2023年3月16日放送 プレバト!! 俳句春光戦2023予選Bブロック結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
春の季節に行われる第7回
春光戦予選Bブロックで名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
※23日に全て更新しました。お待たせいたしました。
→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細(Bブロック) →編集後記⇒予選Aブロック記事⇒予選Cブロック記事⇒決勝戦記事※過去のタイトル戦結果などは
こちらまたはブログカテゴリからどうぞ。
挑戦者:
Bブロック→<名人8段>千賀健永(Kis-My-Ft2)[59],<名人7段>中田喜子[63],<名人4段>皆藤愛子[34],<5級>本上まなみ[5],<5級>的場浩司[11] ※[数字]は挑戦回数見届け人:梅沢永世名人、藤本永世名人、千原永世名人◇春光戦2023(第7回春光戦)のルール 【予選】 ・ABCの3ブロック制で、各ブロック5名が参加 ・ブロック分け・挑戦する兼題は事前に抽選済(2023/02/16放送) ・各ブロック1位の合計3名が自動的に決勝進出 ・各ブロック2位以下は補欠となり、全ブロック終了時予選通過者発表 ・補欠から優秀句を詠んだ上位3名が決勝進出(敗者復活) 【決勝】 ・第6回金秋戦上位2名および永世名人がシードで参加 ・決勝はシード4名(永世名人含む)、予選通過6名の合計10名 |
■予選の兼題春 光 戦 | 放送日 | 兼 題 |
予選Aブロック | 3/2 | 卒 業 |
予選Bブロック | 3/16 | 引越し |
予選Cブロック | 3/16 | 入 学 |
◆全参加者(19名)の段位一覧 | Aブロック | Bブロック | Cブロック | 予選免除 |
永世名人 |
|
|
| 藤本 梅沢
村上 ジュニア |
名人10段 | 横尾 | | | |
名人9段 | | | | |
名人8段 | | 千賀 | | |
名人7段 | | 中田 | |
|
名人6段 | | | 志らく | |
名人5段 | | | | |
名人4段 | | 皆藤 | | |
名人3段 | | | | |
名人2段 | | | | |
名人初段 | | | | |
1級 | | | | |
2級 | 北山 松岡 | | 馬場 | |
3級 | | | | |
4級 | 犬山 昇吉 | | 森迫 | |
5級 | | 的場
本上 | 勝村
こがけん |
●兼題:引っ越し
※各ブロック1位が無条件で決勝進出。2位以下は補欠となり全てのブロックから上位4名が進出(各2~4位は進出可能性あり)※順位クリックでリンク内移動します。
◆予選Bブロック |
1位 | 皆藤愛子 | 名人4段 | 春日向カーテンの到着は明日 | はるひなたかーてんのとうちゃくはあす |
2位 | 千賀健永(Kis-My-Ft2) | 名人8段 | 木の芽冷え青いジャバラで家具包む | このめびえあおいじゃばらでかぐつつむ |
3位 | 本上まなみ | 5級 | 新しき庭あたらしき泥の春 | あたらしきにわあたらしきどろのはる |
4位 | 中田喜子 | 名人7段 | 春泥を引越し女房おお跨ぎ | しゅんでいをひっこしにょうぼうおおまたぎ |
5位 | 的場浩司 | 5級 | 校舎裏抱きし犬の目春の月 | こうしゃうらだきしいぬのめはるのつき |
順位発表順:2位→最下位→3位→4位→1位→編集後記
夏井先生 さすがだな。
***
清水アナ 春の俳句タイトル戦「春光戦」今夜いよいよ全ての決勝進出者が出揃います。まずは予選Bブロックです。今回各ブロックの1位は自動的に決勝進出。2位以下はAからCブロックの全員の中で上位3句に入った人が決勝進出となります。
浜田 そういうことでございます。
***
浜田 梅沢さん、どうでしょうか。このBブロック顔ぶれは?
梅沢永世名人 いや、中田さんは当然ね、実力ありますから(→昨年夏に優勝)。
中田名人 ありがとうございます。
浜田 ジュニアさん、どうですか?
千原永世名人 僕は本上さん(→冬は2位)。このテーマによってはあるんじゃないかなと思いますね。
本上 ありがとうございます。
浜田 なるほど。フジモンどうですか?
藤本永世名人 いや僕も本上さんが来るんじゃないかなと。前詠んだラムネ(→「もの言わぬ従弟にサイダー渡す駅」)の俳句。あれがビシっとハートに響いたので。
本上 ありがとうございます。
藤本永世名人 ああいう俳句詠まれると1位もありえるんじゃないかな。
梅沢永世名人 混戦ですね(笑)。
千賀名人 ちょっと…普通にいったら(段位の高い)ここじゃん(笑)。
浜田 せやんな。あんたもう8段だもんね。
千賀名人 8っすよ僕。
藤本永世名人 大体あんな俳句詠んでくるんやろうなっていうのは(笑)。
千賀名人 勘弁して下さいよ。
千原永世名人 割とな"あれ・七・五"やんな(笑)。
千賀名人 いやいやいや…。
***
清水アナ 中田喜子さんも今回の顔ぶれの中では特待生になったばかりの的場さんと本上さんには"負けたくない、負けるわけがない"と思っているそうです。
中田名人 あのですね。"負けるわけがない"なんて、そんなそんなそんな(笑)。そんな言い方してない。あの、頑張りたいなと。
浜田 そらそうですよね。
清水アナ 「プレバト!!」で詠んだ句(→「職質をするもされるも着膨れて」)が歳時記に掲載された"ミスター歳時記"こと的場さんですが、初挑戦の前回は予選最下位、ほろ苦のデビュー戦となりました。
浜田 今回どうでしょうか。
的場 ただ今やっぱり先輩から「負けるわけない」と聞いた瞬間に、先輩ナメんなよと。
浜田 そらそうや。その意気で頑張りましょう。さあ、本上さんいかがでした?
本上 はい。私はですね、生まれたときから今に至るまで家族全員が引越し魔で、今までで多分15回以上引っ越ししてるんです。
一同 え~!すごい。
本上 なので、その面では経験は豊富なんですよ。どの言葉をチョイスしていくかというのが逆にちょっと迷っちゃいましたね。
浜田 分かりました。
清水アナ それでは浜田さん、予選Bブロックの結果、このようになっております。
浜田 いただきます。
清水アナ それでは何位から開けましょうか。
藤本永世名人 いい~。
浜田 2位。
千原永世名人 うわ~。
藤本永世名人 そうか。これは可能性ありますよ。通過の。
中田名人 え~…。
浜田 いきましょう。予選Bブロック第2位はこの人!
▼2位は千賀健永(Kis-My-Ft2)
千賀名人 うそ~?マジっすか?
浜田 いや、喜んだ方がええで。
千賀名人 いや(横尾も)2位だったんすもんね。
浜田 そうそう。ほんで、絶対名前も一切出てこなかった君が。
千賀名人 ていうか、結構良い順位ですよ(笑)。
千原永世名人 見してや。
千賀名人 2位か~。
藤本永世名人 通過の可能性大よ。
千賀名人 いや~、前回も2位で落ちたんだよな。
→昨年の春「静けさや一貫校の春休み」でCブロック2位となり1枠の予選通過をジュニア名人に奪われた。
浜田 せやったっけ。
千賀名人 そうなんすよ。うわっ、2位か。
清水アナ まだチャンスありますね。
浜田 そうですね。
***
清水アナ それでは続いては何位を見ましょうか。
藤本永世名人 いい~。
浜田 最下位。
一同 ええ~!
清水アナ ここはもう決勝進出は無理ですね。
浜田 いきましょう。予選Bブロック最下位はこの人!
▼最下位は的場浩司(予選敗退)
藤本永世名人 あっちゃ~。的場さん。
浜田 ハハハハ。
梅沢永世名人 絶対上位にいると思った。
的場 いや頑張ったんですけどね。
藤本永世名人 最下位ですね~。
浜田 先輩倒せなかったね~。
的場 いや倒せなかったですね~。
***
清水アナ さあ、それでは続いては何位を開けましょうか。
浜田 うん~、3位。
中田名人 あ~。
千原永世名人 厳しいなあ。
浜田 さあいきましょう。予選ブロック3位はこの人!
▼3位は本上まなみ
梅沢永世名人 いや~、こういうことがあるんだな。(千原・藤本名人の)2人が応援してたんですよ。
浜田 そうですよね。
本上 ありがとうございます。
浜田 本上さん、3位ということになりました。
藤本永世名人 そうか~。
***
浜田 残っているのはこのお2人。
梅沢永世名人 残りましたね。
皆藤名人 え~。
浜田 さあ、ここまでくると中田さんどうでしょう。1位か4位です。
中田名人 もうホントに千賀さんのお隣に座りたいです(笑)。
浜田 アハハ、なるほどね。
中田名人 はい。
浜田 皆藤さん、どうですか?
皆藤名人 え~でも、ああ~!でも中田さんに勝つなんて…。
浜田 さあそれでは発表しましょう。
藤本永世名人 どっちだ?
浜田 いきましょう。予選Bブロック第1位はこの人!
▼1位は皆藤愛子(決勝進出)、4位は中田喜子 ※大波乱!
皆藤名人 え~!やった~!
藤本永世名人 中田さん。固まっちゃった。
一同 ハハハッ。
中田名人 あちゃ~!
藤本永世名人 久々に聞きましたね、「あちゃ~」。
中田名人 4位?
浜田 皆藤さん1位ですよ。
中田名人 あ~4位。的場さんのお隣でした(笑)。
藤本永世名人 見たらわかりますよ。
中田名人 いやいやいや。
浜田 そうか~。
1位
◆『春日向 カーテンの到着は明日』 皆藤愛子梅沢永世名人 良いね。
【本人談】これは良くやってしまう失敗。新居にカーテンが間に合わなくて、でもそれはそれでその時だけの景色が見られるからいいかなという句。
千原永世名人 素晴らしいですね。
本人 ありがとうございます。
千原永世名人 なんかこう…未来に向けての明るさみたいなのがあるし、もう誰が読んでもわかりますし、素晴らしいと思います。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 いやもう本当に、肩の力が抜けていて、何も難しいことやろうとか考えないで、そのまま書いた俳句素晴らしいと思います。
本人 ありがとうございます。
夏井先生 「引っ越し」という言葉を使わず、中七・下五で引っ越しあるあるを思わせると。
ここら辺が上手かった。
季語もちゃんと主役に立っている。
カーテンが今ないわけで、「春日向」という季語もわかる。
カーテンが来た時のカーテン越しの光・風をこの句の向こうに想像させる。
季語もテーマもしっかりと描けた。
やっと皆藤さんらしい句が戻ってきたと。
今、作者がわかってそう思った。
本人 うわ、嬉しい。ありがとうございます。
浜田 先生、これ直しは。
夏井先生 いらないです。
浜田 直しはいりません。
本人 嬉しい。
●解説のポイント |
「引越し」を使わずにあるあるを思わせるのが◎ カーテンがない窓の春日向の瞬間 カーテンが来た時の窓越しの光や風を想像させる 季語もテーマもしっかりと描けた 皆藤さんらしい句が戻ってきた |
添削なし
天文「春日向」と引越しした新居にカーテンが届かない状況を取り合わせた一句。引っ越しで共感しやすい内容をそつなく詠んだ点が高評価を生み、措辞は自身の心境を口語で語ったところにオリジナリティーがあります。季語「春日向」は春の日の傍題で、太陽の日射が直接当たる部屋やその長閑な一日という2つの意味を内包した読みもできます。その点一人暮らしの新居を思いやすい仕上がりに。ご指摘の通り、季語を最後に置く語順だと因果関係を生みやすいですが、季語の場面を屋外あるいは長閑な時間経過と思えれば、取り合わせの句として成立しています。兼題描写を素直に行った点が功を奏しました。
2位◆『木の芽冷え 青いジャバラで 家具包む』 千賀健永(Kis-My-Ft2)※「木の芽冷え」は木の芽が出る頃の寒い気候を指す春の季語。
【本人談】「ジャバラ」は引っ越しの時に荷物にかける青い布。元々住んでいた家との別れの寂しさみたいなものを表現しながら作った。
梅沢永世名人 良い俳句ですよ。とっても良い俳句なんです。なんで2位になったのかってのは私は分かりませんけど…。私の意見をちょっと言わせてもらうとね、「家具包む」を逆にして「包む家具」にしたら1位だったかもしんない。
本人 えっ、それだけで?
浜田 なるほど。
一同 あ~。
梅沢永世名人 …と、私は思いますよ(笑)。私ごときのね、意見なんかどうってことないでしょうけど。
夏井先生 まず「木の芽冷え」という季語を選んでいる。
似たような季語で「木の芽晴れ」(※木の芽が出る時期の晴天のこと)という季語もあるが、これを選んでいるということは寂しさ・不安に軸足を置きたいと。これは作者の意図通り。
しかも「冷え」と「青」の感じも響き合う。
こうやって展開してきた時に下五が気になる。
おっちゃんはさすがですね。
もう、おっちゃん人の句は完璧にわかるようになってる。ここは逆。
「木の芽冷え青いジャバラで包む家具」とやると、物が最後に映像として残る。
そうすると、何を得するかというと季語がもっと映える。
「包んだ家具」を「冷え」がもう一つ包む。
そういう仕掛けになる。惜しかったよね。
本人 うわ、最悪。
浜田 言った通りに…。
梅沢永世名人 惜しかったのよ。
本人 うわ~。
梅沢永世名人 でも千賀君。残りますよ、残りますよ。
浜田 第2位でございます。まあでもこれがどうなるか、分かりませんからね。
本人 決勝行きたい!
清水アナ 第2位でした。
●解説のポイント |
季語で寂しさに軸足を置くのが意図通り 「冷え」と「青」の感じも響き合う 下五「包む家具」に語順を変える 物が映像として残り「冷え」が再度包む とても惜しかった |
添削後
『木の芽冷え 青いジャバラで 包む家具』
春の時候「木の芽冷え」と引越しで荷物を運ぶ光景を取り合わせた定型句。「木の芽」は山椒の芽を指しますが、この季語は不特定の春の芽を指し、「花冷え」と時期が少々重なります。未来への明るさの象徴「芽」と共に「冷え」で将来への不安もあり、心情表現に手慣れているのが千賀さんで、季語の選択も練られています。柑橘類の意味もある「ジャバラ」ですが、「青い」で引っ越し素材に限定し、「家具」で場面をフォーカスする読み手への配慮も明瞭です。ご指摘の通り、助詞「で」は散文的になりやすく、本来「に」にしたいところ。夏井先生のYouTube解説「で」の6用法では、④「道具」と解釈できますが、「で」の後に動詞が続くことを考慮しても下五の語順は逆であるべきでした。兼題通りの描写でしたが、独自性で一歩届かなかったのが残念なところです。
3位◆『新しき庭 あたらしき泥の春』 本上まなみ中田名人 あ~。
【本人談】引っ越してきた新しい家の庭を見ていたら、春の日差しに照らされて地面が温もっている。その様子に色んなものがこれから芽吹いてきて豊かに茂っていくというワクワクの気持ちを込めて作ってみた。
夏井先生 作品としてはそつなくできている。
しかも心遣いも効いている。
「新しき」と最初は漢字で、「あたらしき」と中七は平仮名で書き、リフレインを活かして表記にも気を遣っている。
それから「春の泥」ではなく「泥の春」という風にし、春という季節の方に軸足を少しだけ移すと。
表現したいことはキチンとできていると思う。
悩ましいのは、順位をつけるという風になった時に、もうちょっとだけ具体性・独自性を出せる余白があると。
この中七はこれで良いが、何かやれるとしたら中七。
「新しき庭」というだけで、この「泥の春」は新しい季節だと意味の上でわかる。
リフレインした目的・意図は分かるが、ここに具体性を入れる。
例えば、どこかの土地に赴任するなら「赴任地は」と書く。
転勤か何かで行った場所だと分かる。
「脱サラの」とやっても良い。
ここに作者の状況・作者がどういう方かをもう少し入れられる余地があるということ。
本人 勉強になりました。確かにその通りだなという風に改めて感じました。
●解説のポイント |
そつなくできた作品 リフレインを活かしつつ表記も心遣いがある 下五は春の季節に軸足を移す意図 中七に具体性を出せれば順位が上がる 「赴任地」「脱サラ」で作者の状況を示す |
添削後
『新しき庭 赴任地は泥の春』
『新しき庭 脱サラの泥の春』
地理「春の泥」をひっくり返し、新居の新しい庭を詠嘆した句またがり。一読して庭を新調したと読むよりは引越ししたと思わせやすい書き方で、春の命の芽吹きのような希望を「新しき」のリフレインで表現しています。「泥の春」はチャレンジ精神旺盛な用法です。全体的に抽象的で場面描写が弱いのが勿体なく、作者の状況を入れ込む添削により、より共感性を持った形に。引っ越し経験が多いゆえ、オリジナリティーを具体的に書き上げれば上位も狙えたのが惜しい部分。ここまで5回の季語に時候・天文を一切用いていない本上さん。フレーズから季語を選ぶ形ではなく、歳時記を読み込むことで似合ったフレーズを探すような手法で作句している印象があり、今後も活躍が期待できるといえそうです。
4位◆『春泥を 引越し女房 おお跨ぎ』 中田喜子梅沢永世名人 ああ…。
【本人談】「引っ越し女房」(※嫁入りの荷物と同時に来る嫁のこと)という言葉がある。荷物を持ち寄って所帯を持つ奥さんのことを「引っ越し女房」という。その奥さんが逞しくぬかるみをまたいで引っ越しをしている様子を句にした。
藤本永世名人 すごいユーモア溢れる面白い俳句だなと思いますね。ただ…どうでしょう。「泥」と「跨ぐ」をもうちょっと近く…寄せた方が良かったんじゃないのかなとは思います。
梅沢永世名人 そうだ、うん。
浜田 梅沢さんも「うん」と言ってますけど。
梅沢永世名人 これは「引越し女房」からいった方が良かった。
本人 (悲鳴を上げて)ああ~(笑)。
梅沢永世名人 そうすればこれは相当いいとこいった。
千原永世名人 そのあといいですか?「引越し女房」からどういう風に?
梅沢永世名人 だから「引越し女房」頭に持ってくれば、そのまま書きゃ…繋げれば…いいんですよ。
藤本永世名人 繋げて下さい。
千原永世名人 繋げて下さい。
梅沢永世名人 まあ急に…(笑)。先生がやるでしょう。私はそう思いましたよ。
夏井先生 この句の内容、庶民的で可笑しみもあって、やろうとしていることは良い。
他の人とは全く違う目の付け所。
勿体ないのはやはり「春泥」と「おお跨ぎ」を離して真ん中に人物を入れたこと。
「引越し女房春泥をおお跨ぎ」でも良いし、「引越し女房」を上五にわざと字余りで置き、ここに一言「いま」と平仮名で「ほら」でも良い。
まさに「いま」「ほら」とやる感じ。
「引越し女房ほら春泥をおお跨ぎ」。
"あれが女房だよ"と指さすような感じになる。
梅沢永世名人 ああ良い!
本人 …はぁ。あまりにもショックすぎて、今回は言葉が出ない(笑)。いやいやいや。あ~そうですか。
浜田 いや残念でございました。
●解説のポイント |
庶民的で可笑しみもあって良い 他の人とは全く違う目の付け所 「泥」「跨ぎ」を離した語順が勿体ない 「引越し女房」を上五に字余りで置く 「いま」「ほら」で女房を指さす感じに |
添削後
『引越し女房 春泥を おお跨ぎ』
『引越し女房 いま春泥を おお跨ぎ』
『引越し女房 ほら春泥を おお跨ぎ』
地理「春泥」と引越し女房の仕草を取り合わせた定型句。中七は本来「ひっこしにょうぼう」と8音ですが、「ひっこしにょうぼ」とリズミカルな読みで紹介されました。引っ越してきたように結婚生活に入る妻を形容した単語の用法は博識な中田さんらしく、「おお跨ぎ」と表記の工夫も併せて仕草を合わせる点に滑稽さがあり、庭がぬかるんだ泥の状態という点も含め、全体が古い思い出を思わせて作者の年代まで読み取れる印象があります。勿体ないのが語順で、意味の上で繋がる上五と下五を離したのは名人として痛恨のミス。定型のリズム感を重視するあまり失敗した印象を感じますが、句会では点が入りそうなユーモラスな一句となりました。
5位◆『校舎裏 抱きし犬の目 春の月』 的場浩司藤本永世名人 うん。
中田名人 ん?
【本人談】まあなかなか良い句だと思うんですけど(笑)。小学生の時に拾ってきた犬を持ち帰ったら、親に「犬を返してこい」と言われ、学校で犬と一緒に隠れた。俺もその時、家に帰らず「犬と一緒に暮らそう」と思っていて引っ越しに近いと思って書いた。
千原永世名人 これワードは的場さんらしいというか、カッコいいワード使うてはるなという感じですけど、カメラワークとして「校舎裏」で、「犬の目」に寄って「春の月」で引くというこのカメラワークの慌ただしさがどうなのかな?という感じ。
藤本永世名人 ただ的場さんが「校舎裏」を使うと、なんかボコボコにされそうで(笑)。
浜田 やめとけ。
藤本永世名人 怖いです、なんか。
浜田 ちょっとね、うん。
本人 フジモン、小学生だから(笑)。
藤本永世名人 いや、小学生でも怖いです(笑)。
夏井先生 テーマの引っ越しから"プチ家出"に持っていく。
発想の広げ方のチャレンジだった。素材も悪くないと思う。
ただ、ジュニアさんはやっぱりさすが。
カメラワークでかなり損をしている。
どう考えても抱いている犬の目から入るべく。
それとこの「し」が基本的には過去を意味する。
ご本人の過去の体験ではあるが、俳句として書く場合は「し」を使わずに「抱く犬の」と今抱いている方がリアルになる。
「目よ」とここで軽く詠嘆してみる。
抱いている犬の目にすーっと焦点が当たる。
「春月(しゅんげつ)の校舎裏」とこう繋げる。
そうすると、指摘のあったジュニアさんのカメラワークの問題もシンプルになる。
抱いている犬の目に寄って、そこからカットが切り替わって春の月の校舎裏に子と犬がいる。
こうしていれば、今回のこのチャレンジはかなり良い所までいった。
本人 そうですね、まあこうやって少しずつ勉強させてもらって。
浜田 ふふっ、だんだん態度悪くなっとるやん(笑)。
本人 いや浜田さん、聞いて下さい。
浜田 はい。
本人 これだけは宣言します。今回は最下位かもしれませんけど、夏にはあの看板(→優勝者の肖像画)に載りますよ(笑)。
藤本永世名人 「看板」って。
●解説のポイント |
兼題からプチ家出への発想の広げ方は○ カメラワークでかなり損をしている 過去「し」ではなく今抱く方がリアルに 「目よ」と軽く詠嘆して2カットに このチャレンジはかなり良い所までいった |
添削後
『抱く犬の 目よ春月の 校舎裏』
天文「春の月」と拾った犬を可愛がるため家出した過去を取り合わせた定型句。動物思いの優しい心境を詠った小学生の的場さんにほっこりする印象。抱いた犬の目にフォーカスし、その目に春の月が投影された印象があり、朧で不安定な作者の心情も読み取れます。カメラワークの語順の問題に加え、ご指摘の通り、三段切れも問題です。また、動詞「抱く」が「目」を修飾すると捉えると解剖した犬の目を抱いているホラーにも思いやすく、「抱きし」が過去形である点に加え、「校舎裏」の単語から犬の亡骸を抱いている場面にも思わせてしまいます。添削ではカメラワークを解消した形ですが、この方はタイトル戦以外の通常回でもさらに出場して鍛えてほしいと思いました。
タイトル戦予選後半となるBブロックの兼題は「引っ越し」。年度替わりで忙しないシーズンで、4年前にも「春の引っ越し」という兼題が出され、志らくさんが「地下鉄に迷い込んだシャボン玉」、藤本さんが「おぼろ夜や荷馬車で眠る象使い」と詠んでいました。
季語は地理「春(の)泥」が2名ですが、引っ越しから「泥」は連想しやすいようで、4年前にも乙武洋匡さんが用いています。天文が2名(「春日向」「春の月」)、時候「木の芽冷え」と分かれる展開。引っ越し経験で共感しやすい場面選びが上位に並び、自身のプチ家出を詠まれた的場さんが最下位となりました。
1度に10句発表するがゆえ、3位の本上さんの名人批評が時間の都合上カットされましたが、何を語っていたのか気になります。予選Cブロックは該当記事に執筆いたします。
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