出てきたおならも長閑だという感慨に浸るという一句。東国原名人は(雲・煙などが)横へ移動するイメージの「たなびく」を誤用しているとの指摘が的中し、先生も本人を嗾ける。放屁がズルズルと自分の体を伝って横へたなびいている表現意図の可能性もあり、本人のジェスチャーを凝視していた先生は、確実に上に行く手の動きをしたという点を鋭く問い詰める。しかし、放屁の泡が水面を横に「たなびく」用法であれば何とか活かせると忠告し、語順も変えて添削を始める。「湯」を先に入れるべきという浜田の指摘も当たり、「放屁の泡」で着地して映像を押さえた。字余りの感じが泡の空気感になると解説。最後に本人は「横に行こうが縦に行こうが7位は7位だろ!」と変ないちゃもんをつけた。タイトル戦は今回も不本意な成績となった。
●[159] @22/04/14◆お題:
満車の駐車場『日だまりに仔猫の眠るボンネット』永世名人42句で掲載
ボツ添削後
『ふわふわの仔猫の眠るボンネット』
『三匹の仔猫の眠るボンネット』
『お隣の仔猫の眠るボンネット』
季語は「仔猫」。悩まずにすぐに浮かんだ一句。車が3台入る自分の家の駐車場で、ボンネットにふんにゃりと寝た猫を詠んだ。東国原名人は、以前も「仔猫」で詠んだ句があり、句集の掲載句も限られる永世名人なら、季語の使い回しは止めるべきだと本人を諭す。「永世名人らしからぬ不要な言葉!」と評す先生は、これに気づかない時点で永世名人の器ではないと手厳しい。中七・下五のフレーズが良く、仔猫が眠っているボンネットだと明確に描写されている点に触れる。一方で、春の可愛い季語に後半の光景があれば、「日だまり」は言わずもがなだと指摘し、上五を丸々別の描写にするべきだとして、添削例を3例挙げた。東国原名人との直接対決に敗北し、本人はプライドを傷つけられた。
●[160] @22/04/21◆お題:
美容院『髭あたる泡の甘やか目借り時』永世名人43句目に
掲載決定
添削なし
季語「(蛙の)目借時」は春の陽気で眠くなる様子。床屋で髭を剃る際に塗られるクリームから甘い香りがして気持ち良くなり、段々と眠くなる光景を詠んだと語った。村上・ミッツ両名人から「あたる」の表現が伝わりにくいと指摘されるも、本人は舞台人として「剃る」の単語は用いないと反論。「そつがない!」と評す先生は「剃る」意で用いられた「あたる」の用語を最初に解説。江戸っ子が「剃る」のサ行が発音しにくく「する」と言ってしまうと、「する」は博打ですることを連想させて験が悪いため、逆の意味の博打で「あたる」という表現を用いた経緯から、髭を剃ることを「髭をあたる」と表現すると語り、初耳の名人らも感服。「髭あたる」は許容すべき表現であるが、「あたる」「泡」「甘やか」という「ア」の韻を踏む工夫にも一役買い、柔らかい春のうっとりと眠い時季を表現する調べだと称賛した。しかし、先生は最後に小耳に挟んだことを述べる。以前(2020年2月)に同じ
「美容室」の兼題が出された際、「今回2回目だから俺は詠めない」とスタッフに散々愚痴をこぼした本人の言動を暴露。永世名人の俳句に臨む姿勢として、「前に詠んだから次は詠めないなどと口を避けては言ってはならない」と警鐘を鳴らした。本人は「今、こんなところで言う言葉か!?掲載決定でみんなが盛り上がってる時に、よくそんなこと言えるね」と反論するも、「永世名人の心掛けを一言言っただけ」だと先生は窘める。本人は「今のは、編集して…」と笑いを取るも時すでに遅し。夫婦漫才により、本人にとっては後味の悪い形となった。
●[161] @22/04/28◆お題:
ゴールデンウィーク『暁光や桜隠しの五稜郭』永世名人43句で掲載
ボツ添削後
『
桜隠しや暁の五稜郭』
季語「桜隠し」は桜を隠すように降る雪のこと。北海道はゴールデンウィークのあたりに桜が満開になると述べる本人。寒さがぶり返した朝の目覚めに光が差し込んだ時、「あれ?」と見たら桜の花に雪が積もっており、それを函館有数の桜の名所である五稜郭で見れれば「なかなかいいもんだな」と思って詠んだと語った。横尾名人は「お手本のような俳句」、中田名人は「フレーズが綺麗」と両者称賛。ボツ査定に不満げの本人だが、「型の選択ミス」と評す先生が型をおさらい。季語ではない「暁光や」の詠嘆の後、季語を含む12音のフレーズを作る型は、言葉の質量のバランスが取りにくいと前置きする。硬い「暁光」、重い地名の「五稜郭」に挟まれる形で、たおやかで繊細な季語「桜隠し」が沈むと指摘。句またがりの型にすべきだと忠告すると、語順のミスを指摘した浜田が「桜隠し」からだと正解を述べる。先生は七五五の形で「桜隠しや」から「暁(あかつき)の五稜郭」と添削した。永世名人としての力量を問われた本人は「無理だって!」と反論し、「それが出来るくらいならもう卒業してるわ!」と怒り気味に続けるが、先生から「謙虚に学んで、さっさと卒業すべき」と促された。シュレッダー演出後、本人は急に最下位の勝村政信へ八つ当たりするが、名指しされた勝村は「何ですか、この薄らみっともない人は」と見事に言い返した。
●[162] @22/05/05◆お題:
動物図鑑『桜蘂降るハシビロコウ瞬く』永世名人44句目に
掲載決定
添削なし
季語「桜蘂(さくらしべ)降る」は桜の花が散った後に残る蘂が落ちること。桜蘂が落ちると下が絨毯のように赤くなるが、じっと動かない「ハシビロコウ」の目がその瞬間に瞬きをするという句またがりの句だと語った。ジュニア名人は「梅沢さんらしくない。東さん憧れを感じる」と指摘するが、結果は掲載決定。「素晴らしい気づき」と評す先生は、季語「桜蘂降る」がささやかな波動のようなもので、その小さな波動を動かない生き物「ハシビロコウ」がキャッチして一瞬瞬いたのではないかという気づきが詩になると分かるのが俳人だと褒める。動かない「ハシビロコウ」と微かに動く「桜蘂降る」の対比も良いと述べ、嫌味のない上手さだと結論付けた。「時々こういうの見せてくれると、私の血が綺麗になる」と本人を称えた。句集完成まで残り6句に迫った。
●[163] @22/05/12◆お題:
時計『公園の夕焼煮詰まれば帰る』永世名人44句で掲載
ボツ添削後
『夕焼が煮詰まるまではまだ遊ぶ』
季語は「夕焼」。夕方5時に時計が鳴るが、子どもは遊びに夢中でチャイムが鳴ったことを忘れてしまい、夕焼の色が変化して夕暮れになってくる時間まで遊んで帰ったという俳句だと語った。特待生を降ろされた犬山紙子は「夕焼が"煮詰まれば"の表現が上手い」と褒める。「工夫が中途半端!」と評す先生は、「公園の夕焼」で意味の切れ目があり、"公園は夕焼で、私自身の思いが色々考えていて煮詰まったら帰ろうか"という読み方もできる点を指摘する。夕焼の色が煮詰まると表現したかったのであれば、ストレートに書くべきだと忠告。「公園」の場所を書かずに、読み手に思わせるべきだと述べる先生は、「夕焼が」と主格の助詞を入れて主語を明確にし、「煮詰まるまでは」として時間経過を出し、最後に「まだ遊ぶ」として子どものイメージを出す添削をした。本人は声を裏返して「お前さん、いい加減にしなよ!さっきからずっと黙って見てたけど、ほとんど俺の俳句がなくなってるじゃないか!」と赤ペンが多く入っていることに激高するも「消すべきものは消すんです」と先生に論破される。濃厚接触による自宅待機となった浜田に代わり、MCを務めたキスマイ北山にシュレッダーボタンを押された。
●[164] @22/05/19◆お題:
町中華『舌先を花山椒に噛まれけり』永世名人44句で掲載
ボツ添削後
『舌先を噛まれ花山椒ぴりり』
『舌先を噛まれ花山椒かおる』
季語は「花山椒」。数あるスパイスから、花山椒を使った料理に発想を飛ばした一句。花山椒を口に入れた際、何かに舌を噛まれたっていうくらいピリピリとする感覚を詠んだと語った。村上名人に「擬人化が鮮やかではない」と指摘される。濃厚接触による自宅待機をした浜田に代わってMCを務めるも、自らボツ査定を見た瞬間に査定結果を投げ捨てる羽目に。「『けり』じゃない!」と評す先生は、感覚は共感できるも散文の語順で最後に「けり」を付けて俳句っぽくしたと述べる。また、「けり」は"この状況が前からずっとあったのに、今ハッと気づいた"という印象を与える切れ字と解説し、舌先を噛まれていることに気づく反応が遅すぎると指摘する。擬人化を活かすには「舌先を噛まれ」の後に「花山椒ぴりり」と感触を表現すべきと添削。また、噛んだ瞬間に嗅覚に来るなら「かおる」としても良いと別案を述べる。「今日は夜泣きするぞ」と捨て台詞を吐くも、MC梅沢として自らシュレッダーボタンを押した。
●[165] @22/05/26◆お題:
待て(犬の写真)『まろび来る仔犬に夏の陽の香り』永世名人44句で掲載
ボツ添削後
『まろび来る仔犬は夏の藁の香よ』
季語は「夏」で「まろび来る」は転がるように来る様子。帰宅すると愛犬の"夢ちゃん"が「お帰りなちゃい」と言うかのように、転がるように本人へ向かい、抱っこするとお日様に当たった藁のように香る光景を詠んだ一句。ボツ査定に怒り心頭の本人は、「うちの死んだババアと犬の俳句全部ボツにしてんだぞ!」と先生に吐き捨てる。「どっちなの?」と評す先生は、「まろび来る」の表現が仔犬らしく、陽の匂いがする実感の良さを褒める。しかし、季語が「夏」では夏の強烈な匂いなのか、気持ち良い暖かみなのか、汗なのかが曖昧だと指摘し、語った「藁」を書くべきだと忠告する。下五を「藁の香よ」に変えて具体的な表現にするよう指南した。本人は「読み手に『ちょっと考えなさいよ』という高級な俳句とは考えないのか!?」と怒り狂うが、先生は「そんな高級なこと要求している俳句ではない」と冷静に諭す。「どっちなの?」の評が同じだった横尾名人に「さすが師匠」と言われるも、3週連続のボツ査定に意気消沈となる本人だった。
●[166] @22/06/02◆お題:
突然の雨『まず眼鏡次に手のひらすぐ夕立』永世名人44句で掲載
ボツ添削後
『まず眼鏡おでこ手の平あら夕立』
季語「夕立」の降り始めに気づく瞬間の本人の動作に焦点を当てた一句。眼鏡に雫がつき、「あら?雨かな~」とポンと手を広げたら手に雨がトントンとつき、ザーッと本降りになったと語った。4回連続ボツ査定に怒りをこみ上げる本人は自身の靴を投げ捨てる。「説明がクドい!」と評す先生は、夕立に気づくリアリティの良さを強く褒める。しかし、「まず」「次に」「すぐ」と接続詞らに音数を取る必要性に言及し、さらに臨場感を増やすべきだと指南。本人の説明時のジェスチャーで、眼鏡に雨粒がくると上を見る動作に着目し、「おでこ」を中七に挿入。自分で意図を持って確かめる「手の平」も漢字にした方が綺麗だと述べ、「すぐ」を気づいた臨場感を示す「あら」に変えた。臨場感をスプーン1杯分増やすべきとの解説に悔しがる本人は「そんなのは微妙な差じゃねえか!」と吐き捨てるが、「聞き捨てならん!俳句は17音しかなく、そのちょっとした小さなことに命をかける!これが俳句でしょうが!」と窘める先生に苦笑いの本人。シュレッダー演出後、永世名人になったフルポン村上に「お前もこれ味わうんだぞ」とぶちまける本人だった。
●[167] @22/06/09◆お題:
最後の一個『言の葉や追えば消えゆく夏の蝶』永世名人44句で掲載
ボツ添削後
『言の葉や追えば夏蝶風に消ゆ』
『言の葉や追えば揚羽蝶は風に』
『言の葉や追えば黒揚羽は風に』
季語は「夏蝶」。自分のことを詠んだという本人。俳句は最後の言葉で非常に印象が変わるが、句作でなかなか言葉が浮かばず、「夏の蝶」である揚羽蝶も同じく追うといつの間にかいなくなる点を掛けたと語る。句作で共感できるという千賀名人と意気投合する。「ゆるい!」と評す先生は、中七「追えば消えゆく」は「夏蝶」の描写だが、上五で切ったことで全体が言の葉のイメージと軽く触れ合うのを狙っている意図は良いと褒める。一方、「追えば消えゆく」は蝶の描写にありがちな点を問題に挙げる。語順を変えて後半を「夏蝶風に消ゆ」なら綺麗だと提案。さらに、本人の語った「黒揚羽」「揚羽蝶」と具体的に書くことで映像が明確になり、「黒」を怪しい感じに受け取れるという添削例を述べた。「蝶々をいっぱい紹介したかったんだよ!」とぶちまける本人を「アンタ俳句作ってるんだから、夏の蝶紹介するんじゃないんですよ」と冷静に諭す先生。自身2回目となる5回連続ボツ査定に本人はグレてしまった。
●[168] @22/06/16◆お題:
クーポン『赤札のプードルを抱く帰路夕焼』永世名人45句目に
掲載決定
添削なし
季語は「夕焼」で、兼題から値引き後の赤札を発想。保護犬を育てているという本人。ペットショップの犬は大きくなるたびに値段が下がることを可哀そうだと思い、プードルを抱いてうちに帰った内容の句だと語った。犬の俳句で好感度を良くしていると横尾・東国原両名人からツッコまれる。「(狙い通りの一句)」と評す先生は、「赤札のプードル」の場面描写を褒め、特価品の札を生き物である「プードル」につけている意外性と悲哀を思う気持ちがあると解説。さらに、後半の着地も良く、場所・行動・人物が出てきて、「夕焼」が広がっていくと述べる。夕焼は決して明るいものではなく、悲哀をもって「一緒に帰ろうね」という思いで抱いていることが伝わると味わう。夕焼と赤札の種類の異なる「赤」が一句の世界の中でそれぞれ存在感を灯し、それを狙って考えているのはさすがだと称賛した。連続ボツを5で止め、いよいよ句集完成まで5句に迫った。
●[169] @22/06/23◆お題:
ガッツポーズ『バーディで上がるホールや青葉木菟(あおばずく)』永世名人45句で掲載
ボツ添削後
『バーディーで上がる青葉木菟のホール』
季語「青葉木菟(あおばずく)」はフクロウを小さくしたような鳥。素人はゴルフでバーディーを取るのは大変嬉しい事で、ガッツポーズをすると青葉木菟も「ホーホー」と私を歓迎している感じだと語った。「はしゃぎ過ぎ」と評す先生は、言いたいことは良く分かるが季語が置き去りになったと指摘。「バーディーで上がった。やったー!」のはしゃぎ過ぎ感が「や」の詠嘆で強く出ていることをダメ出しする。添削は「バーディーで上がる」の後、「青葉木菟のホール」と句またがりに。俺がバーディで上がれば、青葉木菟が鳴いてくれるようなホールとなれば、俺よりも青葉木菟が少し前に出ると解説し、最後に「謙虚さが必要です」と忠告した。シュレッダー演出中に語順を反省した本人は、最後に負け犬の遠吠えを吐くものの、先生から「何言ってるか分かりません」と言い返され、ジュニア名人からも「冗談富美男の空心菜ですわ」と"冗談ポパイのほうれん草"になぞられて、滑りっぷりを例えられてしまった。
●[170] @22/06/30◆お題:
キッチンカー『祭果て開くや風の通り道』永世名人46句目に
掲載決定
添削なし
季語は「祭」。兼題から若い時に行った祭を発想。祭りの屋台では、焼きそばやトウモロコシを売っていて、人も多くて暑いが、祭りが終了する頃には、さーっと人がいなくなり、爽やかな風が屋台の並ぶ道にも流れる光景を詠んだと語った。「季語の本質を理解している」と評す先生は、3種類の季節の祭りを解説する。「春祭」は田の実りを祈願、「秋祭」は田の実りの感謝する位置づけで、夏の「祭」は悪疫退散の意味合いがあると述べる。夏の祭りが果てると何かが開くが、「や」の詠嘆が良く、悪疫退散・祭の祈祷が終わって風の通り道がスーッとでき、清々しい気持ちの良い清浄な風が動き始めると句を味わう。季語を押さえた上で使っていると総評を述べた。句集完成まで残り4句と迫った。
●[171] @22/07/21◆お題:
メール『月見草文箱の底に出さぬ文』第6回炎帝戦9位(58名中)添削なし
季語は「月見草」。女心を切々と出すのを良しとしないと述べる本人。出せなかった手紙が文箱(ふばこ)の底に残っていた光景と、ポストに手紙を出しきれない淡い心境を、夜に咲いては朝にはしぼむ「月見草」に引っ掛けて詠んだ一句。東国原名人は平凡だと評し、句集でもボツにされるとコメント。先生は「月見草」の季語を選んだことで、恋心を抱くような手紙の内容を想像させ、夜の密やかな感じがあり、手紙を迷って出さないままにあるのも似合うと称賛。しかし、出さない手紙が残っている発想は類想でもあり、「月見草」と取り合わせてどこまでオリジナリティがあるかで損をすると指摘。上位には推しにくいタイプの句だと総評を述べた。本人は「私がパクったって言いたいのかい?」と声を荒げるが、先生は冷静に「直す必要はないんだけど、普通なの」と本人に諭すと、「炎帝戦で『普通』って言うな!」と息巻く本人だった。
●[172] @22/09/22◆お題:
[霞ヶ浦の鉄道]北浦橋梁を走る列車(茨城県)『車窓より鹿島祭りの灯のはるか』ふるさと戦①(茨城)2位★添削後
『車窓いま鹿島祭りの灯のはるか』
季語「鹿島祭り」は、茨城県の鹿島神宮で9月に開催される祭。車窓から鹿島祭りの篝火の灯りがうっすら灯が見える光景と語った。先生は「これも本当に良い句」と評す。車窓から見える灯りに持っていき、最後の「はるか」で遠近感を表現したのが良く、俳句として遜色なく、写真と組み合わせたときも上手く、写真の内側に入って見ることが出来ていると褒める。微量損した点が「より」にあり、臨場感を出すために「いま」と添削すると本人が「はっ…」とため息をつく。1位のポスター掲載を逃したが、先生は「茨城の方は、予算半分にしてこれもポスターにしてほしいくらい見事」だと評した。本人は「"いま"は出てこないな~」と降参した。
●[173] @22/09/22◆お題:
磐梯吾妻レークライン(福島県)『赤べこの背なに揺られて山装ふ』ふるさと戦④(福島)3位★添削後
『赤べこの背なに揺らるるごとく秋』
季語は「山装う」。福島の有名な玩具「赤べこ」は、良い事も悪いことも背負ってくれ、頭をポンと押すとずっと揺れている。バスの一番後ろに乗って、レークラインを走ると、同じように後部座席で揺られており、ふと見ると綺麗な紅葉が見えたなという句だと赤べこの物真似をしながら語った。村上名人は「季語もフレーズも互いに"擬人・擬人"」と鋭く指摘。先生は、書きたいことは伝わってくると褒めるも、中七の「て」が緩い点、比喩が重なる部分が損だと指摘。背中に揺られるかのように山が粧っていくということを本人が言いたいならば、比喩・擬人化が一緒になってお互いに殺し合っていると述べる。動詞を"揺られるかのように"を意味する「揺らるる」とし、「山装う」の映像をそのまま書かずに、写真俳句では写真の美しさを信じるべきだと忠告。「ごとく」で比喩と明確にし、ゆっくりと「秋」が大きく包み込むように添削した。添削後なら2位まで順位が上がっていたと述べるも、地元出身として優勝できず。「俺はもう福島には帰れないからな!」と暴言を吐き捨てた。
●[174] @22/10/06◆お題:
店のオープン『口開けの客は西瓜と連れ立ちて』永世名人47句目に
掲載決定
添削なし
季語は「西瓜」。「口開け」は物事の始まりの意で、その日最初の客を「口開けの客」という。ずっとひいきにしていた人気店があり、行く時に食べ物を持っていく風習がある。店の女将が客から貰った西瓜を切って客に振舞う人情を詠んだと語った。横尾名人は「店と客の関係が分かる」と褒めるも、村上名人は「連れ立ちて」の擬人化が是非だと述べて本人と口論に。「粋な擬人化!」と評す先生は、「は」の助詞を褒めたいと述べる。多数の客のうち、"今日の口開けの客は"のように、指差すような強調のニュアンスに、店側の喜びも見えてくると解説。同伴を意味する複合動詞「連れ立ちて」の擬人化が評価の分かれ目だが、先生は高評価。まるで一緒に同伴してきた人物かのような堂々とした西瓜の様子が見え、切れのない形で終わるため、空白の部分で店の賑わいや店内の会話も聞こえると称賛した。いよいよ、句集完成まで残り3句に迫った。
●[175] @22/10/13◆お題:
大谷翔平『ポケットにゴミ爽涼のユニフォーム』第6回金秋戦決勝7位(シード権なし)添削後
『マウンドのゴミ爽涼のポケットへ』
季語は「爽涼」。大谷選手がホームベースあたりのゴミを拾う仕草が世界で賞賛され、その理由を聞かれた際に「これは運を貰っているんだ」と言ったかのようなことを耳にし、「あ~、なんと爽やかな男だ」との思いを詠んだと僻みながら語った。藤本名人は大谷選手だと分からない、村上名人はゴミを拾う動作を描くべきだとそれぞれ指摘。先生は、エピソードを上手く掬い取り、大谷選手が投球する兼題写真に真っ向から取り組んでいる句だと褒める。勿体ないのは上五「に」で、既にゴミが入っていることになるが、ゴミを拾う瞬間を描くべきだと忠告。「ポケット」「ユニフォーム」に少し情報が重なるため、「ユニフォーム」を諦めて「マウンド」と場所を示すよう指南。「マウンドのゴミ」とし、「爽涼のポケットへ」との添削に、唸る本人。最後の「へ」で動作が出て、添削例なら迷わず1位にしており、「1位をドブに捨てた句はこれです!」と突きつけた。本人は、「昨日今日俳句やった人間にこれが考えつきますか。私の限界なんです」と述べるも、俳句歴は出演者で藤本名人並に長い8年以上。遂には番組卒業を仄めかす発言で大口をたたく羽目となり、後味の悪い結果に。
●[176] @22/10/27◆お題:
セルフのうどん店『秋寒や焦げた天麩羅箸の先』永世名人48句目に
掲載決定
添削なし
季語は「秋寒」。天麩羅を揚げた箸の先が焦げており、それが皿の上にポンと挿してある光景を詠んだと語った。中田名人は、「天麩羅箸の先」に集中したのが、お料理好きの梅沢さんならではだと褒める。先生は、「日頃村上名人に『半径30cmしかお前は出来ない』などと言っているが、『アンタもそうだね』と言いたい」と本人を戒めるが、本人は「それはよく行く店でしたから」と理由を述べる。一句にある映像は使い古した箸のみだが、状況説明ではなく「焦げた天麩羅箸の先」で映像になった点を解説。「焦げた先」と「秋寒」の寒々とした感じが近い気分に受け止める人もいるが、作者は季語を主体性をもって選んでおり、1つの世界が描けていれば認めなければならない挑戦だと述べ、先行句として「秋寒や行く先々は人の家」という小林一茶の句をあげる。寂しい秋が寒いところに、近いながらも味わいがあり、「ここは一茶に免じて認めるべき」と掲載決定を認めた。いよいよ句集完成まであと2句に迫った。
●[177] @22/11/03◆お題:
スーパーマーケットのシャケ『大中小弁当箱に鮭の秋』永世名人48句で掲載
ボツ添削後
『鮭の秋弁当箱の大中小』
季語「鮭の秋」は鮭が川を上っていくことを指す。珍しい季語を歳時記で調べたという本人。料理が得意で、妻と二人の子に作った弁当を思い出し、大中小と異なる大きさの弁当箱が並ぶ光景を詠んだと語った。「可愛らしい感じで素敵」と褒めるは皆藤名人。「助詞『に』のミス!」と評す先生は、兼題写真の難しさを総括する。切り身や具材としての「鮭」で、どこまで季節感を表現するかが難しく、季節感の薄さを弁当箱という素材で表現する際に、「鮭の秋」を持ってきた挑戦を褒める。しかし、「に」が不用意だと一蹴する。「に」では弁当箱に鮭の切り身が入る意味となり、一塊の時候の季語を台無しにすると指摘を続ける。語順も逆にすべきだと述べ、助詞は「に」から「の」に変えた。鮭が美味しくなった季節、弁当に鮭を入れたいと思える取り合わせの句に添削。最後に「なぜこの"に"に気付かないの、あと2句のくせに」と非難した。本人は「あのね、なっちゃん。役者ってのは台詞で生きてるんだ。そうするとその語順…」と必死に弁論するも浜田に遮られ、約5か月ぶりとなるシュレッダーの餌食に。本人は「家庭と母親の句を詠んだら全部ボツなんだ。そんなにウチの家庭が憎いか!」と吐き捨てた。
●[178] @22/11/10◆お題:
ドライブスルー『小さき手のピクルスつまみ出す小春』永世名人48句で掲載
ボツ添削後
『ピクルスはパパに小春のハンバーガー』
季語は「小春」。長女がハンバーガーから嫌いなピクルスをつまみ出し、本人に渡す仕草をしていた思い出を詠んだという一句。自分がピクルスをパッと食べる仕草が面白かったようで、その光景だと語った。「もっとやれるのにつまらん所つついている」と評す先生は、「小さき手」で自分の子だと伝わるも、「手」と「つまむ」で情報が重なる点を指摘する。本人が語った可愛らしい父子のエピソードを描くべきだと叱責し、本人に自分が何と呼ばれているかを問う。「パパ」と本人が答えると、先生は「パパって言ってんの、ははっ」と嘲笑。これにブチ切れた本人が右足の革靴を脱いで投げ捨ててしまう。添削はピクルスの大写しから語順を変えて「ハンバーガー」と展開。最後に先生は「つまらん所をウジウジつつくから、わけわからんことになる」と注意した。「俺の俳句が全部消えてんだよ」と文句を言う本人だが、句集まで残り2句のまま足踏みとなった。
●[179] @22/11/17◆お題:
神宮外苑の銀杏『吾子踏みぬ銀杏落葉の無尽なり』永世名人48句で掲載
ボツ添削後
『銀杏落葉歩きはじめた子に無尽』
季語は「銀杏落葉」。花や葉が好きだった次女が歩道をよちよち歩きしており「危ないな」と思いつつ、ふと銀杏並木を見ると無限に向こうまで銀杏の葉が繋がっており、葉がボンボンと降ってきた印象深い思い出を詠んだと語る一句。「先週に引き続き、大事なことが書いてない!」と評す先生は、せっかく自分の子のことを詠むなら「吾子踏みぬ」で安心せず、年齢など細かい情報を入れるべきだと指南。「よちよち歩き始めた」という本人の話から、「銀杏落葉」の後に子の動作「歩きはじめた」を入れて、「子に無尽」と名詞止めで添削。最後に光景が広がる添削に本人・ジュニア名人が感銘を受ける。最後に先生は「ご自分のお子さんなら、このぐらい心を遣ってあげてほしい」と忠告した。40度目(※正確には42度目)のボツ査定となり、シュレッダーによる紙吹雪を材料に作っていた本人像が完成を迎えることとなった。
●[180] @22/11/24◆お題:
ピザ窯『ピザに焼く上顎の皮雪催』永世名人48句で掲載
ボツ添削後
『ピザに焼く上顎雪催しんしん』
季語は「雪催」。熱いピザを食べるとよく上顎の皮が焼けるように火傷をし、「いや~熱い熱いな」と思いながら、雪が降りそうな空を仰いだ心境を詠んだと語った。キスマイ北山は「あるあるを落とし込むのが上手い」とコメント。「わかりきったことを書くな!」と評す先生は、「ピザに焼く上顎」なら「皮」に決まっているはずで、「の皮」といちいち書く必要性がないことをのっけから牽制。圧倒された本人は「かっ…」と声を出して言葉に詰まる。先生は、この3音を季語の描写に使うべきだと指南し、最後に字余りで「しんしん」のオノマトペとして添削した。残り2句ながら足踏みが続く状況で、子どもから貰ったお手紙を紹介し、"卒業しない"宣言をしていた本人に対し、「卒業したくないからわざとボツをやってるんだ」と先生はまくし立てる。43度目のシュレッダーとなり、せっかく色付けまで完成した梅沢富美男像に追加される紙が増えることとなった。
●[181] @22/12/01◆お題:
カラオケ『榾の宿主十八番の夢芝居』永世名人48句で掲載
ボツ添削後
『榾くべて主十八番は「夢芝居」』
『榾くべて十八番といふを唸り出す』
季語「榾」(ほた)は囲炉裏や竈(かまど)にくべる薪(たきぎ)を指し、『夢芝居』は本人唯一のヒット曲。「榾」を囲炉裏の中にポンポンと折ってくべるが、我々の世代は十八番(おはこ)の歌が「夢芝居」だと豪語した。村上名人は「夢芝居」が良くないと指摘し、『北酒場』が良いと批評。一方のジュニア名人は梅沢句集に「夢芝居」の句が掲載されているのを見たいと述べる。結果は自身3度目となる5回連続ボツ。「画角が緩い」と評す先生は、十八番が「夢芝居」という人物が明確に見えた方が良いと述べ、「宿」と光景を大きくするより、薪をくべている手元や人物が見えるように微調整すべきと指摘。「榾くべて」と動作を書けば、理解しやすいと赤ペンを執る。中七も「主十八番"は"」と強調の助詞に変え、『夢芝居』と曲名に鍵括弧をつけた。さらに先生は、「夢芝居」さえ諦めてくれたら作品の質が上がると切り出すが、これに激高した本人が革靴を脱いで床に叩きつけ、見かねた浜田が革靴をセット裏まで蹴ってしまう。より飄々とした良い句になると述べる先生は、「榾くべて十八番といふを唸り出す」とすれば、囲炉裏にいる主人が十八番と言い張る歌をいきなり唸り出すような、俳諧味を持つ良い句になると解説する。ただ、プライドの強い本人が絶対「夢芝居」を捨てないため、このままボツにすることを推奨した。度重なるシュレッダーにより、第二の像「夏井像」の作成が進行することとなった。
●[182] @22/12/22◆お題:
イルミネーション『冬木立シャンパン色にさざめきぬ』永世名人49句目に
掲載決定
添削なし
季語は「冬木立」。グラスに入れたシャンパンに泡が立ち上がるように、街のイルミネーションの葉までが風で飛んでいく淡い印象を詠んだ一句と語った。村上名人は褒めつつも、「冬木立」だけで夜のイルミネーションだとは感じ取れないと指摘。少し考えた後、「冗談ポパイのほうれん草」と定型コメントを本人は返答。「おっちゃんらしくなくオシャレ!」と評す先生は、村上名人の指摘を認め、冬木立を揺らしていく美しい光や風を「シャンパン色」と表現したと読む人も当然いるが、「冬木立」の冬の光と「シャンパン色」とが詩として良いと称賛。「さざめきぬ」も光と風の表現だと思うと美しく、句集掲載に遜色ない句だと認め、「おっちゃんらしくない本当にオシャレな句だった」と評した。遂に句集完成まで残り1句となるが、本人の卒業が近くなったことが嬉しそうな浜田は、古き良き時代のカックラキン大放送のエンディングテーマを歌って名残惜しさを愛しむ。視聴者のお子さんからメダルを受け取っていた本人は「完成するよ、おっちゃん!頑張ったよ!」とカメラ目線に誇らしげに喜んだ。
●[183] @23/01/12◆お題:
ラッキー『夕の膳二つ「ん」のつく冬至かな』第6回冬麗戦9位(15名中)添削後
『「ん」のつくもの二つ冬至の夕の膳』
季語は「冬至」。冬至に「にんじん」など「ん」が2つ付くものを食べると幸運が訪れると言われる風習を詠んだ一句。先生は、一見謎かけのように見えるが、冬至のカボチャ・南瓜のことだと分かると解説。しかし、スーパーマーケットではポップにも書かれる豆知識で、冬至の風習を俳句にした印象だと指摘。謎かけの意図なら先に「夕の膳」と答えを明かすのではなく、語順を直すべきだと添削を行った。タイトル戦序盤の3人目で名前を呼ばれ、終始拗ねる態度の本人は、句集完成間近ゆえタイトル戦の引退をほのめかした。
●[184] @23/01/19◆お題:
おでん『練り物の蓋持ち上げておでん鍋』永世名人49句で掲載
ボツ添削後
『蓋持ち上げおでんの練り物は膨る』
季語は「おでん」。おでんを鍋で煮ていると、練り物のはんぺんが膨れて蓋を持ち上げる光景を詠んだ一句。直前に永世名人を決めた千原ジュニアは語順のミスを追求。「練り物の蓋」が竹輪で出来た蓋に誤読できると指摘すると、しまった顔になる本人。「また語順」と評す先生は、ジュニアの指摘に賛同し、浜田が述べた「蓋」から始めるべきだと指南。読者の脳にありありと映像が浮かぶ語順にするべきと忠告し、目の前にある「蓋」から始め、「膨る」で着地する語順に添削。最後に「分かった所で普通の句」と本人を牽制した。本人は「来週も来ますよ!」と豪語するも、句集完成を目前に再び足踏みとなった。
●[185] @23/02/09◆お題:
冷蔵庫のメモ『お三時は固めのプリン春の雪』永世名人49句で掲載
ボツ添削後
『甘すぎる固めのプリン春の雪』
『あの頃の固めのプリン春の雪』
季語は「春の雪」。冷蔵庫が無かった少年期の貧乏だった時代、氷を入れて食品を保存する氷棚へ発想した一句。当時は3時のおやつの習慣が無く、現在よりも固いプリンを食べていたが、それが春の雪のように溶けていく光景を詠んだという一句。ジュニア名人は「お三時」で時代背景が分かるのが良いと褒めるも、句集完成に相応しいとは言えない句だとコメント。「安易!」と評す先生は「固めのプリン」と季語「春の雪」の取り合わせは良く、「固め」で古い時代のプリンだと伝わる点を褒める。しかし、3時のおやつを思わせる「お三時」で意味が非常に平たくなるのが勿体なく、この句で句集完成だと慢心する心意気が安易だと批判する。添削ではベタベタに甘かった描写として「甘すぎる」、ストレートに「あの頃の」と上五を二例示した。毎度のように、解説後に負け犬の遠吠えを見せる本人だったが、浜田の右手で収録の終了まで口を抑え込まれる事態となり、シュレッダーボタンをジュニア名人に初めて押される羽目となった。
●[186] @23/02/16◆お題:
つまずく『赤チンの膝の記憶や養花天』永世名人49句で掲載
ボツ添削後
『赤チンとイジメの記憶養花天』
季語「養花天」は桜が咲く頃の曇り空のこと。幼少期に旅役者の子がゆえ移動が多く、周囲の子からいじめや差別を受けた苦い経験へ発想した一句。傷口に赤チンを塗ると膝がカピカピになるが、頑張って「いつかコイツらを見返してやろう」と思って詠んだと語った。横尾名人は「50句目の最後を飾る句として基礎に忠実で良い」、森口名人は「季語の白黒のイメージと赤チンの色の対比が素敵」、特待生に上がった森迫永依は「"赤チン"で作者の世代が上で、"記憶"で年月の経過、季語の着地で人生を表していて素晴らしい」と三者とも称賛する。「本当に言いたい事が欠落している」と評す先生は、「赤チン」「養花天」の取り合わせの丁度よさを褒める。しかし、作者が本当に言いたいのは「膝の赤チン」ではなく、「いじめられた記憶」だと指摘。赤チンを膝小僧につけた世代からすれば「膝」が不要だとダメ出しするが、本人は「肘」「鼻の下」にもつけると反論する。先生は、「赤チン」を塗った場所は読者の想像に委ね、作者の生々しい記憶を書くべきだと指南。片仮名で「イジメ」と書けば、赤チンの匂いを嗅ぐたびに子どもの頃にいじめられた記憶を思い出し、その記憶を癒してくれるかのように桜を育てる天が今ここにあるという味わいになると解説。これなら50句目に相応しいものだったと評した。今回も反論を見せる本人だったが、すかさず浜田が前に立って本人がカメラに映らないように遮り、シュレッダーボタンを横尾名人が押す羽目に。「世界の子どもを敵に回したからな!」と吠えるも虚しく、最後まで浜田に遮られて番組終了まで映ることが叶わず。特待生昇格3名、査定も3名全員昇格という流れが逆にフリになってしまった。
●[187] @23/02/23◆お題:
富士山[横浜の景色]『沸点の富士に近づく暮れの春』永世名人49句で掲載
ボツ添削後
『沸点の低き怒りや老いの春』
季語は「暮の春」。自身が年老いてブツブツとキレやすくなり、怒りの沸点が下がることを富士山の高地の気圧低下により沸かす湯の沸点が下がることに重ね合わせ、「そんなことではダメだぞ」と富士に教えられている思いを詠んだという一句。村上名人は「意図が伝わらない」と反論するが、本人は「梅沢富美男が詠んだと皆が分かる」と譲らない。「詰め込みすぎ!」と評す先生は、字面は一見カッコ良いが、言いたいことが不明だと指摘。富士山のような大らかな私になりたいという意図を確認し、工夫の一つ「沸点」を用いた添削を試みる。すぐ怒ることを「低き怒りや」とし、季語も正直に「老いの春」と書くべきだと指南。本人は、「老いの春」と書きにくいと反論するが、先生は「自分をまっすぐ見つめる勇気が大事。ジジイはジジイ」だと一歩も引かず。自身の怒りの沸点の低さを露呈した形で4回連続のシュレッダーとなってしまった。
●[188] @23/03/23◆お題:
レトルト『湯玉ふつふつ春の厨の砂時計』永世名人50句目に
掲載決定
<句集完成>添削なし
季語は「春」で「厨(くりや)」は台所。料理が得意な御大が「レトルト」を初めて試した実景を詠んだ一句。沸騰した鍋に湯玉がポコポコ出てくるのが面白く、つい砂時計を使うのを忘れてしまうほど楽しかった様子を詠んだと語った。ジュニア・森口の両名人は揃って絶賛。「おっちゃんらしい締めくくり」と評す先生は、良い句だったと前置き。「湯玉」のアップから「ふつふつ」というオノマトペに「春」と続き、「厨」で「湯玉」は鍋の中の光景として立ち上がる語順を述べる。最も褒めるべき点が着地の「砂時計」で、何を何分茹でるなど言う必要がないことを分かっている点を述べる。「砂時計」という物を最後に置いただけで、春という季節がキラキラし始め、湯玉・厨の中・砂時計のガラスや砂粒にも光がキラキラと及ぶ点を称賛。料理好きらしい「厨」と「砂時計」の取り合わせも褒め、最後に「(句集完成まで)長かったけどホッとしました」と50句目の掲載決定を喜んだ。ここで早くも句集発売日が告知されるが、番組卒業について出演者から迫られた本人は「私は卒業しませんよ。だって、世界中の子が『やめないで』って手紙がいっぱい来るんですから」と再三にわたって否定。最後に浜田から口を押えられる羽目になるが、次回以降も番組に出演することが確定した。
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